スーパーユーザーが明かす先進補聴器のフル活用術、通信系エンジニアの毎日は快適
先進補聴器のコネクティビティ機能を使いこなす“スーパーユーザー”は、どのような補聴器ライフを送っているのか――。「難聴万博2024」で4月14日に開催となったリアル講演会のトークセッションでは、先天性感音難聴者の井上晶雄氏が、オーティコンの先進補聴器の便利機能を活用して通信系エンジニアとしての毎日を快適に過ごせていると語った。また、講演セッションでは医療の専門家2人が「高齢者の難聴と補聴」と「認知症診療」のテーマでレクチャーをしている。
難聴万博は、難聴に関する最新の情報を広く伝えることを目的に人工聴覚情報学会が2022年に始めた医療系のイベントである。3回目となる難聴万博2024は、2024年3月3日(耳の日、国際的にはWorld Hearing Day)から4月28日までの日程で、インターネット上のメタバース空間で体験できる16種類のコンテンツのほか、リアル講演会も2回開催された。
その2回目のリアル講演会が東京医科大学病院9階の臨床講堂(東京・西新宿)で開かれたのは、4月14日の午後。主催者の眞野守之氏(人工聴覚情報学会・代表理事)は、開会挨拶で「補聴について正しく理解し、聞こえにくさを放置しないでいただくための勉強会として、このリアル講演会を企画した」と開催の意義を説明した。対面の会合ならネットに詳しくない人でも情報への直接アクセスが容易になる、と眞野氏はいう。
難聴万博2024に協賛しているデマント・ジャパンは、世界的な聴覚ヘルスケアグループ、デマントの日本法人で日本では、補聴器3ブランド(オーティコン補聴器、バーナフォン補聴器、フィリップス補聴器)を展開している。このリアル講習会では、オーティコン補聴器の装用者である井上晶雄氏(会社員)をゲストにお招きし、同社の高井瑠美氏(コンタクトセンターマネージャー)が「スーパーユーザーに聞く先進の補聴器ライフ」「先進補聴器のフル活用術」というタイトルでお話を聞く形でトークセッションを行った。
補聴器は聞こえをサポートするだけでなく、難聴の方の暮らしがより便利になるようにさまざまな機能が搭載されているが、その機能を十分に使いこなしている方はあまり多くはいないという。そうした中、井上氏は先進補聴器の機能をフル活用し、さらに工夫を凝らし、より便利に快適に使用されているという。そんな井上氏を、高井氏は「スーバーユーザー」と紹介した。先天性感音難聴である井上氏が補聴器を使い始めたのは、3歳頃とのこと。子どものころから、現在まで、「スーパーユーザー」はどのような補聴器ライフを送ってきたのか、興味深いトークセッションとなった。
井上氏の“スーパーぶり”は、セルフアドボカシー(自己権利擁護)によって自己のコミュニケーションスタイルを築きあげてきたことにも表れている。「元々はふさぎ込みがちな子どもだったが、カナダに語学留学した高校2年の夏に、『こういう場面では聞こえない』『このようにすれば聞こえる』と周囲の人に適切に説明することが大切だと気付いた」と井上氏。その後は、大学の学生生活でも、通信系エンジニアとしての仕事の現場でも、自分が何を必要としているかを周囲にきちんと伝えることによって、必要な協力と配慮を引き出せているという。
まず、そもそもの補聴器選びについて、井上氏は「結婚相手を選ぶときのように慎重であれ」と勧める。メーカーや機種によって音質や聞こえ方はさまざまなので、どれが自分にあうのかを1週間から2週間程度は試聴してみないと本当の使いやすさは分からないという。「いろいろな製品を試してみて、疲れにくいな、と感じたのが当時手に取ったオーティコンの補聴器だった」と語る。
また、最近の補聴器には多種多様な機能が備わっているので、その中から自分の好みに合う機能や、生活に必要なものを選び出すことも重要だ。「自分の場合は、スマホのiPhoneと補聴器をBluetoothで常に連携させるMade for iPhone(MFi)機能を毎日フルに活用している」と井上氏。電話や音楽を補聴器で聞くことができるのはもちろん、玄関インターフォンの呼び出し音も補聴器に届くように補聴器のアプリとは別に専用のアプリも活用し、宅配便を確実に受け取れるようにしているという。
