月々の給料の使い道【Bさんの場合】

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【年収】600万円【貯蓄額】800万円
【家族構成】Bさん[夫]35歳 外資系IT企業[妻]33歳 パート勤務[子]8歳、6歳(小学生)

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■Bさんの悩み

外資系IT企業勤務のBさんは、月々の収入は少なくないものの、年俸制のためボーナスがない。妻は子どもが小学校に上がったのを機に、近所のコンビニでパートを始めた。

教育熱心な妻は、最近、2人の子どもの習い事を減らした。理由は、2人とも私立中学・進学塾に通わせたいと思っていて、そのための資金を準備するためだ。家もいまのところは賃貸だが、ゆくゆくは購入を希望している。

Bさんはこの前「保険も見直したほうがいいのでは?」と妻から相談を持ちかけられた。保険は、会社に出入りしている生命保険会社の生保レディにすすめられて、そのまま加入したものだ。やはり保険のリストラは必要か。

■家計再生コンサルタント 横山さんのアドバイス

この家庭の場合、やはり生命保険料が一番気になる。月に7万2000円の保険料は、いくら何でも高すぎる。「子どもの学資保険を入れて」とのことだが、それでもここは大きく削れるだろう。

とはいえ、私は「保険は必要ない」とは考えていない。一時期、「保険悪者説」が横行し、生命保険の見直しをして保険料を激減させることが流行したが、個人的にはあれはいかがなものかと思っていた。

保険というものは、付き合い方によって「消費」にも「浪費」にも「投資」にもなりえるものの代表だ。

高額な保険料を払っていて、幸いにも病気もケガもなかったとしよう。この場合、保険は「浪費」になってしまうかもしれない。逆に病気になり、保険の保障によって支えられたという場合は「投資」とすら受け取れる。

貯蓄性のある保険の場合は、将来への備えになるからそれなりの「投資」となる。さらに「いま」を安心して過ごせるよりどころとなっているならば「投資」という考え方もできるだろう。

ただ、「どういう人にとって保険が必要か?」というと、やはりいざというときの貯金が十分でなく、かつ扶養家族が多い人だ。

「いまはお金が十分にない。でも、もしものときは守るべきものがある人」が利用すると、保険は有効な金融商品となる。逆に、メーンの稼ぎ手に何かあっても、入院費用や学費が用意できる人はムリに保険に入る必要はない。

Bさんの場合は、すでに800万円の貯蓄があるのに、プロに言われるがまま、ムダに高い保険料を払っている。これは「浪費」以外の何ものでもない。少なくとも夫の保険料は半分にしてもよい。子どもの学資保険は医療特約などを過度につけていないか見直そう。

次に気になるのが「教育費」だ。

「習い事は、本人が楽しんで行っているようなので、続けさせたい」とのことだが、私立中学受験ための進学塾へ通わせるつもりなら、なおさら、親のためにも子どものためにも、英会話かスイミングのどちらか一方に絞るのが得策だろう。

子どもの成長は本当に早いものだ。この前、生まれたと思ったら、あっという間に幼稚園、小学校……。まだまだ先のことで大丈夫だと思っていたら、いつの間にか高校生になり、大学受験となる。私も5人の子どもの父親なのでよくわかる。

家計相談でも、教育費に関する相談はよく受ける。

不況が続いているせいもあり、子どもの成長に親御さんの経済力がついていけない状況が非常に多い。

とはいえ、教育費は、早い段階で計画すれば何とか準備はできる。そして時には発想の転換も必要だ。

そもそも、子どもの教育費は大学まで行かせた場合、いくらかかるのか。資料により数字は多少異なるが、一般的には子どもひとりにつき幼稚園から大学まで、すべて国公立に通わせた場合で、約1000万円。途中で私立へ行かせることも考えると1500万〜2000万円。小学校からすべて私立に通わせると約3000万円が必要だと言われている。

Bさんの場合、子どもを2人とも私立中学校へ入れたいとのこと。どのタイミングから私立へ行かせるかにもよるが、正直言って、いまの年収で私立受験とマイホーム購入の両方を実現するのはかなり難しいと思う。

ならば優先順位をつけて、子どもの教育を優先するならマイホームはあきらめる。マイホームが欲しいなら、発想を転換して、レベルの高い公立へ進学させ、大学は「奨学金」などを上手に利用することも考えてはどうか。

そもそも教育費とは、親がすべて現金でそろえる必要があるのだろうか。大学生にもなれば教育は自分への「投資」なのだから、教育費の一部は本人に負担させるという考え方があってもいいように思う。小さい頃からそれをきちんと言い聞かせておけば、本人たちもそういった気持ちが強くなるのではないだろうか。

あとは、人付き合いが好きな夫の、「とりあえず」のお付き合いを多少断って、「浪費」を少しずつ削減しよう。ボーナスからの貯蓄がまったくできないなら、月々ボーナスを分割してもらっていると仮定してお金を貯めるべきだ。月々8万〜10万円程度は貯蓄を目指してほしい。

■「Noと言えない」症候群

【症状】会社の同僚との愚痴を言い合うだけの飲み会の誘いや、子どものおねだり、生保レディの勧誘など、すべてにNoと言えない病気。結果、交際費や保険費用など、ちまちました出費が雪だるま式に増える。
【処方箋】気軽にYesと言う前に、「5年後、10年後を考えたときに、その行動を後悔しないかどうか」「投資としてきちんとリターンがありそうか」を一瞬考えてみることが第一歩。答えがNoならただの浪費。きっちりNoと言うべし。

■「不安貧乏」シンドローム

【症状】不安をあおりながら保険を売り込む生保レディの言葉を信じ、不必要な特約がてんこ盛りの保険を契約。プロに任せたんだから……と自分で検討することもなく言いなりに。
【処方箋】「営業のプロ」は自分の売りたい商品をすすめる可能性も高いことを念頭に置く。「このくらいの金額なら入れる」ではなく、本当に必要な保障かどうか見極め、複数商品を比較しよう。保険についての書籍や雑誌は山のように出ている。まずは情報収集を。

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家計再生コンサルタント、ファイナンシャルプランナー 横山光昭
1971年生まれ。FPとして司法書士事務所に勤務した後、2001年に独立。5200人以上の家計を再生した実績を持つ。著書『年収200万円からの貯金生活宣言』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)がシリーズ37万部のベストセラーに。

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(家計再生コンサルタント、ファイナンシャルプランナー 横山光昭 構成=八村晃代 撮影=アーウィン)