だから「幸せ」がどんどん逃げていく…最新科学が突き止めた「幸せになれない人」が唱えている“呪いの言葉”
※本稿は、ジェームズ・ドゥティ『スタンフォードの脳神経科学者が証明!科学がつきとめた「引き寄せの法則」』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。
■人間には不可能を可能にする力がある
わたしたちの多くは、物心ついたときからずっと、何か外側の力に、自分の問題を解決してもらいたいと願っている。それは宝くじに当たることかもしれないし、すべての答えを知っている賢人の存在かもしれない。あるいは、守護天使やランプの精といった神秘の力が、自分の願いをすべてかなえてくれることを夢想している人もいるだろう。
わたし自身も、だいぶ長いことそんな力を信じたいと思っていた。宇宙には厳格な親のような存在がいて、その存在がわたしたちの行動をすべて監視し、その価値があると認めた者だけに理想のマイホームを与えたり、運命の人と出会わせたり、がんを完治させてあげたりしている、と。
いまのわたしは、神経科学者であり、医師でもあるので、そんな力に科学的な根拠はないということはよくわかっている。とはいえ、人間の精神には不可能に思えるような変化を起こす力があり、それを裏づける科学的な証拠がたくさん存在するのも事実だ。この現象は「マニフェステーション(願望実現)」と呼ばれている。
■目標達成を司る脳の部位が活性化
世間では「マニフェステーション」についてかなり誤解があるようなので、さらに話を進める前に、まずは定義をはっきりさせておこう。
わたしが考える「マニフェステーション」とは、自分の意図(自分の本来の目的、本当の願望)を明確にし、それを潜在意識に埋め込むということだ(潜在意識とは、自分が自覚していることの下に隠れている意識をさしている)。
意図が潜在意識に埋め込まれると、脳が「その意図は重要だ、価値がある」とみなしたり、その意図が自分のなかで大きな存在になったりする。その結果、目標達成を司(つかさど)る脳の部位が活性化するのだ。
具体的には、その意図(どんな意図でもかまわない)が脳内で意識されると、目標に集中する脳の部位がつねに活性化された状態になる。
わたしたちのなかにある意図が、わたしたちの人生をつくっている。その内なる力を使って、脳内にある膨大なリソースを活用することができれば、外側の環境にただただ反応する状態から少しずつ脱することができ、自分のなかのもっとも深いところから生まれる意図の通りに生きることができるようになる。
■大事なのは自分の可能性を信じること
実際、願望を実現する最初のステップは、外側の力が自分の問題を解決してくれるという考えから自分を切り離すことだ。豊かで、意義深く、目的意識のある人生を送りたいなら、自分の外側にある力に媚(こ)びる必要はまったくない。あなたはただ、あなたに幸せと成功をもたらす力は自分の精神のなかにあると信じるだけでいい。
あなたの精神が、理想の人生を手に入れるのを阻(はば)む障害をつくりだしている。と同時に、あなたの精神は、理想の人生を実現する意図を生みだす源でもある。それが「本当の秘密」だ。
悪いことが起こるのは、宇宙のせいではない。それはあなた自身の精神がつくりだした現象だ。
わたしは神経科学者であり、数十年にわたって人間の脳を専門に研究してきた。そして医師としてはスピリチュアルな治療を実践し、ダライ・ラマやほかの精神的なリーダーたちと協力して、共感と思いやりの心を多くの人に教えてきた。それに加えて、そのすべての教えを、手痛い失敗を重ねながら学んできたひとりの人間でもある。
マニフェステーションとは、可能性を信じる姿勢を養うことだ。
■恵まれない環境に支配されていた子ども時代
わたしは子どものころから、ネガティブな状況がわたしたちの人生を制限してしまうということに気づいていた。わたしは貧しい家庭で育った。父親はアルコール依存症。そして母親は、慢性的にうつ状態で自殺願望をもっていた。このような環境で育つと、人生とは何かの罰か呪いである、あるいは、なんの理由も脈絡もなく不幸が襲ってくるカオスなのだと思い込むようになる。
もしかしたらあなたも、運命の気まぐれに翻弄(ほんろう)され、人生の意義が見いだせずにいるかもしれない。あるいは、なぜ自分や自分の愛する人たちは、何も悪いことをしていないのにこんなにひどい目にあうのかと嘆いているかもしれない。自分には何もできないと無力感を抱えているかもしれない。だが、そうやって苦しんでいると、あなたに見える可能性の範囲がますます狭くなっていく。
わたし自身、何年にもわたってまわりの環境に支配される人生を送っていた。そして、この状況をいい方向に変える力など自分にはないと思い込んでいた。トラウマを体験した人のほとんどは、当時のわたしと同じように感じてしまう。その体験の苦痛とショックに精神を支配され、それに抗(あらが)おうという気力もわいてこなくなるのだ。
