優勝を決めたドイツ代表 (写真:岸本勉/PICSPORT)

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 延長後半までもつれたものの、ドイツのW杯優勝は今大会の結末にふさわしい。

大会最多の18得点を記録したドイツは、攻撃力をフル稼働して対戦相手をねじ伏せることも、最少得点差の1対0で勝利することもできる。試合運びは硬軟自在だ。

 ブラジルW杯は、メッシの大会でも、ネイマールの大会でも、ロッベンの大会でもない。ドイツの大会である。特定の個人に依存しないレーブ監督のチームは、誰でも勝利の立役者になれる。チームとしての水準の高さと、その裏付けとなる個のレベルは、参加32カ国で文句なしにトップだ。
 
 アルゼンチン戦の前半31分、ドイツはクラマーが負傷交代を余儀なくされる。一度は先発と発表されたケディラがふくらはぎに違和感を訴えたため、急きょ先発に昇格した彼の交代は、想定外の上に想定外が重なったものと言っていい。

 だが、代わって出場したのはシュールレなのだ。エジルのポジションを変えることで必要なバランスを保ったドイツは、チームとしての機能性を維持しながらゲームを進めていく。
 
 延長後半113分に生まれた決勝点は、アルゼンチン、オランダ、ブラジルらとの違いを際立たせるものだ。左サイドを突き破ったシュールレも、憎いほどの冷静さで左足ボレーを叩き込んだゲッツェも、試合前の国歌はベンチで聞いている。彼らはスタメンではない。彼らほどのクオリティを持った選手が途中交代のカードとなるのは、ドイツの大きな強みだったのだ。
 
 アルゼンチンのサベーラ監督は、90分以内で決着をつけたかったのではないかと思う。準決勝からの試合間隔が、アルゼンチンはドイツより1日短い。しかも、オランダとの準決勝はPK戦までもつれた。ブラジルに大勝したドイツとは、疲労度に大きな違いがあったのは間違いない。

 選手交代のタイミングは示唆に富む。

 延長戦までもつれたラウンド16のスイス戦で、サベーラが一人目の交代選手を送り出したのは74分だった。残り2枚のカードは、延長戦で使っている。
 
 オランダとの準決勝では、最初の交代に踏み切ったのだ81分である。直後の82分に2人目を交代させたが、3人目は延長戦前半だった。
 
 この日は違った。0対0で迎えた後半開始ととともに、サベーラ監督は一枚目のカードを切る。2人目は78分で、3人目は86分である。決勝トーナメントの過去3試合に比べると、交代のタイミングが極端に前倒しされている。早めに手を打つことで、サベーラ監督は勝機を見出したかったのではないかと思うのだ。

 ディ・マリアをケガで欠き、アグエロが本調子ではない時点で、そもそも攻撃に変化をつける交代は難しくなっていた。決して好調とは言えないイグアインが前半に、彼に代わったパラシオが延長前半に決定機を逃したのは、サベーラ監督の苦悩を象徴していた気がする。

 延長後半の決勝ゴールはドラマティックだが、結果は両チームの実力を正しく映し出した。アルゼンチンは、負けるべくして負けたのだ。