●飛躍の裏側にあった地道な努力「一つ一つのお仕事を丁寧に」

話題作への出演が相次ぎ、女優として実りの時を迎えている小芝風花。NHKのコント番組『LIFE!』チームが制作するコメディードラマ『事件は、その周りで起きている』シリーズ2(NHK総合 9月30日〜10月3日22:45〜23:00)では、主人公の刑事・真野一花役を続投。クセのある面々とにぎやかなやり取りを繰り広げる役柄として、コメディエンヌとしての存在感を存分に発揮している。「コツコツタイプで、歩みが牛のようにゆっくり。私、丑年生まれなんです」とお茶目な笑顔をのぞかせた小芝が、今の好調ぶりについての率直な想いや、30代に向けて感じている課題について語った。

小芝風花


本作は、刑事ものなのに事件をまるで描かない。代わりに、“事件の周りで起きるトラブル”を描く新感覚のシチュエーションコメディ。とある地方の小さな警察署・新月署を舞台に、1話15分のドラマが繰り広げられる。『LIFE!』で人気キャラクターを数々生んだ倉持裕氏が、完全オリジナル脚本を手掛けている。

シリーズ1は2022年8月に放送され、視聴者から好評を受けたことでシリーズ2の制作が決定。小芝をはじめ、笠松将、中野周平(蛙亭)、倉科カナ、北村有起哉といったメインキャストが再集結した。小芝は「続きを観たいと思ってくださった視聴者の方々がいたからこそ、実現したこと。15分という短い時間の中に、テンポよく面白さがギュッと詰まっている作品だったので、私自身、続編が叶ってとてもうれしいです」と感激しきり。

小芝が演じる真野は、負けず嫌いで、何事も自分の力で成し遂げたい性格の刑事。バディを組む合理主義者の宇田川(笠松)とはことごとく意見が食い違い、事件の周りでいつも思わぬ些細なトラブルが発生してしまう。クセのある面々とのやり取りが見どころとなり、小芝は「皆さんと掛け合いをするのはとても楽しいです」とにっこり。コメディエンヌと評されることも多い彼女だが、「『妖怪シェアハウス』など、濃い人、変わった人たちに振り回されながら成長をしていく役を演じさせていただくことが多くて。私としては、面白い人たちのお芝居を見て『リアクションをしている』という感覚なんです」と周囲のおかげだと目尻を下げる。

本作の演出を務める西川毅氏からは、シリーズ1の撮影において「真野が周囲に振り回され受け身になる場面で、遊んでみてほしい」という指示があったとのこと。小芝はその点について課題を感じていたというが、シーズン2の撮影では、前作から変化・成長しているという言葉をもらえたという。「『前回とお芝居が変わりましたね』と言っていただけて、すごくうれしかったです。監督からは『振り回される場面でも、ちゃんと意志を持って演じてほしい。真野はこうしたいと思ったらからこう動いているという、キャラクターとしての欲求が見いだせれば、受け身の演技の見え方がまた変わってくると思います』というアドバイスをいただいて。監督はいつもコントを撮られている方で、私にとって違った視点をくれるんです。勉強になります」と受け身の芝居をより深める機会にもなっている。

○主演作が続々 来年の大河ドラマ『べらぼう』にも出演

今年は本作だけでなく『大奥』(フジテレビ系)、『GO HOME〜警視庁身元不明人相談室〜』(日本テレビ系)、映画『レディ加賀』といった主演作が続々とお披露目となっているほか、2025年の大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』(NHK)への出演も決定しているなど、話題作が目白押しとなっている小芝。

今もっとも勢いのある女優の一人となった彼女だが、「立て続けにいろいろな作品に挑ませていただける時期というのは、人生においてもそんなにないことなのかなと思うんです。絶えずにお仕事をいただけるということは、もちろん大変なこともありつつ、その大変さを経験できたことは、お仕事への向き合い方を考える機会にもなりました。それは私にとって、とても大きなことです。主演を務めることで、こんなにも周囲の方々に支えられていたんだと実感することも多くて。昨年から今年は、そういったありがたさを感じることが多いです」としみじみ。

