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 監督が交代したエスパニョール。新監督はアギーレである。オサスナ時代のサッカーや、かつてメキシコ代表を率いていたときの記憶が色濃く残っている。そんなエスパニョールをカンプ・ノウで迎え撃つのはバルセロナ。今季は公式戦で未だ2敗しかしていないバルセロナ。リーガ・エスパニョーラでは無敗である。そんなバルセロナを誰が止めるのか、注目が集まっている。

 ■前提をぶっ壊せ

 バルセロナダービーということで、注目が集まった。しかし、試合が始まると、一気にバルセロナが猛攻を仕掛け、前半で試合を終わらせる、という展開になった。

 エスパニョールは4-1-4-1で守備をセットした。誰かに特定のマークをすることなく、ゾーンでバルセロナの攻撃に対応しようと試みた。プレスの開始ラインはハーフライン付近である。

 相手が前からプレスをかけてこなかったので、ビルドアップの局面で苦労すること無いバルセロナ。あっさりとDFラインからシャビやブスケツにボールが届いていく。

 エスパニョールの狙いとしては、この位置、つまり、シャビやブスケツ、セスクにボールが入った時に強烈なプレスをかけたい。そうでなければ、彼らからどんどん試合を作られてしまうからだ。また、ゾーンディフェンスの原則として、ボールを持っている相手にプレスをかける、というものがある。ボールを中心にポジショニングが決まるソーンディフェンスだと、ボールの近くにいる相手はスペースを得やすいので、そこにボールが渡ると不都合であるからだ。

 というわけで、ボールを持っている選手にプレスがかかっているかが重要になる。結論から言うと、プレスはかからなかった。正確に言えば、エスパニョールはプレスをかけることができなかった。

 その原因は枚数不足にある。

 バルセロナが相手を攻略するときに、最初に狙うのはこのスペースである。
 
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 いわゆる、FWとMFの間のスペースである。ボールを動かしながら、バルセロナの選手は情報を集めていく。相手がどこからプレスに来るのか。中盤の選手はどこまで深追いしてくるのか。相手のFWはどこまで下がって守備に参加するのか。これらの情報を収集して、バルセロナは適切な選手配置を見つけていく。

 エスパニョール戦では、セルヒオ・ガルシアがプレスバックをあまりしない、中盤の選手もそんなに出てこないという情報を得る。なので、あんまり苦労しないで、このスペースの攻略に成功した。
 
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 なので、人数の調整が必要である。ただし、バルセロナを例に取ると、そもそもブスケツがいるので、枚数の調整が必要ない。ただし、選手間の距離が近すぎれば、相手にエトーなみのプレスをかける選手がいれば、数的優位を享受できないということもある。

 なお、枚数が足りているとしても、枚数が多ければ相手のプレスに迷いを生じさせることもできるし、密集によってボールを回しやすくなることもある。なので、ポジションに変化ができる。

 メッシが降りてくるのが有名な例である。ジョルディ・アルバの加入によって、攻撃の横幅はWGかSBが担うことになった。なので、WGはメッシの空けたスペースを使ったり、MFのボール回しに加わったりと柔軟に対応できるようになっている。

 いるはずのない選手が突然に現れると、守備の選手は数的不利になってしまうことが多い。そうなれば、単純にボールを持っている選手にプレスをかけることが難しくなる。メッシが中盤に降りてきて、相手の中盤がダイヤモンドの4枚になれば、一気に数的不利である。CBがついてくれば面白いのだが、ペドロが中央に流れてくれば、その判断も難しくなる。SBは上がってくる相手のSBを抑え、そうなると、SHが中央に絞るのか?という連続した判断を何度も何度も強いさせることができれば、相手はそのうちに機能性を失う。

 グアルディオラ後期のバルセロナはサイド攻撃をWGに一任することが多かった。その代わりに中央や後方に枚数を残すことで、中央突破の強化や相手のカウンター対策をしていた。

 この試合のバルセロナはサイド攻撃をWGとSBの連携というスタンダードな形を見せた。ジョルディ・アルバの加入によって、両サイドの攻撃力が異常になりつつあるので、バルセロナと対峙するときにサイドを捨てる守備をすれば、一気に切り裂かれる状況に近づきつつある。

 もちろん、サイドを守るようになれば、わずかだが中央にスペースができる。そうなれば、そんなわずかなスペースを見逃さないタレントたちが中央突破を試みてくる。

 無論、カウンター対策は微妙である。バルセロナらしさである素早い攻守の切り替えをくぐり抜けられた時にバルデス、ピケ、プジョルに頼んだぞ状態。このトリオの能力が高いので、問題は顕在化しにくいが、相手が超強力な戦力を有するチームだと、ちょっと怖い。ただし、その代わりに手に入れたサイド攻撃で押し切る作戦は非常にバルセロナらしい発想なのだが。

 というわけで、めちゃくちゃ強いぞバルセロナであった。

 ■独り言

 ゾーンディフェンスと対峙するときは、上記の前提をいかにぶっ壊すか対決になる。バルサはその方法論をたくさん持っている。逆に考えると、いかにしてボールホルダーにプレスをかけ続けるかの方法論をたくさん保有していれば、ゾーンディフェンスはしっかり機能する。そこがエスパニョールは甘かったかなと。もちろん、バルセロナが強かったのは言うまでもないが。