牛豚肉などの調達力が強みの会社ですが、多種多様な業態を開発し、顧客ニーズの探索と最適な業態開発を懸命にされている企業イメージもあります。1人客をターゲットにした1人焼肉店も出店しており、ファミリー客をターゲットにしているワンカルビとは一線を画し、市場の棲み分けをしているようです。

 焼肉チェーン店は大量仕入れによるコストダウンでお客様に安くお肉を提供できるという強みがあります。もちろん、希少部位においては大量に確保しようと思えば、逆にコストが上がってしまうこともありますが、大概はその利益を享受できるものです。ワンカルビは精肉店直営の焼肉店ならではの、安くて美味しいお肉の提供といった強みをいかんなく発揮していると思います。精肉店も経営しているから肉の購買でスケールメリットがあるのは当然ですね。

◆白米を頼むのはお店側の思うつぼ?

 外食は快適な雰囲気も大切ですが、ワンカルビはゆっくり会話を楽しめるように、半個室の空間になっており、内装は高級感を感じさせる和テイストにまとめています。今の時期であれば、入学・卒業などのお祝い事など、ハレの場にぴったりのお店です。

 食べ放題コースも、3つのコースが用意されており、お手軽コース3480円(税込3828円)、全品コース3980円(税込4378円)、塩タン+全品コース4380円(税込4818円)があります。今回は一番上の塩タン+全品コースを紹介致します。

 メニュー内容を見ると、タン(6種類)、牛焼肉、ステーキ、鶏豚肉、ホルモン、前菜、逸品、サラダ、スープ、麵飯類など全87品目をバランスよく構成されていました。これだけの料理を無制限に食べられて、物価高の中で、この価格はおかしくないかとお客さんが疑ってしまうような内容です。

 また、これが食べ放題のお肉かと思うほど柔らかいお肉です。もみダレでしっかり揉んでいるので濃い味になっており、白米がよく合いますから、白米好きにはたまりません。すごい勢いでお替りする人が多いですね。

 筆者は元焼肉食べ放題チェーンの経営者ですが、白米の原価は低く、白米は別腹と豪語する人でも食べられる量には限度がありますから、お肉の追加が減るのは当然です。お店はラッキーと思っているはずです。

◆サイドメニューを頼むお客はありがたい?

 加えて、お口直しでお肉以外の追加も増えて、単品であれば、15〜20%の低原価商品であるキムチ・サラダ・スープ・ホルモンなどにオーダーが集まれば、より一層、お店の利益は上がります。牛肉に飽きて食感や味の変化を求めて、豚ロース・豚カルビ・鶏モモなどもよく注文されており、お店にとっては原価も低いから助かります。

 お客さんも牛肉だけでなく、いろいろな部位やサイドメニューが食べられ、トータルでの満足感が増します。お客さんも店側も利益を享受し合える、良好な関係が構築できればいいですね。

 ワンカルビでは、一品料理・サラダ系・麺飯類、デザートなどといったサイドメニューにも力を入れており、季節ごとに旬の食材を入手し、その時々の絶品メニューを提供しています。それらが絶妙な来店動機になり、何回通っても飽きのこないメニューの豊富さは、ワンカルビのこだわりとのことでした。

 これだけ内容に価値ある焼肉食べ放題を、リーズナブルな価格で、提供できる仕入・調理・提供の仕組みは大したもので、さすがは精肉店直営の焼肉と思います。

◆頼まれると困る?調達が難しい焼肉の部位

 焼肉の中でも、塩タンは売れ筋で好きな人は多いです。しかし、タンは牛から一本しか取れない希少部位ですから、調達も容易ではありません。喉元になるほど鮮やかなサーモンピンクになり、タン先になると赤みを増してきます。一般的には喉元のサーモンピンク側を上塩タンとして提供し、赤みが増したタン先を並タンとして使い分けします。塩タンを追加し過ぎるとタンの色が赤くなる店が多いですね。