7日付のデイリースポーツ紙が、読売ジャイアンツのドラフト1位投手、菅野智之ワンシームを「魔球」と紹介している。

 ワンシームは、ボールを1周する間に縫い目の線が1回通過する向きで投げられる速球。指先を縫い目にかけないため制球が難しいが、ツーシームよりも変化が大きい。ストレートの球速で、シンカー、もしくはシュートに似た動きをする。
 わが国では金子千尋、米メジャーリーグではダルビッシュ有ティム・ハドソンジョン・レスターなどが投げている。

 魔球! なんとも素晴らしい響きか。これを耳にして、心が震えない野球少年がはたしているのだろうか。

 かつては魔球と呼ばれていた変化球の多くは米国産だ。代表的な変化球であるカーブは、19世紀に活躍したキャンディ・カミングスが貝殻を投げて遊んでいるときに生み出したと言われている。
 他の変化球では、スライダーチーフ・ベンダーシンカールーブ・フォスターフォークバレット・ジョー・ブッシュスプリットフィンガード・ファストボールブルース・スーターナックルエディ・シーコットが考案したと言われている。(起源には諸説あり)
 指を伸ばした状態で手のひらと親指、小指もしくは薬指も使用してボールを支え、手のひらで押し出すように投げるパームは、中日ドラゴンズなどで活躍した近藤貞雄が生み出したとされているが、魔球の多くがアメリカで開発され、わが国に持ち込まれた。


 「巨人の星」は梶原一騎原作の野球漫画だが、作中で球質の軽さに悩む主人公、星飛雄馬に、先輩の金田正一がアドバイスするシーンがある。
 金田は、星の弱点を改めて指摘。そのうえで、日本発の変化球を生み出すことを、悩める後輩に提案する。

 所詮は漫画と言われればそれまでだが、先に紹介したように、近藤はわが国発の魔球、パームを生み出した。

 わが国は米国に次ぐ野球大国だ。過去2度のWBC(World Baseball Classic)を制しているほか、毎年春と夏には高校野球に注目が集まる。
 ここ数年間はサッカーなど、他のスポーツに人気を奪われがちだが、野球はわが国を代表するスポーツの1つだ。

 そんなわが国が、いつまでも魔球を輸入していていいのだろうか。パームに次ぐ、第2、第3の日本発の魔球が生まれてもいいのではなかろうか。

 少し子供じみた内容になってしまったが、わが国で生まれた魔球が、並み居る外国人打者から三振の山を築くシーンを夢見てならない。