【プレイバック’96】「O-157集団感染騒動」遅すぎる“お役所対応”を菅直人厚生大臣に直撃!

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10年前、20年前、30年前に『FRIDAY』は何を報じていたのか。当時話題になったトピックをいまふたたびふり返る【プレイバック・フライデー】。今回は30年前の1996年8月2日号『前代未聞の猛威 O-157は伝染病!? 菅直人厚相を緊急直撃取材!』を取り上げる。

1996年は病原性大腸菌O-157が猛威をふるい、日本を震撼させた年だった。5月末に岡山県邑久町で小学生を中心に416名が発症し、2名が死亡する集団食中毒が発生。6月にも岐阜や広島など各地で同じ病原菌による集団食中毒が立て続けに起きる。そして7月12日に端を発した大阪府堺市の集団食中毒は発症者9528人、死者4人を出す未曾有の規模のものとなったのだ(《》内の記述は過去記事より引用、肩書は当時のもの)。

検査用の給食が保存されていなかった

『FRIDAY』8月2日号(7月19日発売)の時点では堺市の患者は4000人超。全国の被害は6000人を超えており、今後もその数は確実に増えるとみられていた。被害が止まらない理由の1つとして指摘されていたのが行政の対応の遅さ。これまでの経緯から、O-157の感染源が学校給食にあることは疑いがなかったが、原因の究明はいっこうにされる気配がなかったのだ。

《たとえば7月12日から15日にかけて大阪・堺市の学校児童たちに大量発生した食中毒事件でも、疑いを持たれた学校給食は、これだけ騒がれているにもかかわらず、わずか3日分しか保存されていなかった。O-157の潜伏期間は4日から9日で、3日前の給食だけから感染ルートを探るのは不可能に近い。これでは怠慢のそしりを受けて当然だろう》

また、専門家からは「O-157は赤痢菌と同様に少ない菌で感染しやすく、人から人にうつるので感染症の側面もある」という指摘もあった。実際に1993年にO-157の被害が多発したアメリカでは、日本でいうところの「法定伝染病」に指定していた。しかし、厚生省の対応は遅々としすぎていた。記事では次のように書いている。

《この問題について厚生省に質してみると、

「伝染病予防部会の小委員会でO-157を伝染病予防法の中でどういう扱いにするのか検討中です。また、この法律自体、時代遅れになっているので全面的な見直しを進めています」

との答えだった。が、その“検討内容”が見えてくるのが「おそらく秋ぐらいになる」では、あまりに遅すぎるのではあるまいか?》

『FRIDAY』は菅直人厚生大臣(現・厚労大臣)にも伝染病への指定について直撃した。しかし、こんな答えが。

《「伝染病に指定する必要があれば指定するが、法定伝染病の一番のポイントは隔離するかしないかでしょう。すると、いまの段階で隔離がすぐ必要だとは思えない。やはり、いま一番大事なのは原因の究明ですよ」》

だが、取材では「感染ルートが人間の可能性もある」という専門家の声もあった。症状が出ない“無症候のキャリア”の存在が被害を拡大していることもありうるというのだ。O-157には重篤な後遺症が残る恐れもあり、“お役所仕事”ではない迅速な対応が求められていた──。

“カイワレ騒動”が勃発

1996年8月6日、厚生省はO-157など腸管出血性大腸菌による感染症を指定伝染病に指定した。2次感染を防ぐには、食中毒に適用される食品衛生法では対応しきれないという判断だ。これにより、市町村や保健所への届け出の義務付けや、感染源の恐れのある施設への立ち入り検査などができるようになった。ただし、人権やプライバシーに配慮して、患者の隔離は行わないという決定だった。

翌7日には中間報告も発表された。堺市の給食の調査では結局、感染源の特定には至らなかった。しかし報告書の次のような一文が、大きな波紋を呼ぶこととなる。

〈特定の生産施設から7月7日、8日及び9日に出荷された貝割れ大根が最も可能性が高いと考えられる〉

同報告書では〈特定の生産施設から特定の日に出荷された貝割れ大根が原因食材として最も可能性が高いとしたものであり〉、それ以外の日に出荷されたものや、他の施設のものについては〈安全性に問題があると指摘したものではない〉と書かれていた。だが、〈最も可能性が高い〉という部分だけが切り取られて全国の店でカイワレ大根が販売中止になる風評被害が発生。生産業者が倒産・廃業したり、自殺者も出る騒動に発展した。本当の感染源は現在でも特定されていない。

カイワレ生産業者からの猛抗議を受けて政府は対応に追われることに。8月15日には、菅厚生大臣が記者たちの前でカイワレ大根を食べるパフォーマンスまで行った。このとき菅厚生大臣はカイワレ大根にドレッシングをかけて3パック食べたという。

1996年のO-157騒動は学校給食の衛生管理基準を見直す大きなきっかけとなった。安全な食品を作るための国際的な衛生管理の手法であるHACCPもその後普及が進み、近年ではO-157による大規模な食中毒はあまり起きていない。だが、’25年9月には島根県で102名に症状が出た例が報告されている。原因は加熱が不十分なハンバーグが原因だとみられている。