この苦痛には巨大な力があり、わたしたち自身の遺伝子だけでなく、エピジェネティクスという分野の研究でも発見されたように、さらに下の世代の遺伝子にまで影響を与えていく(※1)。
わたしたちの精神と肉体は、将来同じようなトラウマを経験するのを阻止するために協力して動いている。その過程で、わたしたちの意識は、自分が起こせる変化を思い描くのではなく、恐ろしくて予測不能な外の世界にただ反応するようになっていったのだ。
※1 エピジェネティクス Stanley Krippner and Deirdre Barrett (2019). “Transgenerational Trauma: The Role of Epigenetics,” The Journal of Mind and Behavior , 40(1), 53-62
■「願望実現」でも現実はコントロールできない
わたしたちはそうやって、せっかくのエネルギー、注意力、集中力を失ってしまった。
それらを活用すれば人生に本物の変化を起こすことができるというのに、自分が力をもっていることにさえ気づいていない。その結果、自分の内なる力ではなく、なんでも解決してくれる魔法の存在を頼るようになる。これは本当にひどい話であり、誰が悪いわけでもない。
世界はたしかに残酷なほど不公平であり、そのせいでひとりの人間の夢が破壊されることもある。わたしもかつては、自分はこの不公平な世界の犠牲者だと思っていた。しかしいまでは、数え切れないほどの人々が、自分よりもさらに理不尽な境遇にあるということも理解している。
個人の事情で苦しんでいる人もいれば、システムのせいで苦しんでいる人もいるだろう。そういった人たちが暮らす社会では、個人の自己実現を阻むような障害がシステムに埋め込まれている。人種、社会階層、宗教、性的指向、ジェンダー表現など、不当な差別がまかり通っている。肉体や精神に深刻な病を抱え、日々苦しんでいる人もいるだろう。
マニフェステーションは、そういった苦しみをすべて解決できるわけではない。あらゆる人間の行動が、自分にはコントロールできないさまざまな要素によって制限を受けている。わたしたちの意図に関係なく、最終的な決定権をもつのは現実だ。
それはたしかにそうなのだが、ここでわたしが以前に聞いた感動的な話を紹介しよう。
■絶望的な状況でも「いい人生」を送る方法
ベトナム戦争で捕虜(ほりょ)になったある兵士が、長期にわたる捕虜生活において、なんの根拠もないのに「楽観主義」を貫いてすごした。
現実は、自分がいつ解放されるのか、そもそも解放されるかどうかもわからない状況だった。彼は、自分にこの状況をコントロールする力はないということを理解していた。状況に抗っても、殺されるか、あるいは絶望のあまり生きる気力を失うだけだ。
そこでこの兵士は、ただ楽観的でいることを意識するようにした。状況はいつか変わるという希望を捨てなかった。最終的に自由になることを意図したわけではない。彼が行ったのは、可能性を信じ続けることだ。そしてついに解放されると、このときに培(つちか)った楽観的な姿勢によって、新しい人生を力強く歩んでいくことができたのだ。
つまり、わたしが考えるマニフェステーションの本質とは、心身ともに健全で幸福な状態=「ウェルビーイング」を実践することであり、いい人生を送ろうという強い意志をもつことだ。
■楽観主義の効用
マニフェステーションによって、いわゆる「楽観主義的傾向」(※2)を育てることもできる。
楽観主義的傾向のある人は、人生のあらゆる重要な状況でいい結果になると信じることができる。さらに楽観主義的傾向には、心血管機能が向上する、傷が早く治る、病気の進行が遅くなるなど、さまざまな健康上の利点があることも科学的に証明されている。
意図したものが現実にならなければ、マニフェステーションが成功したとは言えないという人もいるだろう。しかし、わたしはそうは思わない。意図を何度も何度も視覚化することの本当の価値は、「人生はなんとかなる」という前向きな姿勢で生きられるようになることだ。何があっても最終的にはうまくいくと信じられる人は、外側の状況がどうなろうと、それを受け入れ、力強く立ち直ることができる。
※2 楽観主義的傾向 Michael F. Scheier and Charles S. Carver (2018). “Dispositional Optimism and Physical Health; A Long Look Back, A Quick Look Forward,” American Psychologist , 73(9):1082-1094.
