日本人が英語やフランス語を学習する際、「r」「l」などの舌を丸める発音が難しかったり、カタカナで発音を正確に表現できないため耳で聞いて再現するのが難しかったりと、習得するのに苦戦することがあります。一方で、アフリカ言語は日本語に近い発音が多く、日本語とアフリカ言語には興味深い音声上の対応関係があると、アメリカのケネソー州立大学でジャーナリズム教授を務めるファルーク・クペロギ氏が見解を述べています。

Japanese Words and Names Sound African. Why? - Notes From Atlanta

https://www.farooqkperogi.com/2022/10/japanese-words-and-names-sound-african.html



日本語とアフリカ言語の対応関係について、クペロギ氏は福井県小浜(おばま)市を挙げています。2006年にバラク・オバマ元大統領が上院議員時代に日本のテレビ局のインタビューで「私は小浜出身だ」と冗談を述べたことから、当時の小浜市長は市の有名な工芸品を送ったほか、2008年の大統領選挙を応援するオバマを勝手に応援する会が発足して熱烈な応援態勢が盛り上がりました。オバマ元大統領はケニアのルオ族の血を引いており、オバマとはルオ族でしばしば付けられる名前です。また、ナイジェリアにもオバマという町があり、「オバマ」という音は日本語でもアフリカ言語でも共通して聞き取れる単語だと言えます。以下の画像は、小浜市に立てられたオバマ元大統領の胸像。



by Sarah Marchildon

もうひとつ、クペロギ氏は「味の素」を例に挙げています。味の素は商品と同名の企業が製造しているうま味調味料で、ナイジェリアの家庭でも一般的に用いられています。クペロギ氏は台所にある「Ajinomoto」という調味料について、ナイジェリア言語にちなんで名付けられたナイジェリアの会社だと長年思っていたそうです。さらに、ナイジェリアのイボ族とアメリカ人のハーフである妻に「Ajinomotoは何語が由来だと思う?」と尋ねたところ、クペロギ氏の妻は「ナイジェリア等で話されるヨルバ語に違いない」と答えたとのこと。そのほか、日本語の個人名や町名、ものの名称の多くに、ナイジェリアでも別の意味の名称として通じる言葉が多くあるとクペロギ氏は指摘しています。



by Richard Masoner / Cyclelicious

同じように、アフリカで使われている言葉の多くも、日本語で音声的に理解できます。例えばナイジェリアの主要民族である「ヨルバ族」は、「ヨル=夜」「バ=馬」と、意味は異なるものの音声としては耳なじみのあるものとして聞き取ることができます。これは完全に別の言語としては珍しいことで、驚くほどの一致だといえます。

しかし、この日本語とアフリカ言語との一致は、単なる音韻や意味上の偶然的な一致以上のものであるという証拠は発見されていません。

同じように、ナイジェリア中東部のプラトー州で用いられる言語は、中国およびその近隣諸国のシナ・チベット語族の言語と音やリズムに類似性が見られます。この類似性について研究した言語学者によると、語彙(ごい)統計分析の結果、プラトー州とシナ・チベット語族の言語間で発音が似ている単語のうち、意味が似ている単語は30%未満だったとのこと。結果として言語学者は、こうした類似点について「偶発的な証拠(accidental evidence)」と呼んでいます。

異なる言語の発音や音の使い方が近いということは、その言語たちが共有の起源を持っていることが推測されますが、そのような証拠はわずかでも見つかっていません。クペロギ氏は「これはあくまで偶然の音の類似性があったということにすぎません。ただ興味深いことに、プラトー州の言語と日本語は、どちらもそれぞれの地域の主要な言語族には属しておらず、言語学的には『孤立した言語』と呼ばれるものです」と語っています。