アメリカはストックのレースが大好き!

カワサキといえば、アップハンドルのネイキッド・スポーツに「ローソン・レプリカ」という独自のジャンルを持つ。
空冷1,000ccクラスの時代からZRX1100~ZRX1200DAEGまで、実に30年以上もカワサキのブランドイメージの一角を成し、1994年から400ccクラスにもZRXとして存在した。

この人気を支えた大きな理由は、アメリカに強いカワサキらしくモータースポーツの熱さを巧みに誘導できたからに他ならない。
アメリカにはパフォーマンスでいえば有名なインディー・カーという最高峰カテゴリーがあるが、実は観客動員数では圧倒的に上回るNASカー(昔はストックカー・レースとも呼んだフツーの乗用車を改造するカテゴリー)がファン層の広さを含めトップに君臨しているのだ。

その人気はNASカー・ドライバーがタレント扱いでTVのバラエティ番組の常連だったりと、庶民の中に深く溶けた身近なカルチャーとして浸透しているほど。

カワサキも世界GPに先行する日本3メーカーに続き、250ccではタイトル獲得もしたがアメリカでの宣伝材料にはならずじまい。

そんなカワサキにとって絶好のチャンスがやってきた。
全米のレース連盟AMAが頂点クラスのスーパーバイクを、世界GPマシンとは一線を画すアップライトな市販スーパーバイクで競うレギュレーションとしたからだ。

ローソンのタイトル獲得から限定モデル販売、そしてローソン・レプリカの恒久化

カワサキはすかさず、Z1000Jをベースに改装したZ1000Rを市販レーサーとして発表。
このホモロゲ・バイクを駆るゼッケン21のエディ・ローソンがホンダのスペンサーを打ち負かしチャンピオンとなったのだ。

この機を逃さず1982年にZ1000R(KZ1000R1)を発売、ビキニカウルとKERKERの集合マフラー、さらには段差のついたシート、そしてもちろんライムグリーンのカラーがローソンレプリカの仕様として瞬く間に定着した。

その後1100シリーズではメジャーな機種として位置づけられたが、時代は水冷化へと移行してカウルに身を包んだパフォーマンスのスーパースポーツ、カワサキではNinja900に代表される世代へとバトンタッチ、アップハンドルのスポーツバイクはベーシックバイクとしての位置づけのやや地味な存在となった。

ZRX1100、ZRX1200と並んで400にZRXもラインナップ

しかしZ1をルーツに持つカワサキは、傍らでトラディショナルなZ系バリエーションをラインナップし続け、その流れの中で水冷系でもコンセプトをローソンレプリカを彷彿とさせるZRX(400)を1994年にリリース、1997年にはZRX1100と再びローソン・レプリカ路線が大きな位置を占めることになった。

ZRX(400)もZRX1100にしても、ビキニカウルや段差のついたシートの定番スタイルに加え、実はスイングアームにオリジナルのローソン・レプリカ同様に、パイプでトライアングルを組み、チェーン引きをエキセントリック方式としたスイングアームを装着、そのこだわりでファンを唸らせたのだ。

ZRX1100やZRX1200DAEGと同じように、いくつものカラーリングのバリエーションを展開しながら、400cc版のZRXも継続されていった。

そしてビキニカウルを外したZRX-IIもバリエーションとして加わった。

しかし厳しくなるいっぽうの排気ガス規制によって、ビッグバイク版のほうは燃料噴射へとモデルチェンジしたZRX1200DAEGで継続となったが、400cc版ZRXは2008年でその幕を閉じることとなった。

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