たまには2クールのドラマを観てみたい!

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連続テレビドラマの秋の陣がはじまった。このところ、まるでテレビ番組表の穴埋めをするために作っているようなつまらないドラマが多かった。しかし、この秋のドラマは、過去1年ではもっとも豊作だという声もあがっている。今回は、放映回数という斜めの視点からドラマを考えてみようと思う。

最近、ひとつのドラマが連続で放映される期間が1クール(四半期)となり、放映回数は10〜12回というパターンが定着している(NHKの大河ドラマを除く)。昔からテレビを観ているものとしては、この放映期間は短いと感じることもある。若い読者は知らないかもしれないが、以前は2クール(半年)にわたって放映されたドラマがざらにあった。

いまでも筆者が内容を覚えている2クールのドラマは、TBS系では「赤いシリーズ」(「赤い疑惑」「赤い運命」「赤い衝撃」など。1974年から80年にかけて放映)、日本テレビ系では「傷だらけの天使」(1974年)や「探偵物語」(1979年)などがあげられる。とりわけ最後のふたつは、年に一度、DVDで通して観るほどハマり続けている。

ドラマの放映期間が短くなった理由は、視聴者のテレビ離れがあげられよう。若年層が情報を収集する手段は、すでにテレビからネットにシフトしている。全体のパイが減っている中で、視聴者につまらないと思われたドラマを半年放映するのはリスキーである。それよりも、半年に2種類のドラマを放映したほうが、リスクが分散される。

さらに、多チャンネル化も理由のひとつだと思う。実際、地上デジタルとBSの無料チャンネルだけでも山ほどある。その中から自分に好みのドラマを見つけるだけでも一苦労。チャンネルを回しながら、おもしろそうだと思った番組を一瞬だけ観て、おもしろければ観る。つまらなければチャンネルを変える。そうなると、コマーシャルと同様に、全体の流れよりも一瞬のおもしろさや奇抜さを狙ったシーンが多いドラマが増えてしまう。

個人的な好みで言えば、大河ドラマ以外にも内容で勝負する2クールのドラマがあってもいい、と思う。一方、2クールで勝負するなどというリスキーなことができたのは、テレビが黎明期であったからだ、とも言える。「傷だらけの天使」や「探偵物語」は1回で話が完結するものが多く、ほぼ毎回、監督と脚本家が異なるなど、いまでは考えられない手法でドラマが作られていた。

過去を懐かしみ、過去にしがみつくおっさんをノスタルジジイと言う。こうして過去の2クールのドラマを懐かしみ復帰を願う筆者は、まさにノスタルジジイなのかもしれない。また、テレビ離れや視聴率競争のただ中にいるテレビ制作者に無理強いをするのは酷なのかもしれない。それでも、ときには内容のある長丁場のドラマを制作するなど、試行錯誤はしてほしいと願う。

(谷川 茂)