ザックジャパン。対ペルー戦の採点をしたいのですが、その前に一言。テレビのスポーツニュースを聞いていて、違和感を覚えたことに、まず突っ込んでみたい。

アナウンサーはこう伝えた。
「世界ランク14位の日本は、新潟で世界ランク54位の格下ペルーと対戦。0−0で引き分けました」

もしもし、と訊ねたくなるのは、ペルーを格下と言い切る姿勢についてである。こうした傲慢な態度こそが日本サッカー界に漂う諸悪の根源だと僕は思う。

概して日本には、相手をリスペクトする精神が欠けている。「たいしたことない相手」と思っているところに、間違いの元は潜んでいる。

だから、考えようとしなくなる。考えようとする動機そのものが不足しているのだ。小が大を倒す気質は育まれにくい。綿密な作戦を練ることなく、暢気な姿勢で試合に臨んでしまう。これでは、番狂わせは起こしにくい。

日本人の監督が、日本代表の監督に相応しくないと思う理由だ。世界のサッカー界の中での自らのポジション、立ち位置について、正確に理解している日本人はどれほどいるか。指導者だけが例外だとは思えない。例のアナウンサーもしかり。氷山の一角に過ぎないと僕は思う。外国人の方が遙かに客観的な目を持っている。ザッケローニもその一人。彼には、ウディネーゼという地方クラブをセリエAの上位に導いた経験がある。ミランやインテル、ユベントスを指揮した経験をも持ち合わせているが、何より光るのはセリエBから昇格したチームを翌シーズン、リーグ戦で5位まで躍進させた実績だ。

世界的に見れば、日本はまさにBから昇格してきたチーム。日本がワールドカップでベスト8を狙おうとする姿勢は、ウディネーゼがセリエAで上位を狙おうとする姿と一致する。

日本が携えておくべきは弱者のメンタリティ。ペルーを「格下」と、平気で斬って落とす強者のメンタリティではない。番狂わせを起こされる側ではなく起こす側に立つことだ。
日本が「格下ペルー」に、大苦戦した理由は、日本の布陣変更だけが原因ではない。実際ペルーは、格上に見えるほど良いプレイをした。サッカー選手らしい身のこなし、喜び溢れるプレイぶり、攻撃的な姿勢等々で日本を圧倒。アウェー戦であり、日本より遙かにメンバー落ちの状況であるにもかかわらずだ。

本当にペルーは格下なのか。日本が14位でペルーが54位という世界ランクは、どこまでアテになるのか。素朴な疑問を抱いた人、違和感に襲われながらテレビ画面に見入った人は多いはずだ。スポーツニュースでアナウンサーが口にした「格下ペルー」にも、大いなる疑問を抱いて欲しいものである。でないと、ワールドカップでこれ以上の好成績を臨むことは難しいと僕は見る。ザッケローニの3−4−3を評価する以前の問題だと僕は思う。弱者になれない悲しさ。チャレンジャーになれない哀れさ。プライドの高さが、日本サッカーの進歩の足かせになっていることは、もはや疑いようにない事実なのだ。

GK川島7 チームの劣勢が逆に彼の存在感を高めていた。

DF今野6 日本が3バックならぬ5バック(厳密に言えば4.5バック)になった理由はいろいろあるが、3バックを維持しようとすれば、今野がペルーのCFファルファンと、1対1になることに最大の原因があった。3トップの相手に対し3バックで臨む場合は、よほどの覚悟と拘りが不可欠になる。3−4−3は、相手が2トップならバッチリはまるが、3トップの場合ははまりにくい。その象徴が今野とファルファンの関係になる。

DF栗原5.5 3−4−3の問題点その2。栗原と伊野波がコミュニケーションを図りにくいことだ。両者とも今野のことが心配になる。