また、「お気に入りの機能は?」との高井氏の問いに、井上氏は補聴器をさまざまなデバイスとBluetoothで接続できるコネクトクリップや、補聴器から入る音を簡単に調節できるサウンドイコライザー、スマートフォンなどのデバイスから補聴器に音声や音楽をストリーミングされる音を調節できるストリーミングイコライザー、ミュート機能などを挙げる。コネクトクリップはリモートマイクとしても使えるので、セミナーなどでスピーカー(話者)の胸元に付けてもらえば情報保障に効果的だ。サウンドイコライザーとストリーミングイコライザーは、補聴器の出力レベルを低音・中音・高音の3つの音域で調節できる機能だ。「ミュートを使うと外部の音を瞬時にシャットアウトできるので、仕事やなにかに集中したいときに愛用している」と井上氏はいう。
そのほか、電池交換が不要な充電式補聴器は「地球に優しくてサステナブル」(井上氏)。ポータブル電源を携帯すれば、電源がないところや旅行先でも補聴器を安心して使えるという。生活のシーンに応じて補聴器を付け外ししている人に井上氏が勧めるのは、オーティコンCompanion(コンパニオンアプリ)の「補聴器を探す」機能。「どこかに置き忘れても探しやすいので、自分の祖父母が補聴器を使うようになったら、ぜひこの機能を勧めたい」(井上氏)とほほ笑んだ。
この日のリアル講演会では、医療の専門家による2本の講演もあわせて行われた。西山信宏氏(東京医科大学・臨床准教授)は「高齢者の難聴と補聴」と題して、加齢性難聴と認知症の関係や治療法(補聴器、人工内耳)をレクチャー。清水聰一郎氏(東京医科大学・主任教授、認知症疾患医療センターセンター長)の講演「これからの認知症診療」では、認知症とはどのような病気であるのかについて説明しつつ、認知症の一つであるアルツハイマー病には新しい治療薬も登場して保険適用になったことも紹介した。
リアル講演会を締めくくるにあたって、眞野氏は「これからも、難聴と補聴について専門家の方から話を聞く機会を設けていきたい」と強調。ぜひ、正しい情報をつかんで難聴に正しく対処してほしい、と結んだ。
●補聴万博2024のリアル講演会に補聴器のスーパーユーザーが登壇
難聴万博は、難聴に関する最新の情報を広く伝えることを目的に人工聴覚情報学会が2022年に始めた医療系のイベントである。3回目となる難聴万博2024は、2024年3月3日(耳の日、国際的にはWorld Hearing Day)から4月28日までの日程で、インターネット上のメタバース空間で体験できる16種類のコンテンツのほか、リアル講演会も2回開催された。
その2回目のリアル講演会が東京医科大学病院9階の臨床講堂(東京・西新宿)で開かれたのは、4月14日の午後。主催者の眞野守之氏(人工聴覚情報学会・代表理事)は、開会挨拶で「補聴について正しく理解し、聞こえにくさを放置しないでいただくための勉強会として、このリアル講演会を企画した」と開催の意義を説明した。対面の会合ならネットに詳しくない人でも情報への直接アクセスが容易になる、と眞野氏はいう。
難聴万博2024に協賛しているデマント・ジャパンは、世界的な聴覚ヘルスケアグループ、デマントの日本法人で日本では、補聴器3ブランド(オーティコン補聴器、バーナフォン補聴器、フィリップス補聴器)を展開している。このリアル講習会では、オーティコン補聴器の装用者である井上晶雄氏(会社員)をゲストにお招きし、同社の高井瑠美氏(コンタクトセンターマネージャー)が「スーパーユーザーに聞く先進の補聴器ライフ」「先進補聴器のフル活用術」というタイトルでお話を聞く形でトークセッションを行った。
補聴器は聞こえをサポートするだけでなく、難聴の方の暮らしがより便利になるようにさまざまな機能が搭載されているが、その機能を十分に使いこなしている方はあまり多くはいないという。そうした中、井上氏は先進補聴器の機能をフル活用し、さらに工夫を凝らし、より便利に快適に使用されているという。そんな井上氏を、高井氏は「スーバーユーザー」と紹介した。先天性感音難聴である井上氏が補聴器を使い始めたのは、3歳頃とのこと。子どものころから、現在まで、「スーパーユーザー」はどのような補聴器ライフを送ってきたのか、興味深いトークセッションとなった。
