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■あと30年のうちに100万人が火星に?

ZOZOの創業者・前澤友作さんが上空400kmから帰ってきた。国際宇宙ステーション(ISS)から前澤さんが発信し続けたYouTube動画などを見て、宇宙との距離が縮まったと感じた人は多かったのではないか。

実際にいま、人類と宇宙の距離は急速に接近している。SpaceTech Analyticsの調査によれば、宇宙産業に従事する民間企業の数は世界中でいまや10,000以上。今後宇宙旅行のコストは下がり、無重力世界の民主化は進むと予想されている。

アメリカの宇宙開発企業・SPACE Xの創設者イーロン・マスク氏は、「2050年までに100万人を火星に送り込む」とまで言っている。私たちが宇宙を自由に旅する日は、案外すぐそこまで来ているのかもしれない。

宇宙旅行に対しては、地球温暖化をはじめとする環境破壊の危機的な状況を踏まえ、批判的な声を上げる人も少なくない。大気汚染を伴う「金持ちの道楽」を、地球より優先すべきではないのでは、と言った主張だ。今年の10月にはイギリス王室のウィリアム王子が宇宙旅行ではなく「地球に集中」するべきだと発言したことが海外では話題になった。

しかしもう一方で、ジェフ・ベゾス氏が創設した宇宙開発企業・ブルーオリジンは事業が「地球のため」であることを堂々と謳っている。新たなエネルギー資源を地球外に求め、また地球に負荷を与える産業を宇宙に移動することで、サステナビリティーに貢献すると唱えているのだ。

さらに、いまから10億年後には太陽活動が活発化し、海は蒸発して、いずれこの惑星から生命は完全に絶滅すると言われている。人類の生存を選ぶならば、私たちは宇宙へと繰り出し「惑星間種族」を目指すほか選択肢がない。宇宙旅行で培われるロケット技術は、その未来への足掛かりとなる。

なにがサステナブルで、なにがそうでないのか? それは時間軸や視点によって大きく変わる。美しい地球を守る。宇宙へと飛び立つ。時にぶつかり合うこの二つの理想を、人類は同時に実現できるのだろうか? その答えは、次の数十年で明らかになるだろう。

<参考>
Landscape Overview | SpaceTech Industry(https://www.spacetech.global/report)

(テキスト/清水イアン、編集・リードテキスト/原里実)