今の飛躍につながっている要因について、「私はコツコツタイプで、同年代で大きく飛躍されている方に比べたら、ゆっくり、半歩ずつ進んでいるみたいな感じ」と微笑みながら、「とにかく一つ一つのお仕事を丁寧に、一生懸命にやろうということをモットーにずっとやってきました。すると20歳を超えたくらいから、『また一緒にやりたい』『こういう役をやってほしい』と2度目、3度目で声をかけてくださる方が少しずつ増えてきて。コツコツとやってきたけれど、それを見てくださっている人がいるんだなと感じるととてもうれしいです。私は丑年生まれで、牛のように歩みもゆっくりですが、少しずつ進めたんだな、積み重ねられているんだなと実感しています」と喜びを噛み締める。

シリーズ2が実現した本作も、まさに再会の喜びを感じられるような作品だ。小芝は「スタッフさんたちもこの作品を大事にしていることが、ものすごく伝わってくる。だからこそシーズン2ができたこともうれしいですし、この先も続けていけたらいいなと思うので、精一杯頑張ります!」とさらなる意欲をのぞかせていた。

●30代に向けての課題も「年齢に合った重みを出せるようになりたい」



小芝が連続ドラマで初めて主演を務めたのは、2019年のドラマ10『トクサツガガガ』(NHK)。特撮をこよなく愛する隠れオタクのOL・仲村の奮闘を見事に体現し、コミカルな演技も注目を集めた。小芝にとって『トクサツガガガ』は、「とても胸に刺さる作品だった」という。「『トクサツガガガ』で演じたのは、好きなものを『好き』と言えずに、自分の中に閉じ込めているような役でした。そして仲間を見つけることによって、『好きなものを好きでいて、何が悪いんだ』と成長していく」と回想。

続けて「昔の私は、周りの目を気にしてしまうところがありました。『こんなことを言ったら幻滅されちゃうかな』と心配して、嫌だと思うことがあったとしても、笑ってごまかしたりしてしまうこともあって。でも仲村のように成長していく役を通して、少しずつ『人生一回きりだ。自分のやりたいことをやらなければ、もったいない』と勇気をもらうことができました」と明かし、「10代の頃の私は、ガチガチに凝り固まっていた気がするんです。振り返ってみると、もっと楽な気持ちで考えればよかったのかなと思うこともあって。もともとの性格が変に生真面目というか、融通が利かないタイプなんですね」と苦笑い。「今は10年後の私が後悔しないように、少しずつ自分にとって息がしやすい考え方、柔軟な考え方をするように心がけています」と語る。

今、30代に向けてどのような展望を抱いているだろうか。すると小芝は「大河ドラマ(『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』)で演じる花魁役が、大きな課題になっていて」と打ち明け、「私は顔立ちが幼いので、どうしても年齢より若く見られることが多くて…。元気いっぱい! というイメージの方が強くあると思うので、大人びた役や色気のある役というのは、大きな課題を感じています。年齢的にはちょうどいいはずの役なんですが、そこに向かうのが怖くもあり、大きな壁だなと思っています。30代に向けて、年齢に合った重みを出せるようになっていきたい」と吐露。

「私は欲張りなタイプで、『これが好評だったから、またこういう役をやろう』と思うのではなく、いろいろな役をやりたいなと感じていて。何かをやり遂げると、『次はもっとこうしたい』という欲が出てくる。満足してしまうと成長もできないのかなと思うので、そういった欲に素直でいたいなと思っています」と真摯に未来を見つめていた。

■小芝風花

1997年4月16日生まれ。大阪府出身。2011年「ガールズオーディション2011」でグランプリを獲得。2012年にドラマ『息もできない夏』(フジテレビ系)で女優デビューを果たした。初主演映画『魔女の宅急便』(14)での演技が評価され、第57回ブルーリボン賞・新人賞を受賞。2024年は、『大奥』(フジテレビ系)、『GO HOME〜警視庁身元不明人相談室〜』(日本テレビ系)、映画『レディ加賀』で主演を務める。2025年の大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』(NHK)では、主人公の“蔦重”こと蔦屋重三郎の幼なじみで、“伝説”の遊女・花の井(五代目瀬川)役を演じる。