大戸屋の朝定食は、全国で5店舗のみで提供されるレアメニューです(筆者撮影)

喫茶店やレストランが、朝の時間帯にドリンクやトーストなどのメニューを割安価格で提供するモーニングサービス。名古屋の喫茶店が始めた文化とされていますが、最近では大手外食チェーンも数多く提供しています。

そんなチェーン店の外食モーニングをこよなく愛するブロガー、大木奈ハル子さんがお届けする本連載。第38回となる今回、訪れたのは「大戸屋」です。

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ひそかに飲食チェーンがしのぎを削っているジャンル、それがモーニングです。集客の弱い時間帯である午前中の売り上げを強化すべく、朝の数時間だけ提供される限定メニューの数々は、コスパ抜群かつ店の特色が強く表れ、どれも魅力にあふれています。

カフェやハンバーガーショップ、おそば屋さんなどはもちろんのこと、最近では焼肉店やラーメン店などでも独自のモーニングメニューを提供しています。

朝メニューは1種類のみを日替わりで提供

今回は「大戸屋」の朝食メニューをご紹介します。国内で300店舗以上を展開する和食チェーンで、豊富な定食メニューが特徴のお店なのですが、なんと朝メニューは日替わりで1種類のみ。それでもそこには「大戸屋」らしさが、ぎゅぎゅっと詰まっていました。

「大戸屋の朝ごはん」は税込800円で、ドリンクバー付きです。


訪れた店舗では、朝6時半から食べられるようです(筆者撮影)


非常にバランスのよい朝定食になっています(筆者撮影)

・あじ炭火焼きとひじき入り鶏つくねの朝定食
・さばともろみチキン炭火焼きの朝定食
・ほっけ炭火焼きと唐揚げの朝定食

以上の3種類のいずれかが、日替わりで提供されます。メニューは「大戸屋の朝ごはん」1種類のみで、通常メニューの販売はありません。

ドリンクバーはファミレス並みに充実

ごはんは、白米と五穀ごはんのいずれかを選択でき、無料で大盛りに変更することも可能です。ドリンクバーはコーヒーの他に、ソフトドリンク、紅茶のティーバッグなど、種類豊富に揃っていました。


ファミレス並みに充実したドリンクバー(筆者撮影)

販売は東京の一部店舗(フレッサイン新橋店、外苑前店、阪急大井町ガーデン店、浅草橋店、池袋東口店)のみとなっています。


コーヒーは容器を、カップか紙コップか選べるようになっていました(筆者撮影)

私が利用した店舗では、提供時間は午前6時半から10時で、ラストオーダーは9時半になっています。私が利用した店舗は10時で一旦店を閉め、11時から通常メニューを開始していました(※営業形態、販売時間、メニューの詳細は各店舗にご確認ください)。

大戸屋の朝ごはん「ほっけ炭火焼きと唐揚げの朝定食」800円


大戸屋の朝ごはん「ほっけ炭火焼きと唐揚げの朝定食」800円(筆者撮影)

この日の朝メニューは「ほっけ炭火焼きと唐揚げの朝定食」でした。店内入り口でメニューを確認し、ごはんの種類と量を選びます。先にレジにて会計を済ませると、5分ほどでテーブルに朝定食が運ばれてきました。

朝9時というのに、50席ほどの店内はほぼ満席です。お客はほぼ外国人で、店内はさまざまな言語が飛び交っていました。実は利用した店舗は、ホテルに入ったテナントとなっており、朝の食堂としても使用されているのです。


ぷりっとおいしいほっけの炭火焼き。大根おろしとの相性バツグンです(筆者撮影)

全員が同じメニューを注文するので、「調理時間を短縮するために、ある程度作り置きをしているであろう」と勝手に予想していたのですが、お皿にのったほっけはホカホカ、唐揚げはアツアツでした。どうもオーダー後か、もしくはごく少量ずつ調理しているようです。料理の温度から、作りたてを提供する「大戸屋」のこだわりをビシバシ感じました。

お盆の上には8品がズラリと並び、なかなか贅沢な眺めです。

・ほっけ炭火焼き
・唐揚げ
・ポテトサラダ
・小鉢
・大根おろし
・ごはん
・味噌汁
・漬物

「大戸屋」の魅力である、炭火で焼いた魚とカラッと揚がったフライ。そのどちらもがセットになっているのはうれしい。


朝から唐揚げを食べるのは、罪悪感がスパイスになり格別なおいしさです(筆者撮影)