■古くから知られていた「願望実現の法則」
マニフェステーションには数千年の歴史がある。現代のわたしたちがイメージするマニフェステーションは、主にヒンドゥー教の聖典「ヴェーダ」に書かれている内容が基になっている。
たとえば、「ヴェーダ」に属する「ムンダカ・ウパニシャッド」には、「真実を理解している者であれば、その精神にどんな世界を思い描こうとも、どんな願いを胸に抱こうとも、その者はその世界を手に入れ、その願いをかなえるだろう」(3・1・10)と書かれている。またブッダも、「僧侶がその思考によって何かを追い求めれば、その何かは僧侶の意識の傾向となる」と述べ、思考には現実の世界を形づくる力があることに触れている。
19世紀に入ると、「ニューソート」と呼ばれるスピリチュアルの運動が起こった。ニューソートは、錬金術、超絶主義、キリスト教の福音、ヒンドゥー教など、さまざまな宗教や哲学の教えを融合した思想であり、ここから「引き寄せの法則」が生まれている。
■「引き寄せの法則」が招いた誤解
引き寄せの法則の基本的な考えは、「思考が体験する現実を決める」というものだ。ポジティブな思考はポジティブな体験を引き寄せ、ネガティブな思考はネガティブな体験を引き寄せる。
現在、欧米でよく知られているマニフェステーション関連の思想は、ナポレオン・ヒルの『思考は現実化する』(きこ書房)から、ノーマン・ヴィンセント・ピールの『積極的考え方の力』(ダイヤモンド社)まで、たいていこのニューソートが基盤にある。なかでもとくに有名なのは、ロンダ・バーンの『ザ・シークレット』(KADOKAWA)だろう。
しかし、引き寄せの法則という考え方からは、マニフェステーションに対する不幸な誤解がいくつも生まれてきた。第一に、引き寄せの法則は物質主義と強く結びついている。
その結果、多くの人が、お金を引き寄せ、立派なマイホームを引き寄せ、高級車を引き寄せれば幸せになれると信じてしまった。
そのほかにも、ただ願うだけでいいという勘違いも生み出してきた。人生を変えるには、ただ理想の人生を夢想するだけでなく、自分の行動や態度も変えなければならない。
そしておそらくもっとも有害なものは、つらく苦しい現実もすべて自分の思考から生まれたという誤解を広めてしまったことだろう。
■科学的に証明された「願望実現の法則」
わたしの願いは、この本がマニフェステーションにまつわる誤解を解く助けになることだ。真のマニフェステーションとは、意義深い人生、目的意識のある人生を手に入れるための、そして究極的には、自分にとって本当に大切なものに気づくための手段なのだ。
マニフェステーションは長年にわたって誤解されてきた。占星術や天使のビジョン、霊魂再生といったニューエイジ的な偽科学と同じ扱いを受けている。
最近になるまで、意図が現実になる過程を科学的に証明することはできなかった。脳のどの部位がマニフェステーションを可能にしているのか、誰にもわからなかった。しかし脳イメージング技術が大きく進歩した結果、いまでは細胞レベル、遺伝子レベル、さらには分子レベルにおける脳の活動を詳細に観察することができる。つまり、認知神経科学、脳の大規模ネットワーク(※3)といった学問分野から、マニフェステーションを語れるようになったのだ。
※3 脳の大規模ネットワーク Steven L. Bressler and Vinod Menon (2010). “Large-scale brain networks in cognition:emerging methods and principles,” Trends in Cognitive Sciences , 14(6): 277-90,
