しもやけ

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監修医師:
高藤 円香(医師)

防衛医科大学校卒業 / 現在は自衛隊阪神病院勤務 / 専門は皮膚科

しもやけの概要

しもやけは、寒冷な環境下で長時間にわたって皮膚が冷やされることによって発生する血行障害の一つです。医学用語では凍瘡といいますが、凍傷の軽い状態を指します。

気温が4~5度に冷え込み、日中の気温差が10度以上になると発症しやすい疾患です。発症時期は冬季を中心として、晩秋から初春に至るまでみられますが、近年の日本の発症率は昔に比べ減少傾向にあります。

しもやけは手足や耳、顔などの露出部位に発生しやすい症状です。この症状は、寒冷によって血管が収縮し、その後急激に温まることで血液が滞りやすくなり生じます。また、しもやけは、皮膚が赤く腫れたり、かゆみや痛みを伴ったりすることもあります。

しもやけは症状によって、以下の2つにタイプ分類が可能です。

樽柿型(T型)
<特徴>
・患部全体が柿の色のように腫れる
・子供がなりやすい

多系紅斑型(M型)
<特徴>
・小さな赤みや腫れが複数できる
・大人がなりやすい

どちらのタイプもかゆみがあり、「痛がゆい」「じんじんする」と表現されます。
ほかにも、T型とM型の中間のタイプがあるとされています。

しもやけの原因

しもやけの原因は、主に寒冷刺激による血行不良です。寒さや冷たさを頻繁に感じることで血管は収縮と拡張を繰り返し、体の末端にある血流が悪くなります。その結果、炎症を起こししもやけの症状が出現します。
また、寒冷刺激だけでなく湿度の高い環境でも、しもやけは発生します。湿った靴下や手袋を長時間着用することで皮膚が冷え、血流が悪くなることで起こり得るのです。

しもやけの原因は上記以外にも遺伝性、栄養状態なども大きく影響するとされていますが、明確なメカニズムは今のところ分かっていません。また、通常であれば1~3週間で治る場合がほとんどです。

しもやけの前兆や初期症状について

しもやけは、まず手足や耳、鼻などの末端部分に冷えを感じることが多いとされています。冷えが進行すると、皮膚が白っぽくなり、感覚が鈍くなりやすいです。この段階で温かい場所に移動し、適切に温めれば症状を防げます。
初期症状としては、皮膚が赤く腫れることが挙げられます。これは、寒冷刺激によって血流が滞り、毛細血管が拡張するためです。この状態が続くとかゆみや痛みが生じ、特に夜間に強くなることが多く、寝つきを妨げることもあるでしょう。
さらに症状が進行すると皮膚が紫色に変色し、血液の流れが悪化して、皮膚が硬くなってしまいます。この状態は組織が損傷していることを示していて、場合によっては水ぶくれができることもあります。破れてしまうと感染のリスクが高まるため、管理には十分注意しましょう。

しもやけの前兆や初期症状を早期に察知し、適切に対応することで、重症化を防ぎます。
受診する診療科は皮膚科が対象となりますが、子どもであれば小児科でも大丈夫です。

しもやけの検査・診断

しもやけの検査・診断は、主に患者さんの症状と経過を基に行われます。医師はまず、患者さんの生活環境や職業、既往歴などを詳しく聞き取り、寒冷刺激に対する曝露状況を把握します。具体的には、どのような状況でしもやけが発生したか、どの部位に症状が現れているかを確認します。

次に、視診と触診を実施します。視診では、皮膚の色や腫れ具合、水ぶくれの有無などを観察します。触診では、皮膚の硬さや温度、痛みの程度を確認します。これらの情報を総合的に判断することで、しもやけの診断が行われます。

場合によっては、ほかの疾患との鑑別診断が必要になることもあります。しもやけと良く似た症状を示すエリテマトーデスという病気は、若い女性に多く、皮膚症状のほかに様々な内臓の症状を伴う病気です。皮膚症状だけではしもやけとの区別が難しいとされており、専門医による詳細な診断と治療方針の決定が重要です。
また、しもやけを繰り返す場合や慢性的な症状が続く場合も、詳細な検査が必要なこともあります。

しもやけの検査・診断は、患者さんの症状や経過を詳しく確認し、必要に応じて追加の検査を行います。早期に適切な診断を受けることで、適切な治療を開始し、症状の改善を図れるでしょう。

