Microsoftは正しかった。Surface Neo/Duoの2画面はフォルダブルよりも賢い選択
サムスンやファーウェイが相次ぎ発売する折りたたみ画面「フォルダブルディスプレイ」のスマホ。対するMicrosoftは新発表の「Surface Neo」「Surface Duo」で2画面という従来からある機構を採用しました。この選択は正解だったのか、Galaxy Foldと対比して考えてみた、米Engadget シニアエディターのDevindra Hardawarによるコラムをお届けします。

フォルダブルと呼ばれる折りたためる画面を採用したSurfaceシリーズのうわさは、先日のMicrosoftのイベントまでに多く聞こえてきました。しかし、Microsoftはその選択をせず、2つのディスプレイを頑丈なヒンジでつないだ「Surface Neo」と「Surface Duo」を発表しました。

Galaxy FoldやHUAWEI Mate Xのようなフォルダブルスマホと比べると、少し古風に見えるかもしれませんが、現時点のフォルダブルディスプレイは扱いに注意が必要な部分があり、2画面を採用したのは悪くない選択と言えるでしょう。2画面を導入することで、フォルダブルのような扱いづらさはなしに、新しいインターフェイスを取り入れることができます。

Galaxy Foldの発売延期問題の後、サムスンはこのフォルダブルスマホの宣伝を抑えつつあります。その理由は想像に難くありません。"普段使い"の酷使に耐える折り曲げ可能なディスプレイを作るのは、やはり非常に難しかったということでしょう。

サムスンは販売を再開したGalaxy Foldに以下のような非常識な警告を添えています。

「コイン、鍵、カードから遠ざけてください。ポケットの中に一緒に入れるのも避けてください。爪で触るときも、過度な圧力を避けてください。そして、ポケットの糸くずのような小さな物体が折り目に入り込まないようにしてください! そして、反対方向に折りたたまないようにしてください」

これらの"警告"で注意されていることは、Surface Neo/Duoにおいてはさしたる問題にはなりません。画面を開閉するときに圧力がかかるのは画面そのものではなく、ヒンジ部です。360度完全に反対側に開き、片方の画面のみを使うこともできます。

これらをフォルダブルで実現しようとするとかなりの妥協が求められます。Galaxy Foldで閉じたときに表示できるのは、ぎこちなく細いサブディスプレイのみ。一方、Mate Xは外開きにできるため、閉じた時も片面を使えますが、閉じた時にディスプレイがヒンジ部含めて外側に来る設計は、高価で繊細なディスプレイに対してあまりにも脆弱です。フォルダブルディスプレイで使えるカバーガラスは現状では存在しないため、一般的なスマホと比べても、特に衝撃を与えない様に注意する必要があります。結局のところ、ケースで被うなどの対策をすることになるでしょう。

端的に言えば、デュアルディスプレイをヒンジでとめたデザインは、耐久性の面ではフォルダブルより優位にあります。Surface Neo/Duoを閉じて持ち運ぶときのスタイルでは、二枚貝のように繊細なディスプレイを防護できます。そして、画面はゴリラガラスでカバーしており、Microsoftの担当者いわく「なんどか転がしても耐えられる強度がある」としています。

そしてSurface Neo/Duoの背面は金属ではありません。金属パネルはモバイル通信の電波をさえぎってしまう性質を持つからです。Microsoftは電波透過性の高い素材を採用したことで、現世代のLTEだけでなく、次期モデルで5Gに対応するときも、大きなデザイン変更なく更新できることでしょう。

「もちろん、Microsoftもフォルダブルの検証を行っています。しかし、その後、2つの独立した画面に情報を表示するSurface Neo/Duoのやり方が、人間の脳がタスクの流れを理解するのに役立つと発見しました。」--Microsoft インダストリアルエンジニアリング責任者のRalf Groene氏は、米Engadgetのインタビューでこう語っています。

「私たちみたいに2つのディスプレイで作ってみませんか? フォルダブルよりはるかに柔軟で信頼性が高く、より自由な角度で固定できますよ」(Ralf Groene氏)



