◆配膳ロボットの時給を計算すると驚きの…

 オペレーションですが、ワンカルビも他のファミレスチェーンと同様に、限られた人材の有効活用のために、配膳ロボットを活用しています。顧客は他業種と比べ高い粗利益率(65%程度)の外食には、美味しく価値ある料理や真心あふれる接客を求めているはずですが、今の外食を取り巻く労働力環境では、人による付加価値向上は厳しい状態です。人とロボットの効果的な組合せで、その店ならではの価値を提供する方が得策でしょう。

 配膳ロボットをリース提供するUSENによると、標準ロボットで月額リース料は3万3250円、1日12時間×30日稼働で時給92円となるそうです。賃上げ機運が高まる中、各都道府県の最低賃金は上昇しています。大阪の最低賃金は1064円で、それをクリアした賃金程度では、アルバイトは集まりません。

 感情がなくシフト管理も容易で、充電すればフル稼働が可能で、お客さんも和ませてくれます。従業員の接客態度でクレームが発生することも多いですが、ロボット相手ならそういうこともないでしょう。人と機械をうまく組合せて最適なオペレーションの確立が必要ですね。これからは、機械化・自動化・省力化はやむを得ないですから、効果と効率をよく考えてやってもらいたいと思います。

外食チェーンの調理システムの基本

 外食チェーンは基本的に、コックレスの調理設計を前提にして、ローコスト・オペレーションを確立しています。コックレスとは、熟練コックがいなくても調理が可能という意味であり、技術的に未熟なスタッフでも提供可能な調理システムを構築することを目的にしています。

 技術やノウハウを習得した料理人が中心の厨房の現場から、食材の調理の一部をセントラルキッチンにアウトソースし、店の厨房作業を軽減化、効率化するのです。また、同時にこれに伴った原価管理やロスの削減などのプラスの効果も得られ、低価格で販売しても利益が確保できるシステムを確立するのです。

 ローコスト・オペレーションが、実現できているから、美味しい焼肉をリーズナブルな価格で食べられるのです。熟練コックさんと外食大手が目指すチェーンオペレーションとは、方向性が合致しにくく、経営陣からしたら使い勝手が悪いのも事実です。そういう点からは、人への依存から感情を持たず使いやすいロボットのほうがいいかもしれないですね。

 30年続いたデフレも終焉の気配を見せ、最近の賃上げや物価高騰などコスト・プッシュ型のインフレで店側が値上げしてもお客さんに容認されつつあります。この機会に値上げしたら競合店に顧客を奪われるといった不安を払拭し、自店の費用構造を見直して利益を確保できる仕組みの確立をして欲しいものです。

◆今後の焼肉店はどうなるのか?

 一般的に、焼肉業態は、初期投資額は他の業態と比較すると高額ですが、客単価が高く利益率が高いので、投資回収が早めです。この特性を踏まえたうえで適切な戦略を策定したお店が生き残るのだろうと思います。

 現在は、コスパ重視の焼肉チェーンの多くが、タッチパネルのオーダーシステム・配膳ロボット・セルフレジなどを活用し、省人化投資を競い合っている状態です。普通、あまり追加すると客側も遠慮して店員さんに追加をお願いしにくいものですが、タッチパネルによる追加と配膳ロボットによる商品提供で、店員さんを介さずに好きなだけ食べられるのは、店は大変ですが、お客さんにとっては嬉しいことですね。

 筆者が経営している時、他の焼肉店でアルバイトをしていた学生を採用して聞いた話ですが、その店では店員を呼んで追加オーダーをする際、追加注文を重ねると要注意テーブルに指定され、それを従業員間で共有して、それ相当の対策を講じていたと聞きました。