鹿児島読売テレビ

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 鹿児島は、和牛日本一になったものの消費が伸びないなど畜産業は課題を抱えています。そんな中女性の視点を大事にしながら業界を盛り上げようと取り組む畜産農家を取材しました。ボーナスは牛1頭なんだそうです。

(永田アナウンサー)
「大隅半島にやってきました。大隅半島は鹿児島の中でも畜産業が盛んな地域なんです」

 鹿屋市串良町にある美由紀牧場。2004年に創業し580頭の牛を育てています。

(永田アナウンサー)
「実は美由紀牧場の従業員はほとんどが女性なんです」

 従業員4人のうち3人が女性なんです。

 美由紀牧場を経営する上別府美由紀さん42歳。地元の鹿屋農業高校の畜産科で学び、横浜の短大に進学。実家は代々畜産業で、20歳の時鹿児島に戻り父親が経営する牧場を手伝いました。亡くなった祖父の言葉がきっかけだったといいます。

(上別府美由紀さん)
「これから絶対牛の時代になるからかえってこいお前は牛が向いているからと言ってて祖父は体調も悪かったし卒業したらいったん帰ってこようと」

 父の牧場を手伝いながら畜産を勉強。23歳で独立しました。

(上別府美由紀さん)
「何で女性がいないんだろう少ないなと思った。就農資金をあげても女性だから結婚してすぐやめたらどうするんだとか意見もあった。女性ってそういう風に思われているんだと思って自分がやって認めてもらうしかないと思って始めた」

 独立から20年。女性の視点を大事にしながら規模拡大を図ってきました。

 鹿児島の畜産のレベルはどんどん上がり、2022年に開かれた和牛オリンピックでは、日本一になりました。

 しかし。

(上別府美由紀さん)
「日本一をとったがその割には元気がない。コロナもあって外食が進まなかったりイベントが少なくなって肉の消費が増えてない。えさ代が高くなって大変しかみんな言わない。始めたころよりは倍くらい上がってる。餌が高くて牛は安い」

 ロシアによるウクライナ侵攻の影響で餌代が高騰。さらにあらゆる物価の高騰で消費者の財布のひもが固くなり特に和牛の消費が落ち込んでいるんです。

 経営が厳しい畜産農家が多い中、「女性の力で畜産を盛り上げよう」と取り組んでいるのが?

(永田アナウンサー)
「あれは何ですか?」
(上別府美由紀さん)
「電動キックボードです」

 なんと牛舎内の移動は電動キックボード。

(永田アナウンサー)
「楽しい。これなら楽々移動できますね」

 これで、広い牛舎内も素早く牛の様子を確認しに行けます。

(永田アナウンサー)
「エンジンの音が聞こえてきました。ホイールローダーを乗りこなしています」

 ホイールローダーを慣れた手つきで操作し、えさやりをします。

 また最新の技術も取り入れています。出産を遠隔で管理、破水などの情報もスマートフォンに届くシステムで安心して管理できると言います。

 上別府さんが目指すのは「大変」「汚い」という畜産のイメージを変え女性も楽しく働ける環境づくり。

(永田アナウンサー)
「皆さんおしゃれですよね」

(従業員)
「やったーえーそうかな。テンションあがるネイルをしていたら」

(上別府美由紀さん)
「ボーナスが出たので自分にいっぱい使ってる」

 その、ボーナスとは。

(永田アナウンサー)
「美由紀牧場のボーナス、実は牛1頭なんです」

 仕事へのやりがい興味を持ってもらおうと牛をボーナスにしているんです。

(上別府美由紀さん)
「汚いイメージもあったので見た目で牛飼いとばれなくない思いもあってどこに出かけるにしても身だしなみをちゃんとしたりネイルしたり見た目から変えて行こうと思った。高校生の時は家が畜産と恥ずかしくて言えなかった堂々と畜産していると言える職業に変えたい」

(永田アナウンサー)
「これからの鹿児島の畜産はどんな風になっていってほしい」

(上別府美由紀さん)
「鹿児島は畜産県なのでそこを基に全国つながっていきたいし鹿児島のみんなで盛り上げていって鹿児島から元気を送れたら」

 和牛日本一の鹿児島。その財産を守りつないでいくために上別府さんたちは女性の力で畜産を盛り上げます。

(内 田キャスター)
「ボーナスが牛一頭なんて聞いたことないんですけど」

(永 田アナウンサー)
「そうなんですよ。せりに出してその売れた額がボーナスとしてもらえるんです。牛の価格が上がれば上がるほど、従業員のボーナスも上がるということなんです」

(内 田キャスター)
「それは仕事への意欲が出てきそうですね」