V8搭載の小型軽量スポーツカー ロータス『エスプリ』が新解釈で蘇る! 走りを洗練させたレストモッド、約9000万円から
1970年代の名車を現代的に洗練
英国を拠点とする新興企業アンコール(Encor)が手掛けたロータス・エスプリのレストモッド『シリーズ1』は、最高出力400psの3.5L V8エンジンを搭載する。今回、その走行映像が初めて公開された。
【画像】1970年代の英国製スポーツカー、ロータス・エスプリが現代に蘇る【アンコール・シリーズ1を詳しく見る】 全18枚
このレストモッドモデルは、1970年代のエスプリS1へのオマージュとして開発されたものだ。新しいカーボンファイバー製ボディや最新技術を採用し、従来の2.0L直列4気筒ガソリンエンジンは、エスプリS4のツインターボ・フラットプレーンV8エンジンに置き換えられている。

アンコール・シリーズ1 アンコール
元ロータスの従業員で構成されたアンコール社は、シリーズ1をわずか50台のみを生産する予定だ。価格は約43万ポンド(約9000万円)からとなる。
チーフエンジニアのウィル・アイブス氏は、1970年代に人気を博したエスプリS1のアナログな運転体験を「洗練」させ、現代技術と組み合わせて使い勝手の良いクルマにするのが目標だと語った。
アイブス氏は「オリジナルを尊重しつつも、それに縛られることは避けたかった」とし、「このクルマを愛している一方で、改良の余地は大いにあった」と認めている。
エスプリS4の3.5L V8エンジンを搭載
アンコール社のシリーズ1は、ロータス・エスプリS1を再解釈したものだが、実際に車両のベースとなっているのは1994年の最終モデルであるS4だ。その理由は、より近代的で強固な構造のシャシーを採用しているためだ。
それでも、ロータス・エミーラのエクステリアデザインに携わったチーフデザイナー、ダン・デュラント氏は、可能な限りオリジナルの精神を忠実に守る「責任」があると述べた。

アンコール・シリーズ1 アンコール
アンコール社とロータスの間に協業関係はないが、共同創業者兼商業責任者のサイモン・レーン氏は「ロータスがこのシリーズ1を、自社製品を補完するものとして捉えてくれることを願います」と述べた。
エスプリS1との最大の違いはパワートレインだ。アンコール社によれば、オリジナルの907型2.0L直列4気筒ガソリンエンジンは、現代に求められる特性やエモーションに欠けているという。そこで、エスプリS4に搭載された918型3.5Lツインターボ・フラットプレーンV8エンジンを採用し、「本来あるべき」パワーを目指した。
ピストン、ターボチャージャー、インジェクターは新設計で、最高出力は50ps向上して400ps/6200rpm、最大トルクは8kg-m向上して48.4kg-m/5000rpmとなった。車両重量はわずか1200kgであり、1トンあたり333psのパワーウェイトレシオを実現している。
エンジンには最新の電子スロットルボディコントロールとECUを組み合わせている。アイブス氏によると、「さらに正確な制御と、ドライバビリティの大幅な向上」を実現したという。
ネックだったトランスミッションを再設計
5速マニュアル・トランスミッションも再設計された。アイブス氏は「このスペースに他のユニットを組み込むことはほぼ不可能で、オリジナル車における限界と考えられてきました」と述べており、「古いケースから新しいトランスミッションを効果的に作り直す」必要があった。
結果、トランスミッションの内部部品のうち「ごく一部」のみを残し、実質的には新しいユニットとなった。さらにドライブトレインの強度を高めるため、リミテッドスリップディファレンシャルを追加した。

アンコール・シリーズ1 アンコール
こうした改良により、アンコール・シリーズ1は0-100km/h加速タイム4.0秒と、オリジナル車のほぼ半分のタイムを達成。最高速度は約280km/hに達する。
サスペンションシステム、アンチロールバー、電子制御システムも完全に新規設計となり、現代的な車体構造を獲得した。特に重要な点は、フライオフ式のハンドブレーキから電子式への切り替えだ。これにより省スペース化し、バルクヘッドの強化、機械部品削減による軽量化、リアブレーキの大型化などが可能になった。
アイブス氏は次のように語っている。
「優れた部分はすべて残しています。(オリジナル車は)率直に言って素晴らしいクルマです。パワーステアリングの性能は、当時も今も最高峰と評価されてきました。アンコールはそれらをすべて継承しつつ、その上に新たな要素を構築しているのです」
「わずかに軽量化し、わずかにパワーアップしています。これが(S4生産終了後)20年にわたる技術発展の成果です。現代のクルマのような硬いサスペンションに変える意味はありません。柔軟性を保ちつつ、かつてのアナログな運転感覚を再現したかった」
ヘッドライトはLEDの「リトラ」に
見た目はオリジナルのエスプリS1とよく似ている(サイズも同等だ)が、ボディは完全新設計である。ドナー車両のエスプリS4のグラスファイバー製チューブを撤去し、S1の仕様を厳密に再現したカーボンファイバー製ボディを装着している。
アイブス氏によると、新しいボディシェルを採用した理由は、強度と軽さを両立するためだという。「既存のボディシェルを完全に取り外し、後の活用先を確保した上で、バックボーンシャシーに装着する完全新規のボディシェルを製作しました。シェルはオリジナル比で約半分の重量であり、もちろん驚異的な剛性を備えています」

アンコール・シリーズ1 アンコール
外観はオリジナルを「洗練」させたものだが、現代的なタッチと独自のデザイン要素を取り入れている。例えば、レトロフューチャー的なデイタイムランニングライトが大きな特徴だ。リトラクタブル式ヘッドライトにはLEDを採用し、点灯時の開き角度を低く抑え、空力性能の向上を図っている。8灯式のリアライトは、8気筒車であることを示している。
インテリアは新旧の融合だ。10.1インチの縦型インフォテインメント・スクリーンと、10.25インチのドライバーディスプレイを搭載。それに木製シフトノブ、1970年代風のバックミラー、オリジナルのウインカーレバーを組み合わせている。衝突安全性にも配慮し、一体型のカーボンファイバー製ロールケージを装着した。
皆が愛し、求めているプロポーション
チーフデザイナーのデュラント氏は、「どのような製品にするべきかをチームで議論しました。可能な限りピュアな状態から始め、そこからどこまで洗練できるかを試したかった。時代は大きく進歩し、技術も大きく進歩しました。かつてのロータスの開発状況とはまったく異なります」と語った。
デュラント氏によると、法規制の縛りが少ない1970年代に設計されたクルマを「洗練」させることは「素晴らしいこと」だという。

取材に応じるアンコール社のチーフデザイナー、ダン・デュラント氏(左)
「法規制は、物事を特定の方向へ導いていくものです。結果として、オリジナルの純粋さが薄められたものになってしまいます」
ボディ下部に絞り込むような形状やノーズの高さなどは、今日では規制されてしまうような要素だが、それらはスポーツカーに「我々が皆愛し、求めているプロポーション」だとデュラント氏は語る。
「巨大な技術的制約に縛られ、思い通りのラインをすべて描くことが妨げられている状況では、これを実現するのは非常に難しい。だからこそ、一歩引いて、これほど低く、極端なものを開発できるのは、実に嬉しいことです」