ほっけはしっかりと脂がのっていてジューシーでした。表面は香ばしくカリッと、内側はふっくら。ぷりぷりっとした白身に、提供前にすり下ろすという、こだわりの大根おろしを添えてお口にインすると、炭火の香ばしさがふわりと広がります。

唐揚げはしっかり揚げの歯ごたえ強めの仕上がり。パリッとした食感で、噛むと肉汁がジュワー。鶏肉の味を楽しめるシンプルな味わいです。

お米、お味噌にもこだわっている


左が白米並盛り、右が五穀ごはん大盛り。なお、2人で訪れており、1人で2杯食べられるとかではないのでご注意を(筆者撮影)

ごはんは白米と五穀ごはんの2種類から選べます。朝帯に限った話ではないのですが、大盛りも無料サービスとなっています。白米は地産米にこだわり、土地に合ったお米を提供しているそう。同じコシヒカリブレンドでも、関東エリアは関東産、関西エリアは北陸産のお米を使用しています。五穀ごはんのぷちぷちとした食感と雑穀のもつ独特のうまみも魅力です。


調味料ブース。ふりかけのほか、しょうゆ、ソース、七味も大戸屋ロゴが入っている(筆者撮影)

テーブルに備え付けられている「ごまめしお」ふりかけで食べるのがお気に入りです。ごましおプラス、炒った大豆のクラッシュが入っていて、香ばしい歯ごたえと香りが癖になる味です。

「大戸屋」のホームページによれば、味噌汁も季節によって味噌を使い分けているそうで、一見すると「ちょっと豪華な朝定食」なのですが、店内調理に、素材選定、調理方法まで随所にこだわった、実は「大戸屋」の魅力がつまったメニューになっていました。

朝から体に優しい和食を食べる……そんな何気なくもステキな時間を過ごして、身も心もあたたまる朝となりました。


味噌汁の具はわかめのみ。ホームページによると、夏は信州合わせ味噌を使用しているそう(筆者撮影)

大戸屋はいまも店内調理にこだわっている

「大戸屋」は、2019年にお家騒動を発端として、「牛角」や「かっぱ寿司」「フレッシュネスバーガー」などを運営する「株式会社コロワイド」が、敵対的TOB(株式の公開買い付け)に乗り出したことが、テレビのニュースなどでも大きく取り上げられ、話題となりました。


2015年に創業者で社長の三森久実氏急逝をきっかけに、創業家と当時の経営陣によるお家騒動が勃発し、敵対的TOBに発展した(筆者撮影)

2020年にはTOBが成立。買収された当時は、コストダウンのために「大戸屋」の最大のウリでもある店内調理をやめ、セントラルキッチンを導入するという噂がまことしやかにながれましたが、2023年8月現在も「大戸屋」は、店内調理を継続しています。

また昨今の値上げもあり、価格設定は中価格帯ながら、同業他社と比較すると少し高めです。朝定食が税込800円、通常メニューだと、最安値の定食が税込890円で、主力価格帯は900円から1000円台前半となっています。

おいしさはそのままに、提供時間が短縮された印象

店内調理ということもあり、「大戸屋はおいしいけれど、提供まで時間がかかる」というのが、利用の際のネックだったのですが、コロワイドが買収してからは、調理場のオペレーションが大幅に改善したようで、おいしさはそのままに提供までの時間が短縮された印象です。

今回利用した店舗は、コロワイド以前は、人手不足かオペレーションが悪いのか、もしくはそのどちらもなのか、食べ終わった食事がテーブルに置きっぱなしになっているという光景がデフォルトだったのですが、最近はいつ行っても店内が片付いており、コロワイドの手腕の片鱗を、いち利用客として噛み締めています。

TOB以前から経営不信に陥っていた「大戸屋」ですが、お家騒動とコロナ禍を経て、ようやく回復の兆しが見えてきています。一見すると大きな変化はないものの、長所は残しつつ、欠点を改善しているようです。ここからの挽回が楽しみです。

編集部注:本記事に登場するメニューの価格は、すべて取材時点のものです。昨今の円安、原材料高騰などの影響を受けて価格が改定されている可能性があります。また、店舗によってモーニングの値段・内容は異なる場合があります。


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(大木奈 ハル子 : ブロガー・ライター)