清少納言が表現した「春はあけぼの」はニュースタイルだった?
2024年のNHK大河ドラマ「光る君へ」の舞台は平安時代。
そんな時代に活躍したのが紫式部、清少納言、和泉式部、道綱母、孝標女の5人の女性作家たちだ。彼女たちも現代の女性たちと同じように、たくさんの悩みを抱えながら生活していた。
そんな女性作家たちの人生を紹介するのが『平安のステキな!女性作家たち』(川村裕子著、早川圭子絵、岩波書店刊)だ。新潟産業大学名誉教授の著者が、源氏物語や枕草子はなぜ書かれたのか、明るい枕草子の悲しい背景、作家同士の人間関係など、千年前の5人の女性作家たちの作品から王朝文学を解説している。
■「春はあけぼの」はニュースタイルだった
「春はあけぼの」のフレーズがお馴染みの『枕草子』を書いたのが清少納言だ。『枕草子』は現代の言葉で言えばエッセイ。清少納言は日本のエッセイストのさきがけともいえるだろう。
『枕草子』には、当時の人たちも驚くさまざまな新しさがあった。当時、春といったら普通は桜や霞の組み合わせが定番だったが、それを言わないで「春はあけぼの」としたところが当時からするとニュースタイルだ。
『枕草子』では春だけでなく、「夏→夜」「秋→夕暮」「冬→早朝」と、夏だったらほととぎす、秋だったら紅葉、冬は雪といった「季節の定番ワード」を使わない。これらのポイントは「時間」だ。
春は「夜明け」のほのぼの明けていく山の周辺、夏は「夜」の暗がりで光るホタル、秋は「夕暮」のからすや虫の大合唱、冬は「早朝」の雪や霜、炭火の姿というように、「物」が先に出てこない。物ではなく、「時間」が季節の代表になっていて、めぐりくる季節を時間で切って見せたと著者は指摘するのだ。
■清少納言が新しい表現を使った理由とは?
では、なぜ清少納言は新しい表現を使ったのか。そもそも「春といったら桜」という定番は、伝統的な文学である和歌で使われて定着した。平安時代の貴族たちは皆、和歌を詠み、その中で桜や霞は春の必須ワードだった。
清少納言の父である清原元輔は有名な歌人であり、『後撰和歌集』という天皇の命令によって作られた歌集である勅撰集を選んだ一人。さらに元輔の祖父も清原深養父という歌人だった。
清少納言は「あの和歌の天才・清原元輔の娘」であり、メジャー歌人のファミリーとして、ありきたりの和歌では恥ずかしいと思った。なので、和歌を超えるものとして「春はあけぼの」という斬新な書き方をしたのだという。
◇
平安時代の5人の女性作家たちのライフストーリーを再現し、彼女たちの作品を新しい視線で見ていく本書。当時の女性作家たちが日々の生活の中で言葉を書き残したことを知ると、その作品も身近なものに感じられるようになるはず。王朝文学の入門書として、本書を読んでみてはどうだろう。
(T・N/新刊JP編集部)
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「春はあけぼの」のフレーズがお馴染みの『枕草子』を書いたのが清少納言だ。『枕草子』は現代の言葉で言えばエッセイ。清少納言は日本のエッセイストのさきがけともいえるだろう。
『枕草子』には、当時の人たちも驚くさまざまな新しさがあった。当時、春といったら普通は桜や霞の組み合わせが定番だったが、それを言わないで「春はあけぼの」としたところが当時からするとニュースタイルだ。
『枕草子』では春だけでなく、「夏→夜」「秋→夕暮」「冬→早朝」と、夏だったらほととぎす、秋だったら紅葉、冬は雪といった「季節の定番ワード」を使わない。これらのポイントは「時間」だ。
春は「夜明け」のほのぼの明けていく山の周辺、夏は「夜」の暗がりで光るホタル、秋は「夕暮」のからすや虫の大合唱、冬は「早朝」の雪や霜、炭火の姿というように、「物」が先に出てこない。物ではなく、「時間」が季節の代表になっていて、めぐりくる季節を時間で切って見せたと著者は指摘するのだ。
■清少納言が新しい表現を使った理由とは?
では、なぜ清少納言は新しい表現を使ったのか。そもそも「春といったら桜」という定番は、伝統的な文学である和歌で使われて定着した。平安時代の貴族たちは皆、和歌を詠み、その中で桜や霞は春の必須ワードだった。
清少納言の父である清原元輔は有名な歌人であり、『後撰和歌集』という天皇の命令によって作られた歌集である勅撰集を選んだ一人。さらに元輔の祖父も清原深養父という歌人だった。
清少納言は「あの和歌の天才・清原元輔の娘」であり、メジャー歌人のファミリーとして、ありきたりの和歌では恥ずかしいと思った。なので、和歌を超えるものとして「春はあけぼの」という斬新な書き方をしたのだという。
◇
平安時代の5人の女性作家たちのライフストーリーを再現し、彼女たちの作品を新しい視線で見ていく本書。当時の女性作家たちが日々の生活の中で言葉を書き残したことを知ると、その作品も身近なものに感じられるようになるはず。王朝文学の入門書として、本書を読んでみてはどうだろう。
(T・N/新刊JP編集部)
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