中央道上り線で慢性的に渋滞が発生している「小仏トンネル」において、「音声による渋滞対策」が始まります。坂道での速度低下が渋滞の原因であるため、トンネル内のスピーカーから声で速度回復を促すという、国内初の取り組みです。

声で「速度回復願います」

 中央道の東京都と神奈川県の境に位置する小仏トンネルは、特に上り線で休日の午後を中心に、渋滞が多発。10連休となる2019年のゴールデンウイークも、初日の4月27日(土)を除き9日間連続で、小仏トンネル付近を先頭とした20km以上の渋滞が予想されています。


トンネル内は心理的に速度が低下しがち。写真はイメージ(画像:photolibrary)。

 NEXCO中日本八王子支社は、このゴールデンウイークまでに、小仏トンネルである渋滞対策を開始すべく準備を進めています。上り線トンネル内に設置したスピーカーを使った「音声情報による渋滞対策」で、国内初の取り組みだそうです

 同支社によると中央道上り線は、小仏トンネルの手前で下り坂から上り坂に切り替わる「サグ」があり、そこからトンネルにかけて長い上り坂が続くこと、そしてトンネル内でドライバーが感じる心理的圧迫から速度が低下し、渋滞が発生しているといいます。そこで実施される「音声情報による渋滞対策」について、同支社に聞きました。

――どのような渋滞対策なのでしょうか?

 渋滞のないときには無音ですが、車両検知器の速度情報から渋滞の発生を検知した段階で、トンネル内において「速度回復願います」といった音声(具体的な文言は検討中)を流します。車内に聞こえるほどの大きな音量ですが、今回は音の拡散を抑えられる「指向性スピーカー」を使っており、トンネルの外に音が漏れにくくなっています。スピーカーは全部で16台設置しています。

――なぜ行うのでしょうか?

 小仏トンネル付近では従来から、情報板や看板で速度回復を促す文言を表示していましたが、たとえば右側車線を走っていて左側を大きなトラックなどが通過すると、それが見えなくなる場合があるなど、案内が十分ではありませんでした。音声ならば、すべての車両に伝えることができます。

渋滞改善なるか? 抜本的な対策も進む

――これまで同様の対策事例はあるのでしょうか?

 神奈川県内を通る小田原厚木道路のトンネルにおいて、「この先 工事走行注意」といった音声を流し、工事の車線規制をドライバーに知らせる目的で導入した実績があります。このときは安全対策として実施しましたが、一定の注意喚起効果が確認されたことから、今回、渋滞対策に応用することとなりました。

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 しかしNEXCO中日本八王子支社によると、今回の対策のみで小仏トンネルの渋滞を大きく緩和するのは難しいと考えているとのこと。抜本的な改善策として現在、小仏トンネル(上り線)の北側に並行してトンネルをもう1本建設中です。「現在はトンネルの手前で付加車線(登坂車線)が終わり、3車線から2車線になってトンネルに入る形ですが、新トンネルを建設して、トンネル出口の先まで付加車線を延長する計画です」と話します。


小仏トンネルに導入される「指向性スピーカー」のイメージ(画像:NEXCO中日本)。

 ちなみに、小仏トンネル付近(上り線)の渋滞は「午後から夜にかけて発生する傾向ですので、午前中に通過していただければ」(NEXCO中日本八王子支社)といいます。ただし、2019年ゴールデンウイークでUターンラッシュとなる5月4日(土)から6日(月)は、正午前から渋滞発生が予想されているので注意が必要です。