Surface Neo/Duoに触れられた時間はほんのわずかでしたが、どちらも高級感のある作りと感じられました。特に、開閉は非常に自然です。画面遷移もなめらかでしたが、許容できる程度の引っかかりを感じました。特に、キーボードパーツを装着するノートパソコンのようなモードに変更する際は、ラグが大きいように感じました。Microsoftは初代Surface以降、ヒンジの設計に並々ならぬこだわりをもっています。こうした経験が今になって輝いているように感じます。

2画面の欠点はもちろん、1つの長いディスプレイとして使うときの不便さです。ヒンジとベゼルが中央にある分、見づらいのは否定できません。ただし、デモンストーレションを見る限りでは、2画面を制御するドラッグ操作のユーザーインターフェイスは使いやすそうです。アプリを簡単に片方のディスプレイに全画面で展開し、タブレットのような大画面で楽しみたいときも、容易に広げることができます。使いやすそうに見えるのは、おそらく筆者が普段からデュアルモニターで作業しているからでしょう。とはいえ、2つの画面の間にあるヒンジに、Galaxy Foldの中央にあるディスプレイの"ゆがみ"よりは気になりませんでした。

Surface Neo/Duoの設計では、折りたたみディスプレイで併用するのは難しいであろうアクセサリーも利用できます。Surface NeoにはスリムなBluetoothキーボードが用意されていて、横向きで下の画面に磁気でくっつけてタイピングできます。このキーボードを取り付けると、Neoは下の画面の残りの部分を「ワンダーバー」と呼ばれる表示に変えます。アップルがMacBookシリーズで採用している「TouchBar」のように、絵文字入力やショートカットの設定が可能です。

手書き派は、Surface Neoの背面にスリムな新Surfaceペンを磁石でくっつけ、スマートに持ち運ぶこともできます。



将来的にはGalaxy Foldで起きたような、折りたたみディスプレイにまつわる問題はすべて解消するでしょう。しかし、フォルダブルを採用した製品を出荷している企業が長い間小さな会社1社しかなかったという事実は、この技術の展開は長い道のりとなることを示しているように思えます。

そして、フォルダブルにはまだ課題があります。Galaxy Foldの販売価格は約2000ドルで、これはノートパソコンのプレミアムモデルに比肩する価格です。Surface Neo/Duoがいくらになるのかは分かりませんが、既存のディスプレイ技術だけで構築できるため、おそらくフォルダブル製品よりははるかに安価で提供できるでしょう。

Surface Neoについては、Microsoftは新しいデュアルディスプレイ用OS「Windows 10X」を他社にも提供するため、OEMメーカーから競合製品がでれば、価格も抑えていくことができるでしょう。

また、両機種の発売時期が「2020年のホリデーシーズン」と発表からの時間を持たせていることも、評価に値します。この1年間という期間は、「史上初」に急いだサムスンのように事をし損じることなく、慎重に進めていくという姿勢の表れと言えるでしょう。すべての革新的なコンピューティング製品の評判はデリケートなものであり、ずさんな状態で発売してしまうと、消費者の関心を容易に削いでしまいます。デュアルスクリーンデバイスの"正解"をMicrosoftがすべて把握しているわけではないでしょうが、少なくとも現在フォルダブルが直面している問題については、きっちり対策をとってきたと言えるでしょう。

関連記事:
マイクロソフト Surface Neo発表。二つ折りデュアル画面モバイル
マイクロソフト Surface Duo 発表。手のひら大の2画面折り畳みスマホ
新Surfaceを早速ハンズオン、現地で確認した15のチェックポイント。どのモデルも完成度は高い(西田宗千佳)
Galaxy Foldは折りたためるiPad miniなのか? 開封の儀、そして比較
2020年には「曲がるスマホ」だらけに?ディスプレイは早くも低価格化の兆候 #MWC19
原文記事(Engadget US):Microsoft is right: Dual displays are a safer bet than folding screens