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言いたいことはあるのにうまく言葉にできない…そんな「言語化」に関する悩みに効果的なのが「読書」です。その際、ただ読むのではなくポイントを意識することが重要です。そこで本稿では、山口謡司氏の著書『言語化100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋し、語彙力や読解力がぐっと増す読書術をご紹介します。

ノートとペンを用意して、本を読みながらメモをとる

本を読むときは傍らにノートを用意しておきましょう。心がすーっと楽になる言葉、背筋を正される言葉、「そうだったのか!」と疑問を解決してくれる言葉、「これは使える!」と得した気分になる言葉、魂が沸き立つ言葉、涙が出るほど感動した言葉…。本を読んでいると、そんなあなたの琴線に触れる言葉に出会うことが多々あります。

人との出会いだけでなく、言葉との出会いも一期一会。忘れないうちに、ノートに書き写しておきましょう。すると、あなたが生きる上でのお守りになったり、生きる方向を指し示すコンパスになってくれたりします。

自分には難しくてよくわからないのだけれど、なぜか惹かれるという言葉もあります。このとき、「わからないものをあえて書き残す」という視点を持ってノートに書き写してみましょう。「どういう意味かな?」と思ったら、辞書を引いて調べてみてください。そして意味がわかったら、実際に使ってみましょう。すると、1つ語彙が増えて言語化能力も高まっていきます。

【図表】読みながらメモしたいこと (出所)山口謡司著『言語化100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)

【ポイント】

●読書とノートをセットにしておく。

●「いい言葉」との出会いは一期一会。

●「いい言葉」は、あなたのコンパスになる。

●わからないことも書き写す。

批評の正体は「ツッコミ」

読みながら批評する「批評」というと難しそうですが、要するに「ツッコミ」です。本を読みながら、その内容に対して「自分ならこんな考え方はしない」「この情報は信じられるの? 著者の主観的な思い込みじゃないの?」などと、自由にツッコミを入れて、それをノートに書き込んでいってください。これは、主観に寄らず「客観的に本を読む」ためにも重要です。

本に書かれているから。それだけの理由ですべてを正しいと考える必要はないのです。むしろそうした読み方は、知識を鵜呑みにするようなもので、フェイクニュースがはびこるいまの時代、身を危険にさらしかねない考え方です。「この著者は、〇〇が正しいといっているけれど、本当かな?」という視点を忘れず、どんどんツッコミを入れていきましょう。それが物事を客観的に観る力をつくり、ひいては「考える力」の源となるのです。

ところで、昭和の教育学者・石山脩平が確立し普及させた方法に、「三読法」と呼ばれる本の読み方があります。高校までの国語の授業では、この方法で文章の読解を教えられます。石山は、この「三読」に「批評」を加えた「四読」を加えた「四読法」を考えていたそうです。

まずは「三読」についてご説明しましょう。この教え方は、「通読・精読・味読」という3つのステップで、教材を3回読んで文章の読解を深めさせる方法です。

「通読」とは最初から最後まで通して読む方法です。次に「精読」は、段落ごとに内容や文法、語句について細かく吟味していきます。最後に「味読」とは、その名前が示すように、作者の気持ちを考えつつ文章の内容をじっくり噛みしめるようによく味わいながら読む方法です。

そして4回目の読み方が「批評」です。石山はこの「批評読み」といえる方法を2種類に分けて考えていました。1つはその作品自体の批評。そしてもう1つは他の作品とその作品を比べて優劣をみるというものでした。この「批評」の方が、「三読法」よりも重要だといえるかもしれません。

【ポイント】

●「批評」とはツッコミ。

●本に書いてあることが正しいとは限らない。

●ツッコミで、あなたなりの応えが見つかる。

●「批評」が客観性をつくる。

他の人の感想と自分の感想を比較して読解力アップ

本を読み、気に入った言葉や理解できなかった内容や言葉をノートやメモに書き写し、本の内容に対するツッコミを書き終えたら、同じ本を読んだ人の感想を聞いたり、感想文などを読んだりしてみましょう。

「あっ、自分の考えと同じだ!」と共感する感想もあれば、真逆の感想もあって、同じ本でもこんなにさまざまな感想を持つ人がいるのだと驚くはずです。自分の「読み」の浅さを実感させられた感想には、素直に「参りました」という気持ちさえ抱くかもしれません。

一方で「それは違うんじゃないの」「誤読ではないかな」と思う感想もあるでしょう。そんなときは、なぜ自分はそう思ったのか、実際に書いたり話したりしてみましょう。

これを「反論」といいます。相手の意見や批判に対して反対する考えを述べることです。反論をすると、当の相手から反論が返ってくることもあるでしょう。しかし、これを恐れてはいけません。なぜなら、批判や反論を受けるということは、自分を成長させるための大きな「気づき」になるかもしれないからです。

たとえば、自分の考えが正しくて、それでも相手には納得できないところがあって反論をしてきた場合、自分の表現力不足だったということも考えられます。それは表現力にさらに磨きをかける絶好の機会になります。

一方で、相手からの反論を聞いて自分の読み間違いに気づいたとき、これもまた自分にとって大きな学びとなります。いずれにしても相手の批判から学びを得ることは、個人の成長にとっても、考える力を育てて言語化能力をアップさせるためにも、とても大切なことです。

そして、意見の違う人と議論をする際には、感情的になっては実りのある議論となりません。あくまで冷静に問題点を指摘して、論理的、客観的に話を進めていく、そんな姿勢が重要です。その訓練ができていれば、社会生活においても、よりよい人間関係を築くことができます。本来、読解力とはそのような人と人との関わりにおいて、培われていくものなのです。

【ポイント】

●同じ本でもさまざまな解釈がある。

●自分と違う意見に反論してみよう。

●反論されることにも学びがある。

●論理的、客観的な議論の積み重ねが読解力を高める。

【監修】山口 謡司

大東文化大学名誉教授、平成国際大学新学部設置準備室学術顧問

1963年、長崎県に生まれる。フランス国立社会科学高等研究院大学院に学ぶ。ケンブリッジ大学東洋学部共同研究員などを経る。 著書にはベストセラー『語彙力がないまま社会人になってしまった人へ』(ワニブックス)をはじめ、『文豪の凄い語彙力』『一字違いの語彙力』『頭のいい子に育つ0歳からの親子で音読』『ステップアップ0歳音読』『いい子が生まれる 胎教音読』、監修に『頭のいい一級の語彙力集成』(以上、さくら舎)などがある。