女性メンバーを性搾取してきたカルト集団創設者、懲役120年の判決理由
現地時間10月27日、米ニューヨーク・ブルックリン連邦裁判所のニコラス・ガラウフィス判事は、ラニエール被告に合計で120年の懲役刑を言い渡した。COVID-19によるソーシャルディスタンス・ルールにより、報道陣や傍聴人を全員収容するために別室6部屋を開放しなければならないほど大勢が法廷に詰めかける中、ガラウフィス判事が判決を読み上げた。みな熱心に、15人の被害者の意見陳述に耳を傾ける。後にいくにしたがって、陰惨さの度合いが増していった。
ラニエール被告は2019年春、売春、恐喝、電信詐欺共謀、売春共謀など7件の刑事起訴すべてで有罪が確定した。裁判では大勢の元支持者が彼に不利な証言をした。その中には、かつてネクセウムのNo.2と呼ばれた映画監督のマーク・ヴィンセント氏(先週シーズン1が終了したHBOのドキュメンタリー『The Vow』でも大きく取り上げられていた)や、ネクセウムの共同創始者ナンシー・ザルツマン被告の娘で、ラニエール被告の元恋人だったローレン・ザルツマン氏の姿もあった。
ラニエール被告は何十年もの間、複数の階層を持つ組織ネクセウムの共同創始者兼トップとして君臨した。オールバニーを拠点に活動するこの組織は、サイエントロジーや客観主義など多様な哲学や自己啓発メソッドの寄せ集めだったと言われてきた。『ヤング・スーパーマン』の出演女優アリソン・マックや、ドラマ『ダイナスティ』の主演女優キャサリン・オクセンバーグの娘、シーグラム社の令嬢クレア・ブロンフマンなど、数多くの著名人がネクセウムを信奉した(ブロンフマンは身元詐称および移民詐欺に関する罪で有罪を認め、先ごろ懲役6年9カ月が言い渡された)。
ラニエール被告はネクセウムの組織内に、「主人」と「奴隷」、そしてラニエール本人が「大主人」を務める女性だけの組織DOSを運営していたと言われる。先のザルツマン氏や、入会の儀式の一環で目隠しをされた状態でオーラルセックスされたという若い女性ニコールさんをはじめとする元奴隷の女性たちは、被告のイニシャルの焼き印を体に入れさせ、過酷な肉体労働を課せられた他、1日500kcalという食事制限を強いられたと証言した。また「担保」として、破廉恥なヌード写真や卑猥な写真、その他不名誉な物品を提出しなければならなかった。
「被告人は終始、まやかしを吹き込んでいました。被害者をコントロールしつつ、それは女性の地位向上のためなのだと」 アメリカ連邦地方検事局のタニア・ハジャール検事補は裁判の冒頭陳述で、DOSについてこう述べた。彼女はラニエール被告を、か弱い女性たちをねらった「詐欺師」と呼んだ。
異常な性支配の実態
ラニエール被告は一貫して無実を主張。弁護団が先月裁判所に提出した書類には、「被告は自らの行為や選択を悪いとは思っておらず」「いつか容疑を晴らす日が来ると確信し、力の及ぶ限り裁判で戦うつもりだ」と書かれていた。
量刑判決前の陳述でも、ラニエール被告は同じ主張を繰り返した。「私はすべての起訴内容で無実だと固く信じています。ですが同時に、みなさんの痛みはよくわかりました」と法廷で述べたあと、「真実を語っていないと思われる人々」に対しても同様だ、と付け加えた。
HBOの『The Vow』にも登場するDOSの奴隷だったサラ・エドモンソン氏、ラニエール被告の子供を出産したネクセウム元幹部のクリスティン・キーフ氏、そして15歳の時にラニエール被告と性的関係にあったDOSの元メンバー、カミーラさんなど、大勢のネクセウム元メンバーが、ラニエール被告の被害者として意見陳述を行った。
「あなたはリーダーでも、指導者でも、教祖でもありません」。事前に収録されたエドモンソン氏の意見陳述が法廷で再生された。「あなたは嘘つきの寄生虫で、詐欺師です」
【画像】「性奴隷」の実態を証言した元女性幹部たち(写真6点)
