安徽省阜陽市にある碧桂園のマンション(写真:CFoto/アフロ)

中国で売り上げトップを誇る不動産会社であり、これまで一度も債務不履行をしたことがない碧桂園(カントリーガーデン)で流動性危機が起きている。わずか2週間のうちに、中国の不動産市場で「恒大集団」以上のリスクと見られるようになった背景は? 中国の調査報道メディア「財新」がその詳細を解説する。

またもや中国で大手不動産会社の経営危機のニュースが広がった。

かつて長年トップセールスを誇り、非常に高い回転率で知られていた大手不動産デベロッパー・碧桂園は、8月10日夜に2023年1〜6月期財務報告の予測数値を発表。450億〜550億元(約9000億〜1兆1000億円)の最終赤字になる見通しを示し、「政府と管理当局の支援を求める」との一文も添えた。これは、同社自らが危険信号を公表したようなものだ。

碧桂園は、2022年に初の年間赤字を計上したが、その額はわずか29.62億元(約590億円)だった。今回の大幅な赤字について、碧桂園の莫斌(モー・ビン)総裁は「同社は設立以来最大の困難に直面している」と述べている。

8月上旬から噂は飛び交っていた

8月上旬から碧桂園に関するさまざまな噂が飛び交い始めていた。8月7日、「仏山市自然資源局の土地譲渡価格第1期分の早期支払いに関する督促状」という文書がネット上に出回った。それによると、碧桂園が所有する広東省仏山市南海区にある土地は、今年7月15日までに第1期分として13.7億元(約270億円)が支払われるはずだった。


本記事は「財新」の提供記事です

しかし、規定期間内に支払われなかったため、契約違反となった。仏山市自然資源局は、碧桂園の関連企業に対し、契約違反および契約不履行について連帯責任を負うことを要求した。また、この「督促状」には公印が押されている。

財新の取材に対し、仏山市当局は「文書の信頼性を繰り返し検証している」と答えるにとどまり、碧桂園は一切コメントしなかった。しかし公開情報によると、この「督促状」に記載されている土地取得時期、契約締結時期、関連する土地譲渡料と支払い時期などの情報はすべて公式資料と一致している。

この問題にはもう1つ特殊な点がある。仏山市順徳区は碧桂園の本社所在地でもあるのに、なぜこの時期に内部の問題が明るみに出たのか、だ。二者の間に亀裂が生じたのでは、と思わずにはいられない。

そして同日、碧桂園は自社で発行したオフショアドル建て債券2本の利子を期日までに支払えなかった。この2本の債券の規模は5億ドル(約720億円)で、利子は半年ごとに支払われるが、今回の未払い利子は2250万ドル(約32億円)に上る。さらに30日間の猶予期間があるが、その期限までに利子を支払うことができなかった場合は実質的な契約違反となる。

この2本の利子の額はそれほど大きくないため、市場では「碧桂園が利子を期日までに支払わないことは、同社が率先して債務再編に着手する可能性を示している」との見方も出てきている。

しかし、碧桂園にとって、さらに困難な日々はこれからやってくる。9月には39億元(約780億円)の私募債1本と34億元(約680億円)の公募債2本が支払期日を迎える。さらに2023年中に、碧桂園とその子会社である碧桂園地産と騰越建築は、合計185億元(約3700億円)の債券を支払う必要もある。

強制上場廃止になった、不動産会社も

危機に陥っているのは、碧桂園だけではない。

8月7日、かつて不動産売上高トップ20にランクインしたこともある陽光城集団(ヤンゴー・グループ)が正式に強制上場廃止になることが発表された。中国では、6〜7月にかけて不動産会社6社が取引関連の違反により強制上場廃止となった。

不動産業界に財務問題とは別の懸念もある。8月には商業用不動産開発大手・大連万達集団の高級副総裁、劉海波氏がほかの2部門の幹部とともに上海浦東の公安当局に連行された。万達に近い関係者は財新記者に対し、この3人が関与した事件はパートナー側が通報したもので、「他人の利益を奪った」「巨大な案件だ」と述べている。

債券市場の観点から現在、災難に見舞われているのはやはり碧桂園だ。

8月12日夜、碧桂園および子会社2社(碧桂園地産と騰越建築)はいずれも、社債償還取り決めに関する社債権者会議を開き、11本の社債が8月14日の取引開始日から取引停止されると発表した。

財新の統計データによると、取引停止前の碧桂園、碧桂園地産、騰越建築の内外債券は946億元(約1兆8900億円)近くに達し、このうちオフショア債券は約721億元(約1兆4400億円)、オンショア債券(資産担保証券を含む)は約225億元(約4500億円)であった。今回取引停止となった11本の債券の残り総額は157.02億元(約3100億円)で、いずれも2024年6月末に満期を迎えるか、プットオプションが実施される予定だ。

流動性危機は半月で急激に表面化

碧桂園の流動性危機はここ半月で急激に表面化し、投資と融資の双方が同時に財政難に直面し、資本市場では株式と債券の両方が下落した。

8月7日、内部の問題が明るみに出て、碧桂園は仏山市による土地譲渡料の支払いを迫られた。同日、碧桂園は、期間内にオフショアドル債2本の金利を支払うことができなかった。

8月10日、碧桂園に近い関係者によると、碧桂園のオンショア債は9月に集中的に支払われ、同社の手元資金では対応できないため、まずは延長を行い、その後オフショア債について考える可能性もあるという。

(財新記者:楊律、王娟娟)
※原文の配信は8月11日、14日

(財新編集部)