週刊文春を装い大谷翔平の取材を持ちかける…警視庁が警告する「高額バイト詐欺」

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文春編集部を装いメッセージが送られてくる

SNSを悪用した詐欺が止まらない。著名人の名を騙った投資や、恋愛感情を抱かせての支援など、数百万円から数千万円単位の高額な被害が相次いでおり、その手口は巧妙化。

また新たに出てきたのは、ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平の取材アルバイト募集を偽った詐欺である。

「収入を増やしたい方はこちら★日本国籍のみ★給与:日給50000円〜80000円★勤務場所:アメリカ★年齢制限25歳以上★応募資格:性別不問★一時帰国できます(交通費補助)★仕事内容:有名週刊誌の取材補助(英語不要)大谷翔平の情報収集です。」

X(旧ツイッター)のメッセージ機能を利用して誘いをかけられたもので、5月中旬から複数の日本人ユーザーが受信したのを確認した。送信アカウントは中国名と思われる名前だが、「企業の募集を仲介しています」と言って、LINEアカウントに誘導していた。

6月1日、受信者の男性が言われたとおりにLINEに場を移すと、「文春編集者」なるアカウントが、「大谷翔平の取材をしていますので、アメリカに行って手伝いをしてほしいのです。今すぐに助けが必要なので、6月10日までに旅行準備をできますか」と言ってきた。

週刊文春の編集者を装っているようだが、これは当然ニセモノ。そこで「週刊文春の編集者ですか」と聞くと、「委託を受けている会社です」と微妙な回答。そして、「最初の仕事は6月11日から24日までロサンゼルスに行ってください。到着後にロサンゼルス支局のサイトウがご案内します。98万円の給与を仕事の最終日に渡します。その後に7月の仕事を依頼します」と指示してきた。

どんな仕事をするのか、という質問には「ロサンゼルスで大谷の人気を調査する。大谷の写真を撮る。水原一平裁判の様子を見る。たくさんあります」と回答。

大谷から巨額の金を騙し取った元通訳の名を出すあたり、いかにも取材を装った風だが、最終的には「最初の航空費と宿泊費を払ってください。しかし、安心してください。これは仕事が終わったときに全額、返金します」と、渡航費とホテル代として合計34万円の立て替えを求めてきた。

「なぜ立て替えなきゃいけないのか」と聞くと、「仕事をしないでアメリカ旅行をしてしまう人がいるからです」と、もっともらしい理由を述べた。

その支払いは電子マネーを買わせる形で、詐欺を感じさせた。男性がこれを出し渋ると「では、半額の17万円の支払いで残りは給与から引きます」と譲歩してきた。

拡大する高額アルバイト

男性はここでやり取りをやめた。多くの人は同様に途中で詐欺と気付きそうだが、警視庁によると、こうした「高額アルバイト」の詐欺被害は拡大しているという。

その一例は、「消費者金融から金を借り、その額に応じて報酬が払われる。会社が返済するため、個人の債務にはならない」として借金と引き換えに「報酬3万円」をもらうが、借金はそのまま残り、後に消費者金融から返済が求められるという詐欺

また、高級な時計や宝石など高額商品の買い付けアルバイトというのも詐欺の手口に多く、言われたとおりに買って商品を送ったのに「代金と報酬が支払われない」という被害に遭ってしまう。

あらゆる手口が広がる中、大谷翔平までもが詐欺に使われる始末だが、今回の「取材手伝い詐欺」は、タイムリーな情報を必要とするマスコミの特性を見たか、わずか9日後の渡航を求めるスピード感で、受信者の考える余地を極力、与えないようにしている。仕事をせず旅行をしてしまう人がいるから旅費を前払いさせる、というのも納得してしまいそうな理屈だ。

ただ、実際には、メディアがこれほど高額な報酬を払ってまで、まったくの取材素人を現地に行かせるというのは、まずありえない話だ。プロの記者にですら日給5万円以上で海外のスポーツ取材なんていうのは聞いたことがない。

もっと雑誌が売れていた十数年以上前なら、その額自体はありえたが、それでも著名人を直撃できるぐらいの敏腕記者に限られた。ちょっと考えればマスコミ関係者でなくても分かる話だが、高額アルバイト詐欺の場合、「日給5〜8万円」などと大きな金額で釣り、思考力を奪うところもある。

今回の詐欺では、発端のXアカウントがそもそも怪しいという点もあった。中国名のアカウントは、「若いときに誰かを好きになったなら、思いっきり、その人を愛してくださいね」という意味の中国語文などとともに、セクシーなコスプレをした女性の写真が4度投稿されていただけ。

いずれの写真も同じ部屋、同じ衣装で撮られたもので、5月2〜5日の投稿のみ。いかにも急造アカウントといった風で、それを見ればかなりの怪しさは伺える。

しかし、こうした未熟な点も年々、精度を高めていっているのが昨今の詐欺グループ。「こんなのに引っかかる人がいるのかよ」と言っている人が、あとに罠にハメられた、ということもあるので注意が必要だ。

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