記事のポイント
フォーティセブンは「Father of All Dad Hats」キャンペーンを通じ、グローバル市場でブランド再構築を進めている。
スポーツだけでなくライフスタイルやカルチャー領域にも進出し、ファッションブランドとしての存在感を強化している。
「クラフトマンシップ」「品質」「レガシー」を軸に、急速に競争が激化するヘッドウェア市場で差別化を図っている。


米国ボストン発のキャップブランド「フォーティセブン(’47)」が、ファッションの最前線に再び姿を現している。ニューエラキャップ(New Era Cap)による買収から1年、同社は北米を中心に、欧州やアジアでもブランドメッセージと認知拡大を一段と強化している。

2024年7月には、ワークウェアブランドのカーハート(Carhartt)と組み、フィラデルフィア・フィリーズの選手ブライス・ハーパーを起用したマーケティングキャンペーンを展開。

10月には、自社の主力モデルのひとつである「クリーンナップ(Clean Up)」を「The Father of All Dad Hats(すべてのダッドハットの父)」と称し、グローバル規模のキャンペーンを始動した。

この「クリーンナップ」はリラックスした形状が特徴で、1990年代に市場に出た、より構造的なキャップの代替として登場したモデルだ。「Father of All Dad Hats」キャンペーンは2026年末まで続く予定で、多くの国やスポーツコミュニティを横断して展開される。また、2026年のスーパーボウル(Super Bowl)に向けたマーケティング施策も準備中である。

スポーツだけでなく、ライフスタイルとカルチャーの領域へ



フォーティセブンがめざすのは、単なるスポーツブランドではない。グローバルなライフスタイルとカルチャーの一部としての存在感を確立することだ。

実際、2025年初めにはローマ教皇レオ氏がバチカンでフォーティセブンのホワイトソックス(White Sox)キャップを着用して話題を呼んだ。

キス(Kith)とのコラボキャップは、二次流通プラットフォームのストックエックス(StockX)で定価の400%超のプレミア価格で取引されている。「ザ・ベア(The Bear)」主演の俳優ジェレミー・アレン・ホワイトも、フォーティセブンのメッツ(Mets)キャップを着用している姿が目撃されている。

フォーティセブンのマーケティング担当バイスプレジデントのパトリック・キャシディ氏は「フォーティセブンには世界中に熱心な支持者がいる。特にファッション領域で新規顧客の獲得が急速に進んでいる」とModern Retailに語る。

2026年に向け、同社はデジタルビルボードや長尺のYouTube動画などを通じて、ブランドの歴史とスタイルをより強調する方針である。

1947年の屋台からはじまった80年ブランド



フォーティセブンは、1947年にボストンのフェンウェイ・パーク(Fenway Park)前で設立者がスーベニア(記念品)を販売したことからはじまった。現在ではNFL、MLB、NBA、WNBA、NHL、MLS、NCAA、NASCARといった主要スポーツリーグの公式ライセンス商品を取り扱うほか、ジャケットやTシャツなどのアパレルも展開している。

同社の商品は公式サイトに加え、リッズ(Lids)、メイシーズ(Macy’s)、ディックス・スポーティンググッズ(Dick’s Sporting Goods)などの小売パートナーを通じても販売されている。

2024年8月、フォーティセブンはニューエラキャップによって買収された。買収額は非公表だが、当時ニューエラキャップの年間売上高は10億ドル(約1500億円)を超えていた。プレスリリースによると、統合後の新会社は年間約20億ドル(約3000億円)の売上を見込んでいるという。

フォーティセブンは現在、英国、日本、メキシコなどを含む複数市場への展開を強化しており、「北米と同じように成長している」とキャシディ氏は語る。これらのグローバル市場は、「Father of All Dad Hats」キャンペーンの重要なターゲットにもなっている。

キャンペーンの第1弾では、ロサンゼルス・ドジャース(Dodgers)とニューヨーク・ヤンキース(Yankees)の2チームをフィーチャーした。両チームはその国際的な人気と知名度を考慮して選ばれたという。

