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セレナ待望のe-POWER 4WDはe-4ORCEで

セレナは人気の高いミニバンだ。2022年11月の現行モデル発表以降、現時点での受注台数は15万台を突破している。

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販売から時間が経過しても人気は衰えることはなく、2023年度下期及び2024年上期でも、6人乗り以上のミニバンで販売台数No.1となっている。


9月9日に新色クリスタルブラウンが追加されるなど、仕様が変更されたセレナ。これに今回新たにe-4ORCEが追加される。    日産

そんな人気のセレナだが、欠点がない訳ではなかった。人気のパワーユニットであるe-POWERを搭載した4WDグレードが無かったのだ。

セレナが人気の理由は多くあるが、そのうちのひとつに、エンジンで発電してモーターで駆動する『e-POWER』が好評なことがある。電動車特有のスムーズでシームレスな走り、そして高い静粛性は、家族で乗るミニバンとの親和性も高い。

しかし、今までのセレナで4WDを有していたのはエンジン車のみ。実際、積雪地域を中心に、e-POWERの4WDを望む声は強かったそうだ。

そんな中、満を持して今回セレナのe-POWER車に4WDが追加された。それも、日産が有する先進的な4WDシステムである「e-4ORCE」だ。「e-4ORCE」は前後のモーターとブレーキを統合制御する4WDシステムで、舗装路はもちろん、ウエット路面からスノーロードまで、あらゆる路面で高い安定性を実現している。

パワーユニットにe-POWERを有しているコンパクトカーのノートにも4WDはラインアップされているが、こちらはe-4ORCEではなくリアに最高出力50kWのモーターを搭載する電動式4WDだ。モーターの前後独立制御は行われているが、ブレーキとの統合制御は行われていない。

エクストレイルやアリアなどの上級モデルで採用されているe-4ORCEが、ミドルクラスミニバンのセレナにラインナップされたことは驚かされた。

セレナに採用されたe-4ORCEの詳細

セレナに採用されたe-4ORCEは、フロントに最高出力120kW、最大トルク315Nm、リアに最高出力60kW、最大トルク195Nmのモーターを搭載。これをブレーキと統合制御することで、各輪の駆動力を最適にコントロールする。

e-4ORCE車には新たにSNOWモードが追加された。これにより深雪からもより確実に脱出することが出来る。もちろん、雪道の登坂やコーナーでも高い安定性を有している。アクセルオフ時に回生量を自動的にコントロールして、下り坂でも安定した減速を実現。コーナリング時は各タイヤのグリップ限界を計算し、4輪の駆動力と制動力(ブレーキ)を最適に制御して、積雪路でもドライバーに安心感を与えるフィーリングとなっているのだ。


セレナで人気のパワーユニットであるe-POWER。しかしこれまでe-POWERで4WDは設定されていなかった。積雪地域を中心とした販売現場でも待望の追加と言えるだろう。    日産

e-4ORCEは乗り心地にも寄与しており、2WDのe-POWERと比べて、減速時とコーナリング時の頭部の前後左右の動きを10%低減している。また、前後重量配分は53:47となっていて、乗り心地と走り、どちらの進化も期待が持てそうだ。

e-4ORCEになってもセレナの魅力のひとつであるクラスNo.1の広い室内空間はそのままで、小さくなっているがラゲッジアンダーボックスも残されている。これはリアモーターのレイアウトを最適化するために、リアのフロアとサスペンションを新設したからだ。

さらにセレナe-4ORCEの最低地上高は2WDの135mmから150mmに高められており、これはクラスNo.1とのこと。優秀な4WDシステムとクラスNo.1の最低地上高で、雪に最も強いミニバンの誕生となりそうだ。

e-4ORCEが用意されるグレードはX、XV、ハイウェイスターVの3つで、幅広い価格帯でセレナのe-4ORCEを選ぶことが出来る。なお、2WDのe-POWERとの価格差は約35万円ほどだ。

「雪道に強い」から「雪道が楽」へ

筆者も実際に雪道でエクストレイルとアリアのe-4ORCEに試乗したことがあるが、これまでの4WDを大きく上回るものであった衝撃を覚えている。

通常、雪道などの低ミュー路であれば、車両の挙動を予測しながら、挙動変化を避けたりホイールスピンを避けたりするためにステアリングや各種ペダル操作を丁寧に行う必要があった。それは、想定以上に車両を滑らせないため、そして滑った後でも車両をコントロール下に置くことが目的だ。


エクストレイルやアリアで採用されているe-4ORCE。これがセレナに採用されることは、「雪道が楽」なミニバンの誕生と言える。    日産

しかし、前後のモーターとブレーキを統合制御してくれるe-4ORCEならば、ドライバーが気を遣う必要が一気に減る。発進時に2WDのセレナe-POWERでラフにアクセルを踏むとホイールスピンをしながら進むシチュエーションでも、e-4ORCEならばラフなスロットル操作でも何事も無く、ドライバー側の気遣いは普通のウエット路面のような感覚で発進していったのを覚えている。

それはコーナーでも同じだ。ステアリング操作や荷重操作に繊細になる必要がなく、ある程度ラフな操作でも、クルマが上手く処理をしてくれて、路面へ適切に操作を伝えてくれる感触であった。

これまで4WDと言えば『雪道に強い』という印象であったが、e-4ORCEはその上をいく『雪道が楽』と感じさせる走行フィーリング。そんなe-4ORCEがセレナに追加されるのは、家族との移動がより安全で快適に、そして疲れないものになるということだ。ファミリーカーとしてこれ以上望ましい進化はないだろう。