井上氏の“スーパーぶり”は、セルフアドボカシー(自己権利擁護)によって自己のコミュニケーションスタイルを築きあげてきたことにも表れている。「元々はふさぎ込みがちな子どもだったが、カナダに語学留学した高校2年の夏に、『こういう場面では聞こえない』『このようにすれば聞こえる』と周囲の人に適切に説明することが大切だと気付いた」と井上氏。その後は、大学の学生生活でも、通信系エンジニアとしての仕事の現場でも、自分が何を必要としているかを周囲にきちんと伝えることによって、必要な協力と配慮を引き出せているという。
●スマホ連携は補聴器に必須の機能、イコライザーやミュートも便利
まず、そもそもの補聴器選びについて、井上氏は「結婚相手を選ぶときのように慎重であれ」と勧める。メーカーや機種によって音質や聞こえ方はさまざまなので、どれが自分にあうのかを1週間から2週間程度は試聴してみないと本当の使いやすさは分からないという。「いろいろな製品を試してみて、疲れにくいな、と感じたのが当時手に取ったオーティコンの補聴器だった」と語る。
また、最近の補聴器には多種多様な機能が備わっているので、その中から自分の好みに合う機能や、生活に必要なものを選び出すことも重要だ。「自分の場合は、スマホのiPhoneと補聴器をBluetoothで常に連携させるMade for iPhone(MFi)機能を毎日フルに活用している」と井上氏。電話や音楽を補聴器で聞くことができるのはもちろん、玄関インターフォンの呼び出し音も補聴器に届くように補聴器のアプリとは別に専用のアプリも活用し、宅配便を確実に受け取れるようにしているという。
また、「お気に入りの機能は?」との高井氏の問いに、井上氏は補聴器をさまざまなデバイスとBluetoothで接続できるコネクトクリップや、補聴器から入る音を簡単に調節できるサウンドイコライザー、スマートフォンなどのデバイスから補聴器に音声や音楽をストリーミングされる音を調節できるストリーミングイコライザー、ミュート機能などを挙げる。コネクトクリップはリモートマイクとしても使えるので、セミナーなどでスピーカー(話者)の胸元に付けてもらえば情報保障に効果的だ。サウンドイコライザーとストリーミングイコライザーは、補聴器の出力レベルを低音・中音・高音の3つの音域で調節できる機能だ。「ミュートを使うと外部の音を瞬時にシャットアウトできるので、仕事やなにかに集中したいときに愛用している」と井上氏はいう。
そのほか、電池交換が不要な充電式補聴器は「地球に優しくてサステナブル」(井上氏)。ポータブル電源を携帯すれば、電源がないところや旅行先でも補聴器を安心して使えるという。生活のシーンに応じて補聴器を付け外ししている人に井上氏が勧めるのは、オーティコンCompanion(コンパニオンアプリ)の「補聴器を探す」機能。「どこかに置き忘れても探しやすいので、自分の祖父母が補聴器を使うようになったら、ぜひこの機能を勧めたい」(井上氏)とほほ笑んだ。
●医療専門家の講演セッションでは難聴と認知症の関係をレクチャー
この日のリアル講演会では、医療の専門家による2本の講演もあわせて行われた。西山信宏氏(東京医科大学・臨床准教授)は「高齢者の難聴と補聴」と題して、加齢性難聴と認知症の関係や治療法(補聴器、人工内耳)をレクチャー。清水聰一郎氏(東京医科大学・主任教授、認知症疾患医療センターセンター長)の講演「これからの認知症診療」では、認知症とはどのような病気であるのかについて説明しつつ、認知症の一つであるアルツハイマー病には新しい治療薬も登場して保険適用になったことも紹介した。
リアル講演会を締めくくるにあたって、眞野氏は「これからも、難聴と補聴について専門家の方から話を聞く機会を設けていきたい」と強調。ぜひ、正しい情報をつかんで難聴に正しく対処してほしい、と結んだ。