キャシディ氏は「これらのチームとスタイルは、スポーツという枠を超えて『クラフト』と『スタイル』を象徴している。世界のどこにいても、同じ帽子をかぶっている人を見ればつながりを感じる」と語る。

欧州市場に残された空白地帯



スポーツとファッションを専門に取材するジャーナリストのダニエル=ヤウ・ミラー氏(Substack「SportsVerse」運営者)は、「フォーティセブンには海外市場で大きな伸びしろがある」と指摘する。

「ヘッドウェア市場は北米スポーツを中心に発展してきたが、欧州スポーツではまだ十分に浸透していない。欧州ではユニフォーム(ジャージ)文化が主流だからだ。だが、チームや選手、ファンと連携し、同じ購買習慣を根付かせる余地が十分にある」と語る。

ニューエラキャップはすでに欧州のサッカークラブや自動車レースチームと契約を結んでおり、フォーティセブンにとっても拡大のチャンスは大きい。

フォーティセブンが今後のスポーツおよびライフスタイルキャンペーンで重視するのは、「ubiquity(どこにでもある存在)」としての自社の立ち位置である。

次の春に予定されているキャンペーン第2弾では、「世界中の人々がなぜこのブランドと製品(クリーンナップ)を選ぶのか」に焦点を当てるという。キャシディ氏によると、インスタグラムや屋外広告、長尺のストーリーテリングを通じて展開する予定だ。

同社が「クリーンナップ」に注目する理由は、このモデルが世界で累計1億5000万個以上販売されているためである。「これまでクリーンナップについて大々的に語ったことはなかったが、最近は競合も増えている」とキャシディ氏は語る。

「いまやヘッドウェアやアパレルを製造するのは簡単になった。既存ブランドでも、あるいはインスタグラムで一晩でショップを立ち上げる個人でも同じことができる時代だ」。

実際、ヘッドウェア市場はここ数年で急速に飽和しつつある。ナイキ(Nike)、ファナティクス(Fanatics)、H&M、フェイバリット・ドーター(Favorite Daughter)、ローイング・ブレザーズ(Rowing Blazers)など、多くのブランドがシェアを奪い合っている。

特にベースボールキャップは、いまや「手軽に取り入れられるファッションシンボル」として定着した。価格は手頃なものも多いが、なかには高級化の動きも見られる。2023年のニューヨーク・ファッションウィーク(New York Fashion Week)では、キャップが「イットアイテム」として注目され、多くのインフルエンサーの頭上を飾った。プラダ(Prada)も1050ドル(約15万7500円)のベースボールキャップを販売している。

ミラー氏は「長いあいだ、ヘッドウェアはファッション企業から軽視されてきた」と語るが、いまでは「多様なかたちで高級化・スタイライズされるカテゴリーの代表例だ」と指摘する。

スポーツカルチャーの高まりとともに



ベースボールキャップ人気の背景には、スポーツをめぐる文化的な変化もある。WNBA、NFL、MLBはいずれも視聴率と観客数を伸ばしている。広告業界誌『AdWeek』によれば、次回スーパーボウルの30秒広告枠は過去最高の800万ドル(約12億円)に達しているという。

ミラー氏は「いまや大手企業はスポーツマーチャンダイズが『投資・進化できるカテゴリー』であり、品質面でも向上が見込めることに気づきはじめている」と分析する。

キャシディ氏によると、フォーティセブンが他社と一線を画すのは「クラフトマンシップ」「品質」「レガシー」である。新年に向け、同社は「クリーンナップ」をはじめとする主力モデルの認知を高めるために、より一貫したマーケティング戦略に注力する方針だ。

「我々はブランドの物語を明確に伝えたい。つまり『この製品に込められたすべてを理解すれば、ほかの『ダッドキャップ』選ぶことは模倣品を選ぶようなものだ』ということを伝えたいのだ」とキャシディ氏は締めくくる。

[原文:With a new campaign, ’47 is planting its flag as ‘The Father of All Dad Hats’

Julia Waldow(翻訳・編集:杉本結美)