芝生の上にひっくり返ってゴロゴロ。そんな愛犬の姿に要注意。もしかしたらアレルギーかも⁉
広い芝生の公園を、愛犬と一緒に散歩するのは気持ちのよいものですね。
でもときどき、地面に背中や耳をこすりつけているワンちゃんをみかけます。
もしあなたの愛犬がそんな仕草をしたら要注意! アレルギーかもしれません。
梅雨から夏に向かう蒸し暑いこの時季、高い気温とジメジメとした湿度によって毛の根元が蒸れることで細菌感染を起こし、背中などのかゆい部位を地面にこすりつけることがあるのですが、放っておいたらますます症状が悪化することも! 悪化する前の対処が大切です。
芝生の上でゴロゴロ……。愛犬のこんな様子もひょっとしたらアレルギーのサインかも!?
そもそもアレルギーってどうして起こる?
人間や動物は、カラダの中にウイルスや細菌などの病原体などの異物が侵入すると、それらを攻撃し、カラダの正常な状態に維持しようとする「免疫」機能を備えています。
特定の伝染病に一度かかると、その伝染病には以降かからなくなることを「免疫ができた」と言いますが、言葉の通り「免疫」とは「疫(えき)から免(まぬか)れる」という、とても優れたカラダのシステムなのです。
そして、この免疫システムが、有害な病原菌ではなく、本来無害な食物や花粉などに過敏に反応して不快な症状を引き起こし、自分自身を傷つけることがあります。これを「アレルギー」と言います(ちなみに「アレルギー」の語源はギリシャ語の「allos(変わった)」と「ergon(反応)」を組み合わせたもの)。
また、アレルギー疾患を持つ人の抗体と特異的に反応する抗原は「アレルゲン」と呼ばれ、アレルギー反応が起きた際には、まず「抗原=アレルゲン」を特定することが非常に大切です。
ワンちゃんのこんな症状に要注意。犬のアレルギーって?
私たち人間が食べ物や花粉、ハウスダストなどの様々なアレルギーに悩むように、実はワンちゃんにもアレルギーは存在します。
ワンちゃんのアレルギー性皮膚炎の代表例を列挙すると……
●ハウスダスト(ホコリ、ノミ、ダニなど)
●花粉(スギ、ヒノキ、ブタクサなど)で起きる「アトピー性皮膚炎」
●ノミの吸血で起きる「ノミアレルギー」
●化学物質などに反応する「アレルギー性接触性皮膚炎」
●食物成分に反応する「食物性アレルギー性皮膚炎」……などさまざま。
「食物性アレルギー性皮膚炎」の場合、ドッグフードにもよく含まれる小麦、子羊肉(ラム)、鶏卵、鶏肉、大豆、とうもろこしなどが「抗原=アレルゲン」になることもあるので、飼い主が気づいてあげられず、いつもと同じドッグフードをあげていれば症状はいっこうに改善されないことに!
また、アレルギーの症状の代表的なものには……
●耳の内側、口の周り、脇の下、内また、足の先などが赤くなる
●発疹が皮膚に生じる
●脱毛
●フケが多くなる
●赤くなった部位をかゆがる
●手足の指の間や裏側を噛んだり、執拗にペロペロ舐める
愛犬にこうしたアレルギー症状が見られた愛犬・ダックスフント(11歳)を飼う、愛犬家・Aさんの場合・・・
「散歩の際に背中を頻繁に地面にこすりつける」「目のふちが赤くなる」「一日中、ひっきりなしに手足を噛む」といった症状に悩まされ、さらにこうした行動の繰り返しによって「肉球に血がにじむ」悲惨な状態にも……。結果、病院で検査をしたところアレルギであることが判明したそう!
愛犬のアレルギーの原因を知るには?
動物病院によって検査方法は異なりますが、一例を挙げると、アレルギー特異的IgEの有無を検査する「IgE抗体(免疫グロブリンEというタンパク質)測定」があります。
この方法は、採取した少量の血液から、その動物のカラダがどのようなものを異物と認識してIgEを産生しているかを検査するもの。
結果が出るまでには数日〜数週間かかりますが、結果によってIgEの数値が高い食材ほど「抗原=アレルゲン」になりやすいことがわかります。さらに草、樹木、雑草、カビ、ハウスダスト、食物、昆虫、ノミなどの数十項目においても「抗原=アレルゲン」が判明するので、ワンちゃんとの快適な暮らしを維持するうえでの大きな指標となりますね。
先ほど紹介した愛犬家・Aさんの愛犬・ダックスフントでは、「IgE抗体測定」によって、ライムギ、カモガヤ、オリーブ、ヤナギ、クワ、ハウスダスト、鶏肉、コーン、米、ニンジン、玄米……といった食材に高い数値が! その結果、
●散歩の時は高い数値の出た雑草の生えていない場所を散歩のルートに選ぶ
● 蒸れて湿疹にならないよう、シャンプー後はとにかくよく乾かす
● 自宅の湿気、ほこり、ハウスダストに注意する
● フード選びでは「抗原=アレルゲン」の食材が入っていないものを探す
検査によって的確な対処ができるようになり、Aさん宅のワンちゃんもこれで安心ですね。
ワンちゃんの大好きなフードも、気をつけて選んであげましょう!
意外なものがアレルゲンとなる「交差反応」
ここまで読んで、「わが家の愛犬もひょっとしたらアレルギー?」と思った方は、さらにアレルゲンに近い組成をもつ食品がアレルギー反応の症状を引き起こす、「交差反応」という言葉も理解しておきたいもの。
「交差反応」とは、例えばキク科の一年草「ブタクサ」にアレルギーを持つ場合、セロリ、メロン、スイカ、バナナ、トマトなどにも、同様のアレルギー反応が生じることを指します。
このように、意外なものが「抗原=アレルゲン」になる場合があるので、「食物アレルギー?」「あれ? いつも様子と違う」と感じたら、まずは獣医さんに診てもらうことが何より大切!
激しいかゆみを伴う発疹や皮膚炎は人間にとってもつらいものですし、言葉を発せないワンちゃんだからこそ、皮膚を執拗に舐めたり掻いてしまうことで症状を悪化しないよう、愛犬の様子を飼い主さんは日頃からよく観察し、早めの検査と的確な対処を心がけてあげてくださいね。