国登録有形文化財の「旧足利銀行栃木支店」=2024年10月3日午後1時20分、栃木県栃木市、上嶋紀雄撮影

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 栃木県栃木市は、市所有の国登録有形文化財「旧足利銀行栃木支店」について、建物を賃貸していた市内の飲食業者が無断で別の業者に転貸していたと明らかにした。

 市は、契約違反だとして賃貸借契約を解除し、7月末に業者から明け渡しを受けたという。

 この建物は映画「ALWAYS 三丁目の夕日」のロケで使われ、飲食業者は当初、「ALWAYS」の名が入った洋食店を営業していた。

 市によると、建物は木造平屋建て。1934(昭和9)年に足利銀行栃木支店として建てられ、支店移転に伴い市が取得。73〜2004年には市教育委員会が事務所として使った。08年に国の有形文化財に登録された。

 市は9月26日の市議会議員研究会で一連の経緯を説明した。市によると、市は07年度に建物を活用する事業者を公募し、この飲食業者を選定。08年4月から賃貸借契約を結び、18年には契約を更新した。19年10月には別の店名になったが、飲食業者は市に「会社の1店舗」と説明したという。

 だが、22年に別の業者が店舗を営業していたことが分かった。借り主の飲食業者は、実際に営業していた業者から「厨房(ちゅうぼう)使用料」を受け取り、その額は市に払う月額賃料(5万円)より高かったことも判明した。借り主の業者は「業務委託している」と主張したが、市は転貸だと判断した。

 市は昨年2月末に契約を解除し、建物から退去する猶予期間として、今年3月末までの定期借家契約を結んだ。退去が7月までずれ込んだため、遅延違約金40万円を請求した。

 市は今月、この建物に入って営業する新たな業者を募集する。飲食店か地場産品などの物販店が対象。開店は来年7月ごろを予定している。(上嶋紀雄)