【吉原・老舗ソープ殺人事件】風俗嬢はどう見たか? 恐怖体験を告白「目の前でメガネとカツラを外した出禁客に『会いたかった』と言われ…」「誕生日にワンホールのケーキを持って来て、そのナイフで刺されそうに…」
5月5日、ゴールデンウィークの終盤、繁盛していた東京・台東区の花街の高級風俗店で風俗嬢のÅさん(38歳)が男性客に首などを刺されて殺害される事件が起きた。逮捕された客の男は、“出入り禁止”とされていたことに一方的に恨みを募らせて犯行に及んだと見られている。事件を受け、集英社オンラインでは複数の風俗嬢を取材したところ、多くが命の危険にかかわるトラブルを経験していた。
風俗店のオーナーが語る「出禁客」の仕組み
被害女性と同じマンションに住む20代女性は、何度か被害女性をマンション内で見かけていたという。
「まさか彼女が自分と同じマンションに住んでいるとは思いませんでした。彼女は吉原でも有名な人で、特に『雪華(源氏名)」というTwitterアカウントは数万人ものフォロワー数を抱えており、男性だけでなく同業者にも人気でした。でもマンションで見かけた時も高級ブランドをひけらかすような感じの人ではなく、とても控えめなニット姿でブランド品などは身につけてなくて、会釈もしてくれて、美人で優しそうなお姉さんって印象でした」
今回、被害にあったAさんを刺した男は、「出禁」を本人から言い渡されながらも変装して男性従業員の目をかいくぐり入店。その後、凶行に及んでいる。
事件が起きた高級店の近くで店を構える風俗店のオーナーに、出禁客の仕組みについて聞いた。
「従業員の女の子に乱暴したり、しつこくしたりして『この方は次に来たら入れないで下さい』と指定された場合は、その女の子だけを対象に出禁にします。さらに次の来店時に当たった女の子からも出禁を指定された場合は、店全体で出禁にします。あとは新人を狙って無理なプレイを強要したりするお客様もいるので、その方は内々で新人に限って出禁にするという場合もあります」
だが、中にはあきらめの悪い客もいる。実際に出禁にした男性客が巧妙な手口を使って店に紛れ込み、対面することになったという恐怖の体験をした風俗嬢、アイコさん(28歳)は言う。
「ほとんどの風俗嬢は“姫予約”と言って、お客さんから直接連絡を受けて予約を受け入れています。私のその出禁客は、TwitterのDMから名前を偽名に、携帯電話も以前のものとは別の番号で、まったくの別人を装って予約をしてきました。
私はてっきり、一見さんかと思い受け入れてしまったのですが、部屋に入った途端に男がメガネとカツラを取ってその出禁客だと気づき、驚きました。『会いたかった』と言われて、私も驚きすぎて体が固まりましたが、服を脱がせて、男がよそ見した隙に部屋を飛び出してボーイを呼んで、つまみ出すことに成功しました。あの時、あのままだったら本当にどうなっていたかと思うと、いまだに恐ろしいです」
「姫予約」とは、このように風俗嬢自らが客とDMでやり取りをする
逆上するんじゃないかとか思うと
ブロックできず悩んでしまう
また、吉原で20年近く働くベテラン風俗嬢のゆみさん(45歳)も、10年前に起きた恐怖の出禁体験を話してくれた。
「10回以上来てくれたお客さんだったのですが、ある時、来店時に予定よりも1週間早く生理が来てしまい、お客様に『生理になってしまって、ごめんなさいね』と言ったんです。そしたらそのお客様が豹変し『てめえ! 生理で接客するとは何事だ! どう落とし前つけてくれるんだ』と首元を掴まれて怒鳴られました。怖くて固まってしまい、号泣しながら何度も謝って土下座までしました。だんだん男性も鎮まってきましたが、ひたすら謝り続けたら、その男性も機嫌を取り戻しまして、終了時間までなんとかやり過ごしましたが、当然、そのお客様は出禁にしました」
ゆみさん(45歳)
また、出禁客たちが、風俗嬢の日常にまで侵入してくるケースもある。
都内のデリバリーヘルスで働きながら吉原でも勤務するユウコさん(38歳)は言う。
「お店に来てくれる度に『愛してる』と言ってきたり、私の写メ日記の写真を勝手に保存してTシャツを作ってきて『お揃いだよ」ってプレゼントしてきたりと、ヤバい雰囲気だなと思っていたんです。しかもだんだん、私がTwitter上で他のお客様へのお礼を書いたりすると、それに反応して嫌味ツイートをし始めて、ある時は予約が取れなかった時に、別のお客様との待ち合わせ場所で待ち伏せされたこともありました。
また、私がソープでラストまで働いた後、ボーイさんに家まで送ってもらう際、バイクで尾行されたこともあります。ボーイさんに1時間以上、遠回りをしてもらってようやく巻くことができましたが、それが1週間も続いた時は、さすがにまいってしまいました」
男はその後も、ユウコさんのTwitter上のDMにしつこくメールを送ってきたりと一ヶ月近くつきまとったという。
当時をユウコさんはこう振り返る。
「こういう男は突然、出禁にするとやばそうだったので、予約が取れないふりをして徐々にフェードアウトしていきました。いきなり着信拒否や、出禁にすると余計に怒りをつのらせる。出禁にしても、着信拒否はしないとか、どこか、相手のガス抜きする場所をつくって、全ては切らないようにしていました」
ユウコさん(38歳)
男性客の中には、風俗店を引退した後の元風俗嬢をつけ回す者までいるという。吉原の高級店で20年以上働き、コロナを期に引退したマサコさん(42歳)は言う。
「私は誕生日の日にお客さんがワンホールのケーキを持って来て、ケーキを切る用のナイフで刺されそうになったことがありました。そのお客さんはもちろん出禁にしましたが、それ以来、お客様からのケーキは受け取らないことにしましたし、なるべく入店前にボーイさんに荷物検査をしてもらうようになりました。そのナイフで私を刺そうとした人は、お店を辞めた今も私のInstagramを探し当てて、見にきてます。風俗を上がった女の子に対してしがみつく神経がわかりません。でもこの人をブロックしたら、逆上するんじゃないかとか思うとブロックもできず、悩んでます」
いくら客を出入り禁止にしても、風俗嬢のリスクはなくならない。
今後の風俗店の入店セキュリティのさらなる強化が求められる。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班