「終活」にあたって親がしてほしいことを、子どもが書き留めておくと満足度が高いエンディングノートができるかもしれない(写真:Fast&Slow/ PIXTA)

今や「終活」の代名詞となっている「エンディングノート」は、何のため、誰のために書き遺しておくものでしょうか。それは「家族のため」である以上に、「自分のため」でもあります。これまでの経歴や趣味など、書くところはたくさんありますが、結論から先に言うと、絶対に書くべきことは3つに限られます。

では、その3つを挙げる前に、まずはエンディングノートを書くコツからお話ししていきましょう。

「今までの自分の人生」をどこまで詳しく書けばいいのか

エンディングノートとは前出のとおり、本来は家族に伝えたいこと、望むことを書き記しておくものです。「終活」という言葉が身近になり、書店に並ぶエンディングノートを手にする人も増えています。ところが、「買ってはみたものの、いざとなると書けない」といった声をよく耳にします。どうして書けないのでしょうか。

エンディングノートを書くのは、確かに面倒ですし、何を書いたらいいか悩む項目も少なくありません。何冊か手に取ってみるとわかりますが、自分の経歴や家系図、趣味、思い出、座右の銘などを書く欄があり、内容は盛りだくさんです。その多くは自分史を綴るような構成になっていますが、「どうしても自分の人生を書き遺しておきたい」という人でなければ、あれこれ書く必要はありません。

とはいえ、書き遺しておくことで、自分自身が安心できることもあります。たとえば、故人のことで何か決断をしなくてはならないときに「故人の意思」がわかれば、遺された家族が困らずにすみます。なによりも、自らの意思を書き遺さないと困るのは、「自分」です。

なぜなら、自分が望む最期が遂げられず、不本意な形で人生の幕を下ろすことになりかねないからです。では家族はもちろん、なによりも自分が困らないための、エンディングノートの書き方とはどんなものでしょうか。やはり「絶対に書かなければいけないこと」をしっかり書き遺すことです。

では絶対に書き遺すべきこととは? それは、「命」「おカネ」「友達」に関する3つのことです。

特に大切なのは、命にかかわる「病気になったらどうするか」についてです。大きな病気をしたとき、意識がしっかりしていれば、自分で治療方法を選択できます。しかし、意識障害に陥ったり、認知症だったりしたら、自分で判断したり、意思を伝えることができません。その場合は家族が医師と話し合って決めることになるので、あなたの思いどおりにいかない可能性があります。

もし自分の意思に反するような処置をされないためには、「延命治療はしないでほしい」「子どものために、少しでも可能性があれば治療に取り組みたい」「一日でも長く生きたい」など、意思を伝えておく必要があります。

私自身、もし大きな病気をしても治療は受けないつもりでいます。ただ、痛みを抑えるだけにしてほしいと思っています。そのことは、何度も家族に話しているので、よく理解してくれているはずです。自分の命のことは自分で決めたいですし、重大な決断を家族にさせるのは可哀想です。家族が困るって、嫌ですからね。

余命宣告されたら存命中に保険金がもらえることも

次はおカネについてです。「どの金融機関に口座があるか」「どの保険会社と契約しているか」は、絶対に書いておきましょう。

それがわからないと、家族は金融機関に片っ端から問い合わせなければなりません。それは想像以上に大変なことです。故人の資産を金融機関に照会するには、法定相続人全員の合意書が必要です。取引があるかわからない金融機関にまでそんなことをするのは、かなりの手間です。

保険についても、加入していることを知らなければ請求できません。生命保険には、余命6カ月以内と診断されたときに、死亡保険金の一部、もしくは全額を生きている間に受け取れる「リビングニーズ特約」が付いている場合があります。がん治療の副作用で起こる脱毛のためのウィッグを作ったり、マッサージや健康保険が利かない治療を受けたり、旅行に行ったりするのにも使えます。

こうした使い方についても、加入している保険の詳細と一緒に記載して、保険証券の保管場所を伝えておきましょう。これも、自分のためになりますね。

最期に、意外と大切なのが、お友達リストです。

人生の終わりに、「会っておきたい人」「お礼をいっておきたい人」「お願いしたいことがある人」がいるかもしれません。しかし、体調が優れないと、「〇〇さんに連絡して。連絡先は……」と伝えるのすら負担になります。

また亡くなったあと、すぐに知らせるべき人は誰なのか、家族にはわかりかねます。「そのときに備えて住所録を整理しておけばいい」と思いがちですが、誰が本当に親しい人なのかはわかりにくいのです。

そこで、「病気になったら会っておきたい人」「亡くなったら知らせてほしい人」「年末に喪中欠礼を出してほしい人」がわかるようにしておきます。名前、電話番号のほかに、メールアドレスがあると、連絡するのに便利です。たくさんの人をリストにするのは大変なので、たとえば「仲良し4人組」ならその中の代表的な1人の連絡先を書き、その人を通して「〇〇さんと○○さんにも伝えてもらう」と書き添えておけば大丈夫です。

「喪中欠礼を出す人」については急ぐ必要がないので、名前だけ記し、連絡先は住所録参照としておけばいいでしょう。

子どもが親からそれとなく聞いて書き留めておく

以上、3つの大切なことが書いてあれば、エンディングノートは十分です。

まずは前出のような骨組みをしっかり書いて、余裕があったら、一つひとつの項目について、もっと詳しく書くといいと思います。たとえば、病気については、「余命まで知りたいのか、知りたくないのか」など、さらに気になることがあれば記載していきます。


ほかにも、「葬儀をしてほしいのか、してほしくないのか」、葬儀をするなら「家族葬がいい」といった希望なども、気になったときに追記していくといいでしょう。エンディングノートを書くことは、人生について考えることでもあります。夫婦で、または親子で話しながら書いたり、親からそれとなく意思を聞いて子どもが書き留めたりするのもいい方法です。

実は、私は、母が亡くなってしばらくしてから、偶然、「とてもよく撮れている母の写真」と、「母が書いたメモ」を見つけました。母が自分で遺影用に選んだ写真と、その写真を遺影にするようにとのメモでした。「元気なときに言ってくれたらよかったのに……」と、今でも少し切なくなります。こうしたこともあり、私は自分が気に入っている写真を用意して、保管場所を家族に伝えてあります(ときどき、写真を入れ替えたりもしています)。こうして伝えておくことが大事なのです。

遺言書ではないので、エンディングノートには法的拘束力はありません。ですから、肩の力を抜いて「必要最低限のこと」を簡潔に書いてみましょう。