日本代表が東アジア杯(韓国)に臨んだ。招集メンバーは代表キャップゼロの選手15人を含む国内組の若手中心。A代表というより、“B代表”と呼ぶべきチームだったけど、今まで代表入りを期待されながら招集されなかった選手が数多く選出。しかも、6月のコンフェデ杯(ブラジル)で惨敗した後だけに、「新戦力よ、出てこい」というファンの期待度も高かった。僕自身も新鮮な気持ちで試合を観たよ。

とはいえ、以前から抱いている大きな違和感は消えないままだ。

ザッケローニが日本代表の監督に就任してからもうすぐ3年。今まで新戦力を試す機会はいくらでもあったのに、なぜ彼はそれを生かしてこなかったのか。W杯本番まで1年を切ったというのに、貴重な強化の場である国際大会に代表キャップゼロの選手を15人も招集するなんて、いくらなんでも多すぎる。常に選手を入れ替え、競争させていれば、こんなことにはならなかったはずだ。

結局、そのツケを、今回招集されたメンバーが背負わされた印象だ。ハードな日程で、準備期間はほとんどなし。チームの基本戦術を理解する選手は少なく、リーダーシップを発揮できるベテランもいない。いわば、完全な“寄せ集め”だ。そんな難しい状況で、「アピールしろ」といわれても厳しいものがある。

例えば、今大会で日本のメディアがしきりにフォーカスしていた柿谷(C大阪)。初戦の中国戦(3−3の引き分け)で、彼は1得点1アシストという結果を出したけど、あの試合、彼の実力ならもっと活躍できたはずだ。僕から見れば、普段Jリーグで披露しているプレーの6割しか出せていなかった。それほど簡単なミスが目立った。おそらく本人も難しさを感じていただろう。


以前から指摘しているけど、新戦力を発掘したいなら、やはりメンバーを総入れ替えするのではなく、今までの主力に交ぜながら試すべきだ。

さらに今回、選手たちは周囲から「ブラジルW杯へ向けた、最後の生き残りのチャンス」と大きなプレッシャーをかけられていた。それも気の毒だったね。もう少し余裕を持てる状況でプレーさせたかったし、そもそも「これが最後のチャンス」という意味がわからない。チャンスは今後も与えられるべきだ。

次の代表戦は8月の国内での親善試合(ウルグアイ戦)、さらに9月の親善試合(グアテマラ戦、ガーナ戦)を挟んで、10月には欧州遠征(セルビア戦、ベラルーシ戦)もある。東アジア杯で結果を出した選手はもちろん、その時点で活躍している選手を若手、ベテラン関係なく招集し、今までの主力に交ぜながら試してほしい。

ただ、正直に言えば、今までのザッケローニ監督のやり方を見る限り、そうした選手選考を期待するのは無理だと思っている。彼はきっと「新しい選手は十分試したし、あとは今までのメンバーでW杯本番までの強化試合をこなしていくだけだ」と考えているんじゃないかな。

それがいやなら、残された手段はもう監督交代しかない。逆に言えば、コンフェデ杯で惨敗した“不動のメンバー”のままブラジルW杯に行くことを選ぶなら、ザッケローニ監督でいいということ。

どちらを選ぶかだね。

(構成/渡辺達也)