韓国人初のノーベル文学賞を受賞した小説家の韓江。写真は2016年の記者懇談会の姿。パク・ジョングン記者

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作家韓江(ハン・ガン)のノーベル文学賞受賞の知らせを聞いた時、私は帰り道の江辺北路にいた。長く続く車の赤いブレーキランプを眠たい目でにらんでいる時だった。好きなラジオが終わった後は聞きたいものがなく長いあくびをしたりもした。その時運転席のダッシュボードに置いておいた携帯電話が続けて鳴り始めた。「韓江」「ノーベル賞」「初めて」などの単語がメッセージのプレビューに表示されては消えた。短く消えた単語だけ見ても悲鳴が上がった。小説家韓江が韓国で初めてノーベル文学賞を取った。この状況を形容する単語が私にはなかった。えっ、あっ、うわぁ、のような感歎詞を順に吐き出して涙を流すだけだった。

いつかは韓国もノーベル文学賞を取る日がくるだろう、という気持ちで毎年ノーベル文学賞を待ったが、そのいつかが今年になるとは思わなかった。当然この瞬間最もうれしい人は作家本人かもしれないが、きょうだけはこの歴史的な喜びを国民みんなが分かち合い享受すれば良いだろう。私もきょうだけはノーベル文学賞受賞作家韓江の代表作『少年が来る』の編集者として満たされるようにこの瞬間を楽しみたい。自慢はしたがらない人だがこの作品だけは出版前から私の自慢で自負だったので喜んで祝杯を上げる気持ちになった。『少年が来る』は私にも非常に格別な作品だ。本立てから『少年が来る』の初版本を持ち出して韓江とともに本を作った時を思い出した。ブログに毎日「少年が来る」という題名の小説を上げた十年前の冬を。

◇改行と句読点の位置まで細かく…韓江、心を込めた切実な祈りのように

『少年が来る』は出版前の2013年11月から2014年1月まで、チャンビ文学ブログ「窓」に連載した作品だ。韓江はアップロードの数週間前にあらかじめ一定量の原稿を送り、余裕をもって校正を見て編集内容をやりとりし反映する時間までいっぱいあった。いつでも簡単に直せるオンライン連載だったが、どんな紙面になろうが作品の完成度を高めようとする作家の作業方式にかなり感銘を受けた。オンライン連載の内容をそのまま本にしても十分と感じさせるほど毎回の連載に作家の心が込められた。

改行位置や、何度も苦心して直した単語だけでなく、句読点の位置ひとつまで、どれひとつ

軽く決めたものはなかった。連載しながら韓江とほぼ毎日メールをやりとりし電話をした。連載する冬の間、出勤後に最初にするのはアップロードした小説をモニタリングして作家と朝のあいさつを交わすことだった。温かいコーヒーを手にしてモニターを眺めれば画面の向こう側にやせた冬の木が広がる坡州(パジュ)出版団地の尋鶴山(シムハクサン)の裾野が見えた。ある日には雪に覆われ、ある日には厳しい寒さで世界がみんな凍りついたようだった。光州(クァンジュ)の5月を描き出す韓江の心はあの窓の外と同じだろうとたびたび思ったりした。