前の年を表す言葉として、「去年」と「昨年」があります。日頃から何気なく使われる言葉ですが、この2つの言葉には使い分けがあることをご存じでしょうか。

本記事では「去年」「昨年」について、詳しい意味や違い、使い分けの方法を紹介します。例文や年賀状ではどちらを使うか、類語や対義語もまとめました。

「去年」と「昨年」の違いやそれぞれの詳しい意味、使い方などを紹介します

去年と昨年の違い - 日常生活は「去年」、ビジネスや丁寧なメールでは「昨年」

「去年」と「昨年」は、どちらも今より1つ前の年を意味する言葉です。ただ、「昨年」の方が「去年」よりもかしこまった丁寧な表現であるといえます。

日常会話では、気軽に使える話し言葉として「去年」を使うといいでしょう。一方、ビジネスでの会話やメール文書、目上の人と話すときなど、改まった場面では「昨年」がよく使われます。

「去年」と「昨年」のそれぞれの意味

「去年」と「昨年」について調べてみると、それぞれの意味に若干の違いがあります。詳しく説明します。

「去年」の意味とは

「去年」は、「今年の前の年」を表現する言葉です。「去」は「過ぎ去った」を意味します。

しかし「去る」はあまり縁起の良い言葉とはいえません。例えば結婚式のような慶事においては、別れや不幸を連想させる言葉、つまり忌み言葉となるため、「去年」は避けることをおすすめします。

なお「去年」は「こぞ」と読むことがあります。「去年(こぞ)」は「昨年」より古くから使われている言葉であり、俳句では新年の季語として使われます。

「昨年」の意味とは

「昨年」も「去年」と同様、「今年の前の年」の意味です。「昨年」の「昨」には、「以前、今よりひとまわり前の」といった意味があります。

「昨年」には「継続」を表すニュアンスがあり、あることが前の年から続いていることを表現するときに多く用いられます。ここが「去る」の意味合いを持つ「去年」とは異なる点です。

「昨年度」「昨年末」のように、派生して別の単語として使われることがあります。「去年度」「去年末」などの言葉はあまり使われることはないでしょう。

「去年」と「昨年」の使い分け



ここでは「去年」と「昨年」の使い分け方を、場面ごとに説明します。

○「去年」を使用する場面

「去年」は話し言葉として使いやすいため、日常の会話や、親しい友人、家族とのやりとりに適しているでしょう。

ややカジュアルな印象なので、公の場ではできるだけ避けることをおすすめします。また「去る」という意味合いがあるため、祝い事には不適切でしょう。

また、前述したように俳句や和歌でも使われます。「去年」は「こぞ」と読み、新年の季語です。「去年」は古くから使われ、万葉集にも登場する言葉です。

○「昨年」を使用する場面

ビジネスシーンや目上の相手との会話では、かしこまった表現が適しているため、「昨年」を使うといいでしょう。

メールの文章のように、書き言葉として使う場面にも適しています。ニュースのように硬い表現で伝える場面にも「昨年」がよく使われます。

また縁起の悪い意味合いは特に持たないため、結婚式の乾杯の挨拶やスピーチなどにおいて、「去年」の言い換えとして好まれる言葉です。

「去年」と「昨年」の例文



ここでは、「去年」と「昨年」を使った例文を紹介します。

○「去年」の例文

・場面:友人や家族に対して

「去年の冬は雪がたくさん降ったね」

・場面:友人や家族に対して

「去年は東京に住んでたけど、今年から大阪に帰って来たよ」

・場面:友人や家族に対して

「去年の今頃はフランスにいたよ」

「去年」は、友人や家族などの親しい相手と会話するときに使われる言葉です。気軽な話し言葉として使いやすいでしょう。

○「昨年」の例文

・場面:上司や先輩に対して

「昨年は大変お世話になりました」

・場面:取引先に対して

「昨年は格別なご高配を賜り、厚くお礼申し上げます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます」

・場面:継続している様子を表すとき

「昨年来、優秀な社員の退職が続いている」

「昨年」は、目上の人やビジネスにおける取引先の方に向けて、また文面などでよく使われます。「去年」と比べ、かしこまった印象がある言葉です。

また、あることが前の年から継続していることを表現するときにも多く用いられます。

年賀状では「去年」と「昨年」のどっちを使う?



年賀状では「昨年」を使います。「去年」は忌み言葉のため、新年の挨拶として使うことはおすすめしません。

前述の通り、「去年」には「去る」の意味が含まれてます。これは別れや不吉を連想させる言葉のため、新年の挨拶のような祝い事には適さない言葉です。

「昨年はお世話になりました」のように、年賀状に書く言葉としては「昨年」がいいでしょう。また、「旧年」も年賀状に書く言葉として適しています。「旧年」は「新年」の対義語であり、違和感なく使えます。

「去年」と「昨年」の類義語・言い換え表現



「去年」と「昨年」の類義語として、「前年」「旧年」という言葉があります。どちらも1つ前の年を表すため、意味はほとんど同じです。

ただし、これらにも若干の違いがあるため、使い方を理解しておくといいでしょう。

「前年」は、「就職の前年」「結婚した前年」のように、過去のある時点までさかのぼり、その1つ前の年を表すときにも違和感なく使えます。また、「前年比」のように年をまたいで比較するときにも使われます。

「旧年」は、特に新年から振り返って前の年を表す言葉です。新年の季語であり、年賀状の文面や新年の挨拶によく使われます。

「去年」と「昨年」の対義語

「去年」「昨年」の対義語は、「来年」や「明年(みょうねん)」です。どちらも「今年の次の年」を表します。

「明年」は「来年」よりもかしこまった言い方のため、「去年」の対義語が「来年」、「昨年」の対義語は「明年」と覚えておくといいでしょう。

また、「前年」「旧年」にもそれぞれ適した対義語が存在します。「前年」の対義語は「翌年」、「旧年」の対義語は「新年」です。

「翌年」は、「結婚した翌年」「就職した翌年」のように、過去にさかのぼり、ある時点を基準とした次の年を表すときにも用いることができます。

○「去年」と「昨年」の場面に応じた使い方を覚えよう

「去年」と「昨年」は、どちらも1つ前の年を表す言葉です。ほとんど同じ意味ですが、正確には若干の違いがあります。

「去年」は友人や家族など親しい人との会話で使う話し言葉であり、また祝い事などでは避けられます。

「昨年」はビジネスシーンや目上の方との会話、年賀状のような新年の挨拶で使う言葉です。かしこまった表現として適しています。また「継続」を示すニュアンスがあります。

使う場面を間違えると、相手に違和感を持たせてしまうことがあります。それぞれの言葉の意味や使い方を理解し、場面に合った言い回しができるように心掛けましょう。