1995年にJリーグ名古屋を率いたことでも知られる、イングランド・プレミアリーグ、アーセナルのアーセン・ベンゲル監督。チーム管理や選手育成に定評があり、名古屋時代にはたった1年で天皇杯のタイトルをもたらした。アーセナルでは監督ながら運営面でも大きな権力を与えられ、10年以上にわたってその手腕を遺憾なく発揮している。それだけに獲得を熱望するクラブは多いが、その1つであるスペインのレアル・マドリードが、同監督に5年総額4000万ポンド(約59億円)の破格オファーを提示したという。

レアル・マドリードは今年1月にラモン・カルデロン会長が辞任し、7月に新会長選挙を控えている。次期会長には、2000〜06年に会長を務めていたフロレンティーノ・ペレス氏が就任するとの見方が有力だ。ペレス氏はジネディーヌ・ジダン氏(元フランス代表)やデビッド・ベッカム選手(イングランド代表、ミラン)らスター選手を獲得して「銀河系軍団」を作り上げた人物。今回の会長選に向け、クリスティアーノ・ロナウド選手(ポルトガル代表、マンチェスター・ユナイテッド)やカカ選手(ブラジル代表、ミラン)の獲得を公約として掲げ、「新銀河系軍団」創設を目指すとしている。

欧州チャンピオンズリーグで5年連続16強止まりのレアル・マドリードは、国内リーグ戦でも5月2日に行われたバルセロナ戦で2-6という記録的な大敗を喫し、3連覇は絶望的。守備的な布陣もファンの不評に拍車をかけている。チーム改革と新たな「黄金時代」を望む声は少なくない。

そんな中で報じられた知将へのオファー。ベンゲル監督は今年でアーセナルとの3年契約が切れる。現在の推定年俸は400万ポンド(約6億円)で、レアル・マドリードの提示額はその倍となる計算だ。英紙ニュース・オブ・ザ・ワールドによると、ペレス氏は金銭だけでなく選手獲得の権限も約束したという。

ところが、ベンゲル監督はこれを固辞。それどころか、アーセナルと3年以上の新契約を結び、チーム強化を目指す意向を示しているのだとか。同監督は近年プレミアリーグ優勝から遠ざかっているチーム状態を見直すために選手入れ替えの必要性を認識しており、同紙はエースストライカーのエマニュエル・アデバヨール選手(トーゴ代表)をミランに売却することから始めると伝えている。

欧州チャンピオンズリーグで4強に残っているアーセナルは、5月5日にマンチェスター・ユナイテッドとの準決勝第2戦が控えている。4月29日の第1戦ではアウェーながら1-0で敗れているだけに、第2戦は正念場。ベンゲル監督残留のニュースは、大事な試合を前に選手たちに安心感を与えたことだろう。