占術や外交、超常的な役割まで!戦国時代の「軍師」にある5つのタイプを解説
初期は加持祈祷を行う「軍配型」
戦国時代の軍師というと、黒田官兵衛のような人物を即座に思い浮かべる人が多いでしょう。しかし一口に軍師といっても一様ではなく、大きく5つのタイプに分かれます。
まず、戦国時代初期の軍師です。これは陰陽師・占師・祈禱師・修験者などの系譜に属し、占筮術を身につけ、加持祈禱なども行っていました。これは軍配者型軍師と呼ばれています。
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戦いには、今の私たちが思いつかないおびただしい数のタブーやジンクスがありました。
たとえば、戦っている時に弓が折れてしまうことあります。その場合、握りより上で折れるのは吉ですが、握りより下で折れれば凶。凶の場合は凶を取り払う作法があり、それは軍師の仕事でした。
また行軍のとき、軍勢の前か間を犬が横切ることがありました。その場合、犬が軍の右から左へ横切れば吉ですが、左から右へ横切ると凶です。なぜそうなるのかは分かりませんが、このような場合も、軍師が凶を吉に変える作法を行っていたのです。
僧侶や修験山伏といわれる人が軍配者型軍師となるのは、そうした作法に通じていたからでもありました。他にも、雲の流れをみて天気を占う「観天望気」も行っていたようです。
こうした軍配者型軍師は戦国末期まで存在しましが、次第にそれとは異なる参謀型の軍師が登場します。
参謀型軍師はさらに細分すると、策士型軍師、外交型軍師、腹心型軍師、内政官僚型軍師の4つに分かれます。
つまり軍師には、軍配者型軍師と合わせて5つのタイプが存在することになります。順を追って解説しましょう。
その他 4つのタイプの特徴
まず、策士型軍師は戦略・戦術に長けた軍師で、中国伝来の『孫子』などの武経七書の知識を実際の戦いに応用し、軍略を駆使していくようなタイプです。
次の外交型軍師は、僧侶が兼ねることがよくありました。
なぜ僧侶なのかというと、彼らは出家した身なので、俗世間から縁を切った形になっています。そのため、敵・味方という俗世間の縛りがないという建前になっており、中立の立場として敵地にも行くことができました。
それから腹心型軍師は、常に主君の側についており、軍事・内政・外交面の全てにわたってナンバー2として補佐に徹した軍師です。一族の部将がその立場に置かれることがよくありました。
最後の内政官僚型軍師は、内容としては腹心型軍師と重なる面もありますが、主に内政面で辣腕を振るったタイプです。
これは今で言うテクノクラート、すなわち高級行政官にあたり、豊臣秀吉にとっての石田三成や、徳川家康にとっての本多正信・正純父子などが該当するでしょう。
本多正信(Wikipediaより)
内政官僚型軍師は、本来の戦いにおける軍師としての範疇からは外れますが、戦国時代の統治では欠かせないタイプでもありました。
参考資料:『歴史人2022年5月号増刊図解戦国家臣団大全』2022年5月号増刊、ABCアーク
画像:photoAC,Wikipedia