「百貨店市場は今後5年間で、さらに1兆円縮む」
 高島屋の鈴木弘治社長が4月6日の決算会見で、そんな厳しい見通しを披瀝した。むろん、デパートの地盤沈下は今に始まったことではなく、長期にわたって売上高の前年比減少が続いている。2001年に8兆5724億円だった売上高は、昨年6兆1525億円まで落ち込んでおり、10年間で2兆4000億円も減少したことになる。

 小売業トップのイオンは2014年に売上高6兆円(今年2月期は5兆2061億円)の目標を掲げており、鈴木社長の見立て通りならば、全国のデパートが束になってもイオン1社の足元にも及ばないことになるのだから相当に深刻だ。
 「各社とも危機感を募らせているのですが、起死回生の特効薬など簡単に見つからない。だからこそ、旧態依然とした店舗改装ラッシュにすがるしかないのが実情です」(流通業界紙記者)

 実際、ここへ来て各社とも大規模改装に活路を求めている。三越伊勢丹ホールディングス(HD)は、2年前に約420億円を投じて5割増床した三越銀座店に続き、伊勢丹新宿店も婦人服売り場などを約90億円かけて改装し、来年春の開業を目指している。また、苦戦が続く三越日本橋本店も、新装オープンわずか8年で全面リニューアルに向けて動き出している。東京ではほかに高島屋東京店、大丸東京店が大幅増床を計画しており、松坂屋銀座店は周辺地域と一体再開発して巨大な商業施設を建設予定だ。
 大阪ではJR大阪三越伊勢丹が昨春に開業。いわゆる“大阪百貨店戦争”が勃発したタイミングに合わせて大丸梅田店や高島屋大阪店が増床で対抗、今秋には阪急梅田店が大幅増床する上、地元勢の迎撃に遭って苦戦を強いられている三越伊勢丹も「大逆転」を狙って来年中の大改装を計画している。
 似たような話は名古屋や横浜にもあり、まさに“改装・増床ラッシュ”の言葉がピッタリする。

 その一方で各社とも新規出店の計画はない。市場が縮小し、もはや拡大が望めないことから「ビッグマネーを注ぎ込んで出店しても採算が取れない」と踏んでいる証拠である。といって手をこまねいていれば、スーパーやユニクロなどに顧客を奪われ、ジリ貧の一途をたどるのは目に見えている。だからこそ改装という名の“局地戦”に打って出て、限られたパイの争奪戦に活路を見出そうとの作戦なのだ。
 確かに、店舗を増床・改装すれば宣伝効果から一定の集客が見込めるだろう。しかし、それも時間が経てば効果が薄れる。そこでまたゾロ増床・改装を繰り返せば、結局は麻薬中毒と同じ。まるでパチンコ屋の新装開店だ。