「腹が立つこともある」性別騒動に揺れた台湾女子ボクサーが誹謗中傷に持論 そして“潔白”も語る「馬鹿馬鹿しい」【パリ五輪】
巧みな内容で決勝まで勝ち進んだリン・ユーチン。(C)Getty Images
金メダルにあと一歩と迫った。
現地時間8月7日に行われたパリ五輪・女子ボクシング57キロ級準決勝で、性別騒動に揺れるリン・ユーチン(台湾)は、エシュラ・ユルドゥズカフラマン(トルコ)と対戦。フルマークでの判定勝ちを収め、銀メダル以上を確定させた。
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磨き上げた巧みなアウトボクシングで、積極果敢に打ち出す相手を翻弄した。
1ラウンド目から相手が入ってくるところに的確に左右のカウンターを合わせてポイントを稼いだリン・ユーチンは、ユルドゥズカフラマンが“ガス欠”となった3ラウンドは、試合を完全に掌握。右ストレート、右アッパーなどのカウンターを決め、5人のジャッジが採点を付ける圧勝でファイナリストとなった。
いまも騒動の渦中にある彼女の下には誹謗中傷も相次ぐが当人は胸を張る。7日の試合後に台湾メディア『Focus Taiwan』のインタビューに応じたリン・ユーチンは「もちろん、いくつかの発言や指摘を読むと腹が立つこともありますけど、私にできることは、彼らの発言をコントロールはできないと自分に言い聞かせることだけ」とキッパリ。「そういう人たちには言わせておけばいいと思っています。この件に関して、私には明確な良心がある」と言い切っている。
リン・ユーチンは、66キロ級に出場中のイマネ・ケリフ(アルジェリア)とともに昨年にIBA(国際ボクシング協会)が主催した世界選手権で実施された性別適格性検査で不合格となった。一般的に男性が持つ「XY」染色体が検出されたとして、女子選手としての参加資格を剥奪されていた。
パリ五輪出場を巡っては、ボクシング競技の統括団体である国際オリンピック連盟が「我々の決定は科学的な根拠に基づいたものである」と指摘。女子選手としての参加資格を与えていた。
自らの“潔白”と女子選手としてのプライドを語るリン・ユーチンは、「結局、IBAの検査が嘘であり、彼らのプロセスはいかなる基準にも従っていなかったことが証明されています。でも騒ぎは続いた。彼らが私をわざと狙ったんじゃないかと混乱もしました。でも、正直なところ馬鹿馬鹿しい感じがしました」と持論を展開している。
「この騒動で私が一番気にしていたのは、一生懸命に働いていたにもかかわらず、メダルを剥奪され、収入源がなくなってしまうんじゃないかということです。知らない人たちやヘイターたちから何を言われようとも、私は本当に気にしてません」
世界的な大論争の中で「気にしていない」と言い切れる精神力こそ彼女の快進撃の秘訣かもしれない。なお、決勝に進出したリン・ユーチンは、現地時間8月10日にユリア・セレメタ(ポーランド)と対戦する。