■鍵となるのは「脳の神経可塑性」
マニフェステーションは、簡単にお金持ちになれる怪しげなスキームでもなければ、願望をかなえる魔法のようなシステムでもない。マニフェステーションは厳密な科学であり、その根底には、脳の構造が物理的に変化する「神経可塑性(しんけいかそせい)」という現象がある。
人間の脳は、環境に適応したり、損傷を治したりしながら、その構造や機能を変化させている。神経可塑性とは、こういった一生続く脳の変化を一般的に表現した言葉だ。可塑性は脳のスーパーパワーであり、経験、くり返し、意図によって形づくられる。何か新しい経験をしたり、何かの行動をくり返したりすると、脳の物理的な構造が変化し、新しい回路が形成されたり、古くてもう使わなくなった神経の通り道が削除されたりする。
つまり、自分の注意を向ける先を変えれば、脳の物理的な構造を変えることができるのだ。学習と実践を司る脳の部位が強化され、夢の実現が可能になる。脳が環境に合わせて変化すると、パーキンソン病、慢性的な痛み、ADHDなど、あらゆる病気や症状の緩和につながることがわかっている。
そして、マニフェステーションのしくみもこの神経可塑性で説明できる。何かを意図することで脳の構造が変わり、その結果、実践を通して意図したことが現実になるからだ。
■自分の意図をコントロールする力をとり戻す
マニフェステーションとは基本的に、理想の人生に関する思考やイメージを、意図的に自分の潜在意識に埋め込むプロセスのことだ。
わたしたちはみな、自分の潜在意識に蓄積された意図を現実にしながら生きている。ただ、きちんと訓練を受けたわけでも、正式な方法を知っているわけでもなく、正しくマニフェステーションを行うことができないので、現実は単なる偶然の結果だと思ってしまっているのだ。
意識的にマニフェステーションを行うには、自分の意図をコントロールする力をとり戻さなければならない。そしてその過程で、マニフェステーションの生理学的なしくみや、わたしたちの足かせになっている間違った思い込みについても理解する必要がある。
■脳は「現実」と「イメージ」の違いがわからない
自分の意図を意識的にコントロールし、自分が望む目標に意図を向かわせると、そのときに頭に浮かんだイメージが脳にとって重要な存在になる。
こうやってイメージを脳にインストールするプロセスは「価値タギング」(※4)と呼ばれる。「タギング」とは、重要な情報やファイルを探しやすくするために印(タグ)をつけるという意味だ。脳は価値タギングによって、潜在意識のもっとも深い部分に刷り込む価値のある情報を決めているのだ。
視覚化を行うと、わたしたちのなかには、力強く、前向きな感情がわきあがる。それが情報を選別するフィルターのように働き、もっとも価値が高く、脳の報酬系と関連するイメージにタグがつけられる。視覚化に効果があるのは、人間の脳には現実の体験と鮮明なイメージを同じものとして扱うという驚くべき機能があるからだ。
イメージが潜在意識にインストールされると、脳はまるで優秀な警察犬のようになり、そのイメージを現実にするチャンスを探しはじめる。顕在意識の力と潜在意識の力を総動員して捜索するのだ。その状態でチャンスが到来すると、わたしたちは即座に反応し、将来の目標に向けて必要な行動をとる。このプロセスを何度も何度もくり返し、そのあとは結果に執着せず、自然のなりゆきにまかせればいいだけだ。
※4 価値タギング Tara Swart, The Source: The Secrets of the Universe, the Science of the Brain. (New York:Harper One, 2019).
