優勝しても、アジアを制しても、やっぱり僕は喜ぶ気になれずにいる。結果より中身。サッカーそのものへの関心の方が勝るからだ。現在より今後の可能性への関心が勝るからだ。究極の選択として言わせてもらえば、日本が勝利するシーンより、良いサッカーをする瞬間を見たいのだ。

というわけで、採点です。

GK川島 7 不安定な守備もあったが、ビッグセーブも連発。

DF今野 6 後半、ハイボール苦戦。定位置を岩政に譲り、サイドバックにポジションを代えた。フィードの短さは問題だが、大会を通してバックラインをよく支えた。影のMVP。

DF長友 7 延長に入り、4−2−3−1の3の左でプレイ。この采配が的中し、準決勝に続き、見事なアシストを決めた。決めた選手は、これもザッケローニが交替でピッチに送り込んだ李忠成。とはいえ、ザッケローニの采配を持ち上げる気にはなれない。このくらいは、ある意味で当たり前の交替。空中戦で苦戦している今野に代えて岩政を投入するのは当然。バックのリーダーとして頑張ってきた今野を、ベンチに下げず左サイドバックに回すのも当然。これにより長友がポジションを一つあげるのも妥当。藤本が活躍できずにいたので、そう難しい選択ではない。褒めるべきは長友であり、それまで冷遇されてきたにもかかわらず、大事な場面でボレーをしっかり当てた李忠成だ。

それを褒めるなら、準決勝(韓国戦)の延長で、15分以上も残しながら守備的サッカーの典型とも言うべき5バックの作戦に出た采配をまず責めなければならない。ラッキーなPKで勝ち越すや、守備的サッカーの踏み絵を簡単に踏んでしまった行為は、それと相殺してもたっぷりおつりがくる愚行だ。

話が長くなって恐縮だが、監督に求められるのはまず哲学。「色」だ。戦略、戦術、采配および布陣の決定はその後に問われるものになる。采配を的中させても、肝心要の哲学がブレれてしまえば元も子もない。失った信頼を回復するのは容易ではないのである。

DF吉田 6 猛攻に良く耐えた。これからはもっとフィードに磨きをかけたい。

DF内田 4 戦闘意欲を感じない消極的なプレイに終始。頼りない選手に見えた。

MF遠藤 4.5 本田をサポートできず。前半38分、本田から決定的なパスを受けた瞬間、シュートを打たずに後方に弱気なパスを戻したプレイは大問題。距離の短いパスしかプレイに選択肢がない点は見ていてつらい。

MF長谷部 5 遠藤同様、本田をサポートできず。有機的なパス回しに絡めず、それが本田のポジションを下げる原因に繋がっていた。

MF藤本 4 まるでプレイに絡めず。何をして良いのかまるで分からずにピッチに立ってしまった感じ。とはいえその責任は、それまで彼を1分しか使わなかったザッケローニにもある。硬直化したメンバー交替のツケが現れたと言うべき。

MF本田 6 困ったときの本田頼み。本田がボールを触らないと、全てが始まらないサッカー。これがアジア杯を戦ったザックジャパンの正体だ。彼が大車輪の活躍をしないと、保たないサッカー。その個人能力が発揮されない限り、チャンスは生まれないサッカー。前回も述べたが、これではワンマンチームと呼ばれても仕方がない。ある特定の選手に、ここまで依存するサッカーも珍しい。

MF岡崎 5.5 大会を通してコンスタントに力を発揮。ベンチスタートから欠かせぬ選手にポジションを上げた。突っかけるアクション、相手の逆を取るボール運び、ドリブルを身につけられれば、プレイヤーとしてもうワンランク上がる。

FW 前田 5 豪州の大型DF相手に苦戦。キレ、クイックな動きにいつも以上に欠けた。

※ 交替選手