半導体の製造工程において、回路を描き、削り、積み重ねるといった各工程が注目されやすい。だが、その陰でもう一つの重要な問いが製造現場を支配している。「正しく作れているか」を誰がどのように確かめるのか、という問いだ。
 
実業家のマイキー佐野氏が着目したのが、プロセス制御の領域で世界トップに君臨する検査・計測装置メーカーだ。KLAと呼ばれるこの企業は、製造工程の精度を可視化し、不良品を工程の早い段階で排除する役割を担っている。半導体の微細化が進むほど、1枚のウェハから切り出せるチップの数は限られてくる。AI向けの高性能半導体ともなれば、わずか数枚しか取れないことも珍しくない。1つの欠陥が丸ごと廃棄につながるリスクが高まる中で、検査工程の重要性は静かに、しかし確実に膨らんでいる。
 
さらに積層型メモリーの普及が、この構図に追い打ちをかける。何層にも積み上げたチップのうち1層でも欠陥があれば、積み重ねた全体が無駄になる。だからこそ、積む前の検査と積んだ後の動作確認という二段階で確かめる必要が生じ、1台の製造装置に対して複数の検査装置が必要になる仕組みになっている。
 
同社の強みは技術と実績だけではない。世界中の先端工場に長年にわたって装置を導入し続けてきた結果、膨大な工場データを蓄積している。どのような不良がどのような原因で起きるかを学習し続けたこのデータは、他社には容易に再現できない資産だ。他社の装置に切り替えようとすれば、それまで積み上げた工場側のデータも失われかねない。この非対称性が、同社の顧客をつなぎとめる見えない鎖になっている。さらに、装置販売に留まらないサービス・サポート事業が収益の柱として機能しており、財務的な安定感も際立っている。
 
一方で、佐野氏はライバル勢の動きも詳しく取り上げている。製造装置に検査機能を内蔵させる戦略、積層工程で独自の地位を築く企業、露光装置と測定を一体化させようとする動き……。それぞれが異なる角度からKLAの縄張りへと迫っており、業界全体の競争地図が急速に塗り替えられつつある。検査の王者がこの変化をどう乗り越えるか、その全容は佐野氏の解説の中に詳しく描かれている。

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現在はアカデミズム関係者・経営者・投資家・学生が参加するビジネススクールも運営