くしゃみには、鼻に入った異物を外に出す重要な働きがありますが、厳粛なお葬式や重要な会議の最中など、くしゃみをしたくてもなかなかできない場面があります。花粉症の男性がくしゃみを我慢した結果、激しい喉の痛みに襲われ、検査で気管に穴が開いていることが判明したという症例が、スコットランドのダンディー大学医学部の医師らによって報告されました。医師らは「くしゃみは我慢しないで」と呼びかけています。

Spontaneous tracheal perforation following a sneeze | BMJ Case Reports

https://casereports.bmj.com/content/16/12/e255633

In world's 1st known case, man tears windpipe from holding sneeze | Live Science

https://www.livescience.com/health/in-worlds-1st-known-case-man-tears-windpipe-from-holding-sneeze

世界最大の医学症例リポジトリ・BMJ Case Reportsで紹介された今回のケースは、アレルギー性鼻炎を患っている30代の男性が、自動車を運転中にくしゃみを我慢したところ、気道に2ミリほどの小さな穴が開いてしまったというもの。男性は運転中にくしゃみを我慢するため、鼻をつまんで口を閉じましたが、これが気道に強い圧力をかけることになりました。



首の激痛で病院を訪れた男性を医師が診察したところ、触診で首の両側の腫れや可動域の減少が確認されたほか、パチパチという異音「クレピタス」も聞こえました。

しかし、内視鏡では異常が見つからなかったため、医師たちがX線検査とCTスキャンを行ったところ、気管に2mm×2mm×5mmの小さな穴が開いていることが判明しました。また、気管から漏れた空気がのどの組織にたまってしまっていることも確かめられました。

以下が実際のCTスキャンの写真で、白い矢印が男性の喉に開いた「気管裂傷」、黄色い矢印が空気がたまっている「外科的気腫」です。



一般的に、くしゃみをしたときに上気道にかかる圧力は1〜2kPaですが、口と鼻がふさがった状態だと圧力は最大で20倍に達します。症例報告をしたダンディー大学医学部のRasads Misirovs氏らは、検査で見つかった裂傷の原因は「くしゃみを我慢しようとした時に気管に急激な圧力がかかったこと」だと結論づけました。

気管裂傷で呼吸不全になったり気腫が進行したりする場合は手術が推奨されますが、男性は幸いにも軽傷だったので、痛み止めとアレルギー性鼻炎用の薬で様子を見ることになりました。また、男性は少なくとも2週間は激しい運動をしないよう指示されました。

5週間後に男性が再びCTスキャンを受けたところ、裂傷はなくなっていたとのことです。

過去には、同様に鼻と口を閉じてくしゃみをしたことで咽頭に穿孔(せんこう)が発生したことが報告されていますが、「くしゃみによる気管の穿孔は我々の知る限りこれまで報告されたことがありません」と、Misirovs氏らは記しています。

くしゃみを我慢して喉が破裂した男性が報告される - GIGAZINE



by quinn norton

Misirovs氏らは、今回の症例から得られた教訓として、「口を閉じ、鼻をつまんでくしゃみをすると、気管穿孔が引き起こされる可能性があるため、すべての人にくしゃみを我慢しないよう忠告するべきです」と述べました。