しもやけの治療

しもやけの治療は、主に症状の緩和と再発防止を目的としています。初期段階での適切な対処が、症状の進行を防ぐために重要です。

患部を温める

まず、温めることが基本となります。冷えた部位を徐々に温めることで、血行を改善し、症状を和らげることができます。例えば、ぬるま湯に手や足を浸すことが有効です。ただし、急激に熱いお湯に浸けると逆効果となるため、注意が必要です。

血行を良くする

また、血行を促進するために、軽いマッサージやストレッチを行うことも効果的です。これにより、血液の循環が改善され、しもやけの症状が軽減します。さらに、ビタミンEを含むクリームや軟膏を使用することで、血行を促進し、皮膚の回復を助けます。

薬物療法

しもやけが重度の場合や痛みが強い場合には、医師の指導のもとで治療をすることが大切です。抗炎症薬や血行促進薬が処方されることがあり、これらの薬は炎症を抑え、血液の循環を改善する効果があります。また、しもやけが感染を引き起こした場合には、抗生物質が必要になることもあります。

さらに、しもやけの再発防止には、日常生活での対策が重要です。寒冷な環境にさらされる前には、予防策を講じることが求められます。例えば、暖かい衣類を選び、手足を冷やさないように心がけることが大切です。また、湿った手袋や靴下は避け、乾燥した状態を保つことが推奨されます。

このように、しもやけの治療は、症状の緩和と再発防止を目的とした対策を講じることが重要です。早期に適切な治療を行い、日常生活での予防策を徹底することで、しもやけの症状を効果的に管理することができます。

しもやけになりやすい人・予防の方法

しもやけは、なりやすい体質の人とそうでない人がいることが分かっています。また、毎年しもやけに成人は早めの予防が大切です。しもやけになりやすい人や具体的な予防法をみていきましょう。

しもやけになりやすい人

しもやけになりやすい人は、特定の環境や体質を持つ人々です。冷気にさらされた後の血流障害の程度と、そこからの回復には遺伝的な差があるとされています。まず、寒冷地に住んでいる人や、寒冷な環境で長時間過ごすことが多い人は、しもやけのリスクが高まる可能性があります。また、冷え性の人や低血圧の人は、血行不良を起こしやすく、しもやけになりやすい傾向があるでしょう。

さらに、女性や子どもは男性に比べてしもやけのリスクが高いとされています。大人で毎年発症するケースは、中高年の女性に多いとされています。
最近では、新型コロナウィルス感染による皮膚症状で、しもやけに似た症状が起きる事例が海外で多く報告されていますが、日本での報告例は少ない状況です。

しもやけの予防法

予防の方法としては、まず、寒冷対策を徹底することが重要となります。寒い季節には、厚手の衣類や防寒具を着用し、体を温かく保つよう心がけましょう。特に、手袋や靴下を二重に履いたり、足首手首をウォーマーであたためるなどして、手足の冷えを防ぎます。また、外出時には耳や顔も寒風から守るために、帽子やマフラーを使用することが推奨されます。体が冷えた時は、カイロの使用や衣服の調節で保温しましょう。

また、暖かくしすぎて汗で湿った手袋や靴下をそのままにし、冷たい風にあたってしまうと逆効果です。湿った状態でそのままにせず、乾いたものに取りかえることも大切です。
他にも、適温のお湯で温めることやマッサージも有効です。抹消血管の流れが良くなります。マッサージ前にはビタミンE軟膏やヘパリン類似物質含有の保湿クリームを使うとより効果的です。

このように、しもやけになりやすい人は、寒冷対策を徹底し、日常生活での予防策を講じることが重要です。毎年しもやけを発症する場合は、寒くなる前の秋口から予防対策を意識してみましょう。


関連する病気

凍瘡

エリテマトーデス

参考文献

日本臨床皮膚科医会

寺澤捷年、凍瘡(しもやけ)の発現機序に関する一考察,日本東洋医学雑誌201667(4)

在カナダ日本国大使館健康ハンドブック

中野区医師会

横浜市医師会市民広報みんなの健康No.285 11・12月号

一般社団法人千葉市医師会

埼玉県皮膚科医会

日本医師会

あたらしい皮膚科学第3版(書籍)

標準皮膚科学第11版(書籍)

皮膚の事典(書籍)