「私は山田五十鈴の娘よ」舞台の主人公である「唐人お吉」は、幕末から明治時代に実在した伊豆下田の芸者である。アメリカ総領事ハリスの妾となり、ハリスと別れた後は酒色におぼれ、最後は伊豆下田の海に身投げをして死んでしまう。その享年は喜和子と同じ48歳であり、最後の公演を行ったのは下田と程近い伊東であった。喜和子の人生は、命を懸けていた芝居を除けば、お吉と同じく「酒とタバコと男」に彩られていた。石坂浩二