カミーラさんは意見陳述で、ラニエール被告が彼女の人生に及ぼしたトラウマを初めて公の場で延々と語った。13歳の時に初めて会った後、15歳の時から性的関係を持つようになった。「彼は私がウブなのを利用して、性的なことだけでなく、精神的にも勝手し放題でした」。そういってカミーラさんは、ラニエール被告から家族と縁を切らされたこと、裸の写真を撮らされたこと、妊娠したものの中絶させられたこと、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)をうつされたこと、そのために子宮頚部形成異常に罹ったことなどをつぶさに語った。「彼は高潔という名のもとに虐待を隠蔽しました。ですが、児童虐待に高潔なところなど何ひとつありません」(さらに質の悪いことに、ラニエール被告を擁護する50通以上の手紙のひとつはカミーラさんの父親ヘクター氏が書いたものだったと、ガラウフィス判事はのちに明らかにした。「正直、こうした手紙を書くことでラニエール被告を助けられると考えた人がいることに驚きを隠せません」と判事は述べた)。
ラニエール被告の別の被害者、インディア・オクセンバーグさんも意見陳述を行い(彼女の母親キャサリン・オクセンバーグは『The Vow』にも登場する)、ラニエール被告から食事制限をさせられ、無理やり20ポンド減量した結果、生理が止まるまでのおぞましい経過を詳しく語った。「あなたは私を、飢えて、か弱く、簡単に操れる12歳の少女のようにさせたがった」。また性行為の相手を待つ間、被告が彼女を全裸で横たわらせ、彼女の股間に入れた自らのイニシャルの焼き印を夢見心地に指でなぞっていた、とも語った。「一塊の肉として、焼き印を入れられ、洗脳された性の奴隷として」自分の存在が世間に知られたことは「想像を絶する辱め」だ、と彼女は言った。
ラニエール被告は今回の裁判に関するPodcastを開設する予定
被害者が声を上げる一方で、熱心なネクセウム信奉者の集団「Made Justice Blindm」のような、ラニエールのファンが存在するのも事実だ。ファンの1人、ニッキ・クラインは公判中微動だにせず傍聴席に腰かけていたが、法廷内で義務付けられたマスクをつけていたため表情は分からない。この数カ月、ラニエールが収容されているメトロポリタン矯正センターの外では、クラインが率いるWe Are As Oneなどいわゆる「社会正義団体」が抗議活動を行い、ラニエール被告の釈放を求め、BlackLivesMatterというハッシュタグをのっとっている。「破壊活動の武器として次に何が狙われるか、わかったものじゃありません」。ネクセウムの元メンバー、スーザン・ドーンズ氏はこう証言し、ラニエール被告に極刑を言い渡し、服役中ファンとのつながりを絶たせるようガラウフィス判事に嘆願した。同じくネクセウムの元メンバーで被告と性的関係にあったアイヴィー・ナヴァレスさんも同じように主張し、被告が「手下どもに指示して、正当な社会運動を侮辱させている」と非難した。
だがラニエール被告の支持者は、被害者たちが(ほとんどが女性)証言台で、被告から何年にもわたって受けた苦痛をつまびらかにするのを黙って見ている以外に何もできない。ラニエールの元恋人トニ・ナタリーさんは誰よりも早くネクセウムに警鐘を鳴らしたグループの1人だが、「女性をコントロールし、支配しようとする被告の執着心」を皮肉たっぷりに語った。「キース、周りを見てごらんなさい」と言って、彼女は法廷の中を示した。「あなたをここへ引きずりだした女性たちばかりよ」
被告弁護団は判事に対し、ラニエール被告に15年以下の禁固刑を要求しつつ、控訴の可能性の準備も整えた。裁判記録によると、ラニエール被告は今回の裁判に関するPodcastを開設するつもりだという。また2万5000ドルの賞金と引き換えに、自分を追及した検察官のミスを探るコンテストをすでに立ち上げたそうだ。
from Rolling Stone US
