【松本人志裁判】伊東純也“代表復帰”を勝ち取った代理人弁護士が語る“致命的な失敗”提出されなかった“新証拠”も
11月8日、松本人志が文藝春秋と「週刊文春」編集長を相手に、5億5000万円の損害賠償などを求めた訴えを取り下げることが発表された。取り下げに関して、松本と文藝春秋側はそれぞれコメントを発表した。芸能事務所関係者はこう明かす。
「今回、双方から出されたコメントは、すべて当事者と弁護士が互いに文面に手を入れて完成したものです。つまり、文章の中にある単語ひとつひとつに込められた意味は重大で、かつ、率直な意思を表したもの。この文章を作り、お互いに合意するまで、3カ月もかかったと言います」
日本中の注目を集めたものの、あっけない最後を迎えた裁判だった。
「松本さんは、提訴取り下げしか手が残されていなかったのでしょう」
と語るのは、2024年1月、タレントの女性2人から準強制性交事件で刑事告訴され、後に不起訴処分を受けた事件で、サッカー日本代表・伊東純也の代理人を務めた加藤博太郎弁護士だ。“性加害疑惑”で加害者だと報じられた伊東をみごと不起訴にし、日本代表に復帰させた加藤弁護士は、今回の裁判の結末をどう見るのか。
「そもそも芸能人の場合、刑事告訴されたジャングルポケットの斎藤慎二さんのように、まだ事実が確定していない段階で謹慎に追い込まれてしまうことがほとんどです。その場合、長期間の謹慎は避けられません。
松本さんの場合、裁判の勝ち負けは置いておいて、『まずは否定する』というスタンスを維持して闘い続け、世間から身を隠し、ほとぼりが冷めるのを待つという方法を取ったのでしょう。長期間に及ぶ謹慎を経ずに、メディア復帰の道を残す戦略です」
当然、裁判の勝算もあった。
「今回、発表された文章には『松本が訴えている内容等に関し、強制性の有無を直接に示す物的証拠はないこと等を含めて確認いたしました』と書かれています。文字どおり、物的証拠がなく、性加害の証拠は、“女性の主張だけ”しかないことを強調しています。
ただ同裁判の争点のひとつは、記事の真実相当性です。つまり、文春側が取材過程で『性加害があった』と信じた理由について検討することになります。そこで女性が裁判で証言し、『性加害を受けた』と断言すると、ほぼ勝てる見込みがなくなります。女性が嘘をついており、文春側も嘘だとわかっていながら掲載したと証明するのは、かなり難しいでしょう」(加藤弁護士)
つまり、松本が勝つためには、女性に証言させないことが必要だった。
「提訴する段階で、松本さんサイドが女性は出廷しないだろうと考えていた可能性はあると思います。文春としても、被害を訴える人間を証人として出廷させるのは、取材源の秘匿の意味からも避けたいでしょうしね。ただ、予想に反して、女性は裁判で証言をすると宣言しました。『週刊文春』は、松本さんサイドが女性の出廷を妨害しようとしたと報じていますが、結果的にはそれにも失敗していますよね。ここがまさに致命的で、大幅に方針を変えざるを得なくなりました。
このまま、ずるずる裁判を続けたところで勝てる見込みは薄いし、裁判で女性が証言すれば、当時の細かな話がまたいろいろと出てきて、松本さんとしても困った事態になってしまいます」(加藤弁護士)
さらに、前出の芸能事務所関係者は、松本にとって不利な“新証拠”が提出される恐れがあったと語る。
「裁判が進む過程で、文春側は“新証拠”を出す予定だと聞いていました。というのも被害を訴える女性は、(松本に女性をアテンドしたとされるスピードワゴンの)小沢(一敬)さんに“お礼LINE”を送ったと報じられましたが、その時間と前後して、知人らに『危なかった』『やり過ごした』といったメッセージを送っていたそうなんです。単なる飲み会ではなかった、ということを示す強力な証拠になりうるものでしょう」
そこで、今回の提訴取り下げに至ったというわけだ。
「審理が進み、松本さんや女性が裁判所で尋問されるタイミングを迎えると、提訴の取り下げをするのが難しくなり、取り下げるのはいましかなかったと考えられます。
文春側は、提訴の取り下げに同意する条件として、被害を訴えた女性らへの謝罪を求めたと報じられています。松本さんはその点について、
《かつて女性らが参加する会合に出席しておりました。参加された女性の中で不快な思いをされたり、心を痛められた方々がいらっしゃったのであれば、率直にお詫び申し上げます》
と謝罪していますが、“傷ついた女性がいること”は、あくまで仮定になっていますよね。松本さんは、飲み会に参加した女性が、後に小沢一敬さんにお礼のLINEを送っていたと報道された後に『とうとう出たね』と自身のSNSに投稿しています。
いまも強制的な性行為はなく、当日のことは女性に楽しんでもらえたと考えており、“性加害”と報じられた事に最後まで反論したかったのだと思います。そうした主張の譲れない線として示したのが、この一文です。今後、刑事事件化する可能性もほとんどないので、あとは芸能界で復帰できるかどうか、メディアやスポンサーの判断次第でしょう」
はたして、世間は納得したのだろうか……。