フルトン戦の会見に出席した井上尚弥(左)と大橋秀行会長【写真:高橋学】

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井上尚弥VSフルトン

 ボクシングの前世界バンタム級4団体統一王者・井上尚弥(大橋)が6日、都内で会見し、5月7日に神奈川・横浜アリーナでWBC&WBO世界スーパーバンタム級2団体統一王者スティーブン・フルトン(米国)に挑戦することを正式発表した。テストマッチを挟まずに迎える新階級での世界戦。会見では、理由や相手より優れている点を明かした。試合はNTTドコモの映像配信プラットフォーム「Lemino」で独占無料生配信。戦績は29歳の井上が24勝(21KO)、28歳のフルトンが21勝(8KO)。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)

 井上は高揚感の中に冷静さを秘めていた。すでにフルトンの映像をチェック済み。作戦漏れを防ぐため、詳細は明かさない。印象については「フルトン選手は自分のボクシングを持っている。そこをどう攻略していくか。ジャブを突いて、距離をとって判定で勝つ選手。そういう選手ほど倒すのは難しい。今回は勝ちに徹する戦いをしたい」と話すにとどめた。

 バンタム級より1.8キロ重い55.3キロ。身長、リーチともにフルトンが上だ。王者は現在4戦連続で判定勝ちするなど、高い技術力を誇る試合巧者。それでも、井上は「まずパワーでは負けていないかな」と断言し、「一瞬のスピードも自分の方が上。ゲームプラン、戦術は戦わないとわからない」とイメージしている。

 元世界3階級制覇王者・八重樫東トレーナーのもと、過酷なトレーニングでスーパーバンタム級仕様の肉体をつくっている最中。「1.8キロ増しますけど、そこでしっかりとした安定感を見せられると思う。プラスされたパワーをスピードを落とさず出すので、そこを見てほしい」。強い相手こそ燃えるのがこれまでのモンスター。モチベーションはリングにどう影響するのか。

「やらないとわからないですが、自分自身を信じる気持ちがある。これまでも階級を上げた時の試合は、もの凄い良い試合ができている。それはモチベーションが生み出すパワー。階級を上げていきなりこういうビッグマッチができるのはモチベーションが上がります。どういう試合ができるかわからないけど、当日の自分に期待したいですね。

 ただ、毎回階級を上げる時は不安がつきまとう。今回はライトフライ級から上げてきて、自分の(もともとの)骨格、体格をオーバーしていく。そこの不安はあるけど、それでもやれるんだというところを見せたい」

井上がテストマッチを挟まない理由「ここ階級の強い選手とやりたかった」

 ボクサーが階級を上げる場合、自身の感覚や減量、体格の大きくなる相手のパンチ力、耐久力、距離感などを知るため、ノンタイトル戦を挟む選手が多い。しかし、井上はいきなりの世界戦を歓迎した。それこそが自信の裏返しだった。

「スーパーバンタム級の体はつくれている。ここ階級の強い選手とやりたかった。フェザー級ならテストが必要だったと思うけど、スーパーバンタム級ならいらない」

 強敵と試合をするのはプロ転向時からの決め事。勝てば井岡一翔(志成)に次ぐ日本人2人目の4階級制覇、さらに世界初の2階級4団体統一に向けて早速2団体を奪うことになる。「NTTドコモ Presents WBC・WBO世界スーパーバンタム級タイトルマッチ スティーブン・フルトン VS 井上尚弥 -streaming on Lemino-」と題された会見。淡々とした言葉に決意を込めた。

「どの試合でも判定までもつれ込むイメージを持って準備しています。倒すタイミングがあれば倒すけど、勝ちに徹することが重要。しっかりと仕上げて最高の結果を出すだけ」

 新たなステージでもモンスターの威力を見せつける。

(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)