■わたしの運命を変えた出来事
わたしは最初の著作『スタンフォードの脳外科医が教わった人生の扉を開く最強のマジック』(プレジデント社)のなかで、人生を永遠に変えることになった子ども時代の運命的な出会いについて書いている。
わたしはカリフォルニア州の砂漠で生まれ育った。家は貧しく、家庭環境も悲惨と言うほかなかった。そのためわたしは、自分は何かの呪いをかけられていて、ただ状況に振り回されながら小さな人生を送るしかないと信じていた。
しかし、ある夏の日のことだ。両親がケンカをはじめたので、わたしは外に飛び出した。自転車に乗り、思い切りペダルを漕いだ。ただ家からできるだけ遠くに離れたい一心だった。そして、砂で口のなかがジャリジャリになった状態でたまたま見つけたマジック・ショップに入ると、わたしの人生は一変することになる。
わたしはそこで、ルースという名の親切な女性に会った。彼女は青いムームーを着て、わたしが入ってくると、それまで読んでいた本から目を上げた。鼻の上にのっかった眼鏡には、首にかけるチェーンがついている。ルースは輝くような笑顔をわたしに向けた。その笑顔を見て、わたしはなんだかほっとしたのを覚えている。彼女はわたしを安心させてくれた。
話を聞いたところ、それは彼女の息子の店であり、彼女自身はマジックについて何も知らないという。20分ほどおしゃべりをしたところで、ルースはこう言った――夏の間、6週間はこの町にいるので、あなたが毎日店に来たら、ほかのマジックを教えてあげる、と。それからの6週間、わたしが店を訪ねると、ルースはチョコチップクッキーを好きなだけ食べさせてくれた。そして、彼女が「本当のマジック」と呼んでいるものを教えてくれた。それは、身体をリラックスさせたり、心を落ち着かせたり、心を開いたり、自分の意図を明確にして視覚化したりするテクニックだ。
■脳の配線を変える
店の奥の部屋で、毛足の長い茶色のカーペットの上に置かれた金属の椅子に座り、ルースと2人ですごした時間は、わたしが神経可塑性を実際に体験した最初の瞬間だった。彼女の優しさと気づかいが、わたしの脳の配線を変えたのだ。
最初は怖がり、ためらっていたわたしを、ルースは優しく導いてくれた。自分の思考から十分に距離をとれば、思考の本当の姿が見えるようになると彼女は教えてくれた。思考とは、文字通りただの思考でしかない。頭のなかに現れては消えていくだけだ。
わたしも最初のうちは、頭のなかで怖い声が聞こえたり、大惨事のイメージがわいたりしたら、恐怖を感じるか、あるいは攻撃的に反応していたが、それでもだんだんと、ネガティブな思考はポジティブな思考、自己肯定感が高まる思考へと置き換えられることを学んでいった。「お前のような人間は何者にもなれない」という声を手放し、代わりに理想の人生を送っている自分、なりたい自分の声を手に入れることは可能なのだ。
■「願望実現」は誰もができる
『スタンフォードの脳外科医が教わった人生の扉を開く最強のマジック』は、わたしの個人的な旅路を描いている。わたしは貧困家庭に生まれ、一度は貧困を脱して豊かさを手に入れることができたが、また豊かさを失い、そしてついに、ルースの教えの真髄(しんずい)である「思いやりの心」に戻ることができた。これはわたしというひとりの人間の物語であり、わたしの個人的な体験が描かれている。いいときもあれば、悪いときもあり、好運にめぐまれるときもあれば、障害にぶつかるときもある。
しかし、この本はあなたの旅の物語だ。
わたしはこの本で、自分の脳の力を活用して意図を現実化する方法を伝授し、そのしくみを神経科学の観点から詳しく解説することを目指している。マニフェステーションには6つのステップがあり、わたしを含め多くの人がそのステップを使っている。この本を読めば、それぞれのステップについて詳しく学ぶことができるだろう。
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ジェームズ・ドゥティスタンフォード大学脳神経外科学部臨床教授
ダライ・ラマが創設の援助をした「コンパッションと利他主のための研究と教育センター(CCARE)」でディレクターを務める。同センターで、コンパッションと利他主義、そして両者と脳の関係について研究。ダライ・ラマ基金元理事長、チャーター・フォー・コンパッション副理事長。著書の『スタンフォードの脳外科医が教わった人生の扉を開く最強のマジック』(プレジデント社)はニューヨーク・タイムズ・ベストセラーに選出され、40の言語に翻訳されて世界的なベストセラーになった。K-POPスターのBTSのアルバム『LOVE YOURSELF 轉 'Tear'』は、この本に触発されて生まれている。
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(スタンフォード大学脳神経外科学部臨床教授 ジェームズ・ドゥティ)