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 経済本や決算書を読み漁ることが趣味のマネーライター・山口伸です。『日刊SPA!』では「かゆい所に手が届く」ような企業分析記事を担当しています。さて、今回は東京ディズニーリゾートの運営企業である株式会社オリエンタルランドの業績について紹介したいと思います。
 ディズニーリゾートでは6月6日から、シーの新エリア「ファンタジースプリングス」が開業しています。アナ雪やラプンツェルをテーマとした新エリアは人気を博していますが、入場制限を行っているため、入れない客も多いようです。コロナ禍以降、オリエンタルランドは従来の客数を重視する姿勢から顧客満足度を重視する姿勢へと転換しており、値上げや変動価格制の導入、そして入場制限を実施してきました。こうした施策は客層の“絞り込み”に成功し、結果として業績は以前を上回っています。

◆2018年度の35周年イベントで過去最高の営業利益をたたき出す

 2013年以降、ディズニーリゾート全体の入場者数は年間3,000万人台で安定し、オリエンタルランド全体の売上高も4,700億円で横ばいに推移していました。

 そんな状況を打開したのが2018年度に実施した35周年イベントです。年間を通してスペシャルイベントを実施、テレビCMでの積極的な宣伝もあり、年間来場者数はそれまでの水準を大幅に超える3,256万人を記録しました。客をとにかく呼び込むような施策といえるでしょう。会社全体の売上高は5,256億円、営業利益は1,293億円と過去最高を更新。

 しかし、翌20年3月期は前年の反動に加え、最後の1か月間はコロナに伴う休園を実施したことにより、業績は悪化したのです。

◆さすがのディズニーコロナには勝てず

 20年3月期から24年3月期の業績は次の通りです。

【株式会社オリエンタルランド(20年3月期〜24年3月期)】
売上高:4,645億円→1,706億円→2,757億円→4,831億円→6,185億円
営業利益:968億円→▲460億円→77億円→1,112億円→1,654億円
入場者数:2,901万人→756万人→1,205万人→2,209万人→2,751万人
営業日:333日→274日→365日→365日→365日

 2020年度は6月末まで臨時休業を実施、入場制限も行ったため年間入場者数・売上高ともに大幅に悪化しました。その後は段階的に入場制限を引き上げたもののコロナ禍は依然続き、22年3月期、23年3月期も軟調に推移しました。

 ちなみに入場制限数の詳細は公開されていませんが、現在、パークチケットを現地で買うことはできず、公式サイトまたはアプリで購入する方式を取っています。

◆5年間で客単価を40%引き上げた

 24年3月期は一転します。売上高は35周年記念の19年3月期を約1,000億円上回り、利益とともに過去最高を再度更新しました。ホテル事業を除くテーマパーク事業の売上高も4,375億円を上回る5,138億円となりました。入場者数自体はコロナ禍以前の水準を下回っているため、24年3月期の好調は客単価の増加に支えられた形です。

 テーマパーク事業単体の客単価は19年3月期平均で1万1,815円でしたが、コロナ禍で年々上昇し24年3月期では1万6,644円となりました。5年間で40%引き上げることに成功しています。この間、入場料の引き上げを4回も実施しており、1デーパスポート(大人1人)の価格は以前の7,500円から、現在では変動価格制を導入し7,900〜10,900円となりました。

値上げで上客の絞り込みに成功した?

 お得な年間パスポートも廃止。この他にもディズニーは“有料版ファストパス”といわれる「ディズニー・プレミアアクセス」を2022年から導入しています。ディズニー・プレミアアクセスは1回1,500〜2,500円を課金することで、特定のアトラクションを並ばずに楽しめるほか、専用エリアからパレードを鑑賞できるシステムです。