9月のアフガニスタン戦では、香川と原口のコンビが冴え渡り、攻撃の突破口となった。シリア戦でも左サイドは切り札となり得る。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

写真拡大 (全3枚)

 10月8日に行なわれるシリア戦(オマーン・マスカット/日本時間22時開始)は、ロシア・ワールドカップ・アジア2次予選最大の山場だ。勝点差2を付けられているグループE・1位との直接対決で、負ければ日本の1位通過が極めて困難になる。普段以上のプレッシャーがかかるなかでの一戦で、日本代表はどんな戦いをすべきなのか。キーポイントになりそうな3つのテーマを抽出した。
 
――◆――◆――
 
テーマ1/最終局面での崩し
 
 FIFAランク123位のシリアと同55位の日本では力の差が明確で、試合は日本が押し込む展開が長くなるだろう。そこでテーマになるのは、ビルドアップの精度と最終局面での崩しだ。
 
 ドルトムントで好調を維持する香川がキーマンになるのは間違いないが、注目すべきは彼の脇を固める人材の働きだ。例えば、ボランチが有効な縦パスを打ち込めるか。またウイングが、香川と絡んで効果的なコンビネーションを構築できるか。そのあたりが鍵になる。
 
 縦パスを打ち込むという点で言えば、これまで長谷部と山口の2ボランチは満足なパフォーマンスを見せられていない。2次予選のゲームを振り返れば分かるが、香川が狭いスペースでボールを要求しても、配球できずに攻撃がスピードダウンする場面が少なくなかったからだ。
 
 おそらく、シリアが採用するのは、アンカーを置く4-1-3-2(もしくは4-1-4-1)。このシステムの攻略はアンカー脇のスペースの有効活用が肝だ。仮に2ボランチがそこに有効なくさびを打てないようであれば、パスセンスに長けた柏木を早い段階で投入しても良いかもしれない。
 
 ウイングとのコンビネーションについては、徐々に改善されている感もある。相手が明らかな格下だったとはいえ、9月のアフガニスタン戦では原口のドリブル突破に香川が連動して何度かチャンスを作っていたし、宇佐美もカンボジア戦で香川とのワンツーから決定機を迎えていた。とりわけ原口は香川との相性が良く、今回のシリア戦でも同じようなパフォーマンスを披露できれば自ずとゴールは近づいてくるだろう。
 
 一方で、気になるのが香川と右ウイングの本田の連係だ。香川と原口や宇佐美のコンビネーションに比べると、本田とのそれは、あまりインパクトを残せていない。香川とすれば、クイックネスとテクニックに長けた原口や宇佐美のようなタイプのほうが、本田よりもイメージを共有しやすいのかもしれない。
 
 その意味で言えば、怪我から復帰した清武や、初招集の南野が面白い存在だ。とりわけ、オーストリア・リーグで結果を残す南野に対しては、ハリルホジッチ監督も高い評価を与え、こう述べている。
「南野は現代フットボールに適した選手で、ゴール前でしっかりとフリーになって顔を出してくれる」
 
「(これまでの試合で)PKをもらえていないのは理解できない」(同監督)というエリア付近での仕掛けも期待できる。トレーニングの出来次第では、早い段階でチャンスが与えられるだろう。
テーマ2/カウンターへの対応
 
 守備面でのキーワードは、やはりカウンターへの対応だろう。過去のワールドカップ予選を振り返っても、日本は前がかりになった裏を突かれて思わぬ失点を喫してきた。ハリルホジッチ監督が「(シリアの)ゴール前での効果性には驚いた。彼らはそんなに多くの決定機が必要ではないと思う」と評するシリアも中東勢らしくカウンターが得意なだけに、同じようなシチュエーションが生まれないとは言い切れない。
 
 カウンター対策として、定石と言えるのがボランチによるリスク管理だ。先発が予想される長谷部と山口のどちらかが、中盤の底に残ってバランスを取るべきだろう。