8回、四球を選んだ林を出迎える新井監督=28日

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 「広島2−1オリックス」(28日、マツダスタジアム)

 広島が接戦を制して、今季初めてセ・リーグの首位に立った。開幕直後に新外国人が故障離脱し、戦力が整わないと予想されていた中、チームの勢いの源はどこにあるのか−。広島、阪神、オリックスで指導者を歴任したデイリースポーツ評論家・岡義朗氏は「矢野の成長が一番大きな要因」と分析する。

 矢野は開幕直後こそ守備&代走での出場だったが、スタメンでの出場機会を増やし、ゴールデンウイーク明けから二遊間で固定された。菊池に勝るとも劣らない広い守備範囲だけでなく、力強いスローイングは思わず目を引く。岡氏は「入ってきたころからとにかく肩が強かった。それが出場を重ねて経験と自信をつむことで、すごく成長していると思う。菊池と2人で流れを持ってくるような守備をしているよね」と評した。

 ではなぜ、矢野の成長が好影響をもたらしたのか。「本当に守備だけでお金がもらえる選手。あれだけの守備をしてくれると、投手陣のメンタルがだいぶ楽になるよね。ランナーを背負っても菊池との二遊間なら確実にゲッツーをとってくれる。それはすごく大きい」と投手心理をメリットの一つに挙げた上で「ベンチの起用法にもマッチしてきている」と分析する。

 「打線は当初、外国人がいなくて迫力がないと言われたけど、接戦に持ち込めば生きるような選手がカープにはそろっている。代走の羽月であったり、小園の勝負強い打撃であったり。突き放されるようなゲームがないでしょ?それはセンターラインの守りがしっかりしていて、投手陣も踏ん張れるから。そこでワンチャンスを逃さないように勝ちきる。今のカープが最大限の力を発揮できる野球になっているよね」

 5月を迎える前、独走態勢に入りつつある阪神を負うのは広島&巨人と指摘していた岡氏。交流戦に入り、セ・リーグでは阪神を含めた3強となっている。その際に新井監督がチームのモチベーションを高めていく采配を要因に挙げていたが「新井監督が選手を『家族』と称して背中を押してあげる。確かに最初は失敗もあったかもしれないけど、勝利を重ねることによって成長しているように感じるよね。末包、林にも『こんな対応ができるようになった』というシーンが多い。監督の期待、思いに選手が応えられるようになってきた。そしてチームの形ができてきた。これは好循環の良い例だと思う」と評した。

 「現状、阪神を追う一番手というか、今後、台風の目になってくるでしょう。今は阪神が足踏みをしている中、投打の歯車が噛み合いだしたら勢いが出てくる可能性がある。ただカープも地力をつけてきている。阪神からすれば一番、警戒しなければいけないチームになっていると思う」と語り、「今年は守備が大事になると思う。だからこそ矢野は使い続けないといけないと思うし。彼の存在がカープの野球の形を作ったと感じる」と評していた。