「暴動起きるんじゃないか」日産9000人リストラの地獄…利益94%減でも社長は報酬3億円ゲットの超絶不条理

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 業績が悪化する日産自動車が再び窮地に立たされている。中国や米国での苦境が深刻で、全世界で1割弱にあたる9000人の人員削減など大規模なリストラ策を発表したのだ。わずか8カ月前に策定した中期経営計画を撤回し、「世界の日産」は正念場を迎える。SNSでも大きな反応があった。「日産のダメダメ決算&無配が話題だね。経営陣が総退陣しないとなレベルだけど、代表が報酬50%カットの3億円ってこれ暴動起きるんじゃないのかな…」といった経営陣に対する批判があがった。経済アナリストの佐藤健太氏は「日産は経営戦略を見誤り、世界の競合他社に勝てるだけの魅力を失っている。今後は自動車業界に限らず『勝ち組』『負け組』の格差が広がり、大リストラ時代に突入する可能性がある」と警鐘を鳴らす。

全体の7%にあたる9000人規模の人員削減

「厳しい状況を迎えていることは、痛恨の極みです。世界13万人以上の従業員とその家族の生活を預かる身として、責任を痛感しています」。11月7日にオンラインで記者会見した日産の内田誠社長は、世界の生産能力を2割縮小するとともに全体の7%にあたる9000人規模の人員削減に踏み切ると発表した。地域や削減時期の明言は避けたものの、工場閉鎖は日本も含めて検討されているとの見方が広がる。

 2024年9月中間連結決算の純利益は前年同期比94%減の192億円で、売上高は前年同期から1.3%減となる5兆9842億円だったものの、営業利益は前年同期から90.2%減の329億円に落ち込む。2025年3月期予想の営業利益は5000億円から1500億円に引き下げ、業績見通しは今期2度目の下方修正となった。

 日産は米国や中国という主戦場で販売不振が続いてきた。北米市場で需要が高まるハイブリッド車(HEV)やプラグインハイブリッド車の展開ができず、収益を圧迫。中国では激化する電気自動車(EV)の低価格化競争で苦戦し、想定以上に販売台数が落ち込む。販売奨励金の負担も重く、工場の稼働率も低く状況だ。日産は「EV」に注力してきたものの、中国勢や米テスラとの差別化を図ることができず、世界の消費者ニーズに対応した魅力ある「売れるクルマ」がない状態が続いているのだ。

 要するに、日産は経営戦略を完全に見誤ったと言える。これは一時的に業績が低迷したわけではなく、危機的な状況にあると見た方が良いだろう。内田社長は11月から報酬の5割を返上するというが、報酬は約6億6000万円に上っており、それでも半分の3億円超はゲットしていくつもりのようだ。

HEVやPHEVのラインナップを持っていない

 内田社長は中国市場に関し「現地メーカーの新エネルギー車が急速に増加している」とした上で、「現地メーカーは中国からの輸出も大幅に増やしており、東南アジアや中南米など日産がビジネスを展開している他の市場にも影響が出ている」と説明した。米国市場での販売不振はHEVやPHEVのラインナップを持っていないことが背景にあるとしている。現時点での敗因分析としてはズバリなのかもしれないが、「売れるラインナップ」を持たない中で今後どういう戦略を描けるというのだろうか。競争が激化する世界において先行きの難しさは否めない。

 日産のリストラ発表は初めてのことではない。2019年4~6月の連結営業利益が前年同期比99%減の16億円と落ち込んだ際には、同7月に1万2500人の人員削減を行うことを明らかにした。今年3月には2026年度までの中期経営計画を発表し、「日産は価値と力をさらに向上させる」(内田社長)と販売台数の100万台増などをうたったばかりだ。しかし、その計画は約8カ月で早くも実質的に撤回を余儀なくされることになった。内田社長は「再び日産を成長軌道に戻す道筋をつけることが最大の役割」というものの、市場環境の変化に対応できず商品力が低下したことはあまりに深刻だ。

トランプの出方によっては更なるダメージも

 先の米大統領選で勝利した共和党候補のドナルド・トランプ前大統領は「アメリカ・ファースト」(米国第1主義)をうたい、中国からの輸入品に高関税を課す意向を重ねて示している。それ以外の外国製品にも一律10~20%の関税をかける計画で、厳格な保護政策強化があれば日本の自動車メーカーも影響を避けられないだろう。内田社長は状況を注視していく考えを示しているが、2025年1月にスタートする第2次トランプ政権の出方によっては、さらなる大打撃が日産を襲う可能性が高い。

 株価がバブル期を超える水準に高まる中で悲しいのは、大企業の人員削減が目立っていることだ。住友化学は2025年3月末までに連結従業員数の約1割に当たる約4000人の人員削減を行うと発表。東芝は5月に中期経営計画を公表し、最大4000人規模の人員削減といったリストラ策を盛り込んだ。精密機器大手「リコー」も来年3月までに約2000人を削減すると発表している。日本人なら誰もが知る大企業においても人員削減は珍しくなくなってきている。

物価上昇による倒産は今後も増加する見通し

 業績の好不調に関わらない点も最近の特徴だ。東京商工リサーチが10月7日発表した2024年1~9月期の上場企業「早期・希望退職募集」状況によれば、判明した上場企業は46社(前年同期30社)に上り、前年同期の1.5倍に達している。対象人員は8204人(同2066人)で前年同期の4倍近くに増加し、早期退職の募集が加速している状況がわかる。コロナ禍にあった2021年以来3年ぶりに年間1万人を超える可能性があるという。対象者の年齢が最も低かったのは30歳からで低年齢化も進む。

 東京商工リサーチが11月11日発表した10月の企業倒産件数(負債額1000万円以上)を見ると、人手不足から倒産する中小企業の姿も浮かび上がる。前年同月に比べ14.6%増の909件で、10月としては11年ぶりの900件台となった。円安や人件費・原材料費の高騰の影響も重く、1~10月の倒産件数の合計は8323件と高水準にある。物価上昇による倒産は今後も増加する見通しという。

 今年は約30年ぶりに高い賃上げが実現し、政府は消費と賃上げの好循環シナリオを描く。足元の物価上昇を上回る賃上げを重ねていけば消費が促進され、日本経済が良い方向に回っていくというわけだ。ただ、最低賃金の上昇は働き手にプラスとなるものの、企業サイドにとっては負担増となる。実施時期は決まっていないが、防衛費の大幅増に伴う法人税などの増税プランも経営戦略を考える上で気がかりだろう。

あなたは勝ち抜いていく自信があるだろうか

 超高齢社会が到来し、少子化・人口減少が同時に進む日本においては、企業が従来通りの雇用を維持していくのは難しいとの見方が広がる。高所得のベテラン従業員を抱える一方で、人手不足が深刻化していけば経営陣は適切な新陳代謝に頭を抱えるだろう。高い給与を与えてでも優秀な人材を確保しつつ、外部委託も活用しながら「勝者」となるべく生き残る道を模索していくはずだ。

 逆に言えば、働き手はリストラ対象にならないよう自らの能力を引き上げていくことが求められる時代となる。仮に人員削減の対象者になっても、別の道に進むことができる複数の選択肢を準備しておくことが重要だろう。企業も、働き手も勝ち組と負け組による格差が広がる社会に入るのだ。その時、あなたは勝ち抜いていく自信があるだろうか。