年齢を重ねるほど上がる「結婚難易度」。その理由について筆者が解説します(写真:KiRi/PIXTA)

結婚相談所の仲人たちの間でよく言われているのが、“年齢が若い人ほど、すぐに結婚を決めていく”ということだ。男性よりも女性のほうが、それは顕著に表れる。

仲人として婚活現場に関わる筆者が、婚活者に焦点を当てて苦労や成功体験をリアルな声とともにお届けしていく連載。今回は、歳を追うごとになぜ結婚が難しくなっていくのかを分析したい。

アラサー女性が結婚できる理由

仲人をしてきた肌感覚でいうと、20代や30代前半だと、前向きに婚活に取り組めば大抵の女性が結婚をしていく。

単純にこの年齢は、選べる候補者の数が多いというのもあるだろう。筆者の相談所では、25歳の女性が35歳の国家公務員の男性と成婚したことがあった。女性の歳が若ければ、10歳くらい歳が離れた男性を結婚相手として見ることができる。

ところが、女性が35歳になると、45歳の男性は選ばない。女性が40代、50代になると、プラス10歳は「そんなオジサンは嫌です」となる。歳が上がっていけば、候補になる男性の数は減っていくのに、さらにそこから縛りをかけて、年齢が近い結婚を望むようになる。

20代、30代前半の女性が結婚しやすいもう1つの理由は、確固とした結婚への理想や価値観が出来上がっておらず、考え方が柔軟で、人を好きになる恋愛スイッチがすぐに入るからではないか。

かつて筆者の相談室に、それまでまったく恋愛をしたことがないという、みわこ(30歳、仮名)が入会してきた。

彼女から恋愛を遠ざけたのは、小学校から大学まで女子校育ちだったということもあったようだ。

「リアルに出会って付き合う機会が極端に少なかったんです。大勢が集まる場所に行くと、積極的にしゃべったり自分をアピールしたりできるほうではなかったから、合コンとかもほとんど参加したことがなかったし」

そうして歳を重ねてしまったが、30歳になって急激に結婚を意識した。女子大時代の親友が結婚を決めたことも、気持ちを動かす大きなきっかけとなった。

そこで、筆者はこんなアドバイスをした。

「普通に生活をしていたら、恋愛できる異性、ましてや結婚の候補者になる男性には、なかなか出会えませんよね。出会えたとしてもせいぜい年に1人とか2人。でも、婚活なら、多い人ですと、1カ月に8人くらいとお見合いをしていますよ。まずは、異性と一対一でお会いして会話をする、その経験を積みましょう」

こうしてスタートした婚活だった。

初めてのお見合いで超緊張

初めてのお見合いは、新宿のホテルのティーラウンジだったのだが、筆者が立ち合いに行くと、みわこは顔を硬直させて待ち合わせの場所に立っていた。歯をガチガチ鳴らし、ショルダーバッグを持つ手も立っている足もブルブルと震えていて、その様子は尋常ではなかった。

「大丈夫? すごく緊張しているみたいだけれど、リラックスして、楽しむ気持ちでお見合いをしてきてくださいね」

スタートはこんな調子だったが、お見合いの回数を重ねていくうちに、男性と対峙して話をすることにも、次第に慣れていったようだ。

そして、活動から半年後。「今までお見合いで出会った人の中で、一番話が合うんです。一緒にいて私が自然体でいられます」というともや(33歳、仮名)に出会った。交際に入ってからも順調で、瞬く間に真剣交際に入り、成婚していった。

成婚退会をするときに、みわこはこんなことを言っていた。

「一緒にいる時間を重ねるほどに、ともやさんを好きになる気持ちが大きくなっています。これまで恋愛してこなかったのは、男性に嫌悪感があったからではなくて、恋愛をするのが怖かったというか、勇気が出せなかったからなんだなって思いました。婚活に一歩踏み出して、本当によかったです」

アイドルの“推し”はいたが、リアルな男性を好きになり、触れ合いを持ったのは初めてのこと。自分にリアルな男性を好きになる感情があったことを、ともやとの出会いで知った。

2カ月ほど前には、“秋にはママになります”という連絡があった。

これがアラフォー女性だとどうか。

実は婚活においては、アラフォーという年齢が一番難しい。出産をあきらめておらず、先にも記したが、そうした女性たちが望んでいるのは、なるべく年齢の近い男性。ところが、アラフォー男性は1歳でも年の若い女性と結婚したがっている。

出産望むアラフォーは苦難の道

婚活に疲れて退会していったみのり(41歳、仮名)も、結婚して出産することを望んでいた。

過去の恋愛模様を聞くと、しっかり関係を築き合う恋愛はもう10年以上していなかった。大学時代には付き合っていた同級生がいたが、就職してからはだんだんと疎遠になり、自然消滅。社会に出てからは、2年ほど付き合った男性もいたが、結婚には至らずに関係が終わった。

その後は、友達の紹介や飲み会などで新しい男性に出会うものの、1、2度食事に行くと、連絡が途絶える。結婚を意識して付き合えるような人には出会えないままに、30歳を超えた。

30代に入ると、自分が付き合いたいと思う相手との出会いが一気になくなった。声をかけてくるのは既婚者だったり、男性としては好きにならないタイプだったり。そこで、30代ではテーブルコーディネーター、フラワーアレンジメント、紅茶検定、マナー検定など、さまざまな資格をとることに明け暮れた。

「気がつけば、この歳でした。最後のチャンスに子どもも欲しいので、ここ1年くらいのうちに相手を見つけて結婚したいです」

こうして婚活をスタートさせたのだが、キチンと仕事をすることで会社からは評価をされ、さまざまな資格を習得して自分磨きをしてきたみのりは、男性を見る目がとても厳しかった。

バツイチのしんいち(44歳、仮名)との見合いを終えたときには、こんな断りの理由を言ってきた。

「写真と全然違う人が来ました。お腹も出ていて上頭部も薄くて、実年齢より10歳くらい老けて見えました。バツイチだから、かつては結婚していたということですよね。どんな女性が彼を選んだのでしょうか。あの人が一度は結婚できたのに、私ができないというのが逆にショックでした」

またお見合いから交際に入ったかずま(45歳、仮名)には、初デートを終えて“交際終了”を出してきた。終了の理由が、こうだった。

「レストランの振る舞い、食事のマナーがなってないんです。コース料理だったから、食器の上げ下げはお店の人がやってくださるのに、食べ終えた食器をテーブルの端に出すんですよ。お店の人が横を通ったら、『これ、片付けてください』って、大声で言うし。居酒屋じゃあるまいし、本当に恥ずかしかった」

さらに、活動して半年後には、こんなことを言った。

「実家暮らしの男性は、今後お見合いするリストから外そうと思います。これまでのお見合い経験でわかったことなんですが、実家で暮らしている男性って、自立していない。食事も洗濯も部屋の掃除も親まかせ。特に母親と息子の2人暮らしは、母親が甲斐甲斐しく息子の世話を焼いている。結婚したら、今度は私が母親代わりにされそうです」

結婚は、どういうことか。自分とは違う環境で育ってきた他人を受け入れ、価値観や考え方が違う部分は認め合う。そうして、信頼関係を築きながら生活していく……。

ところが、恋愛から何年も離れ、1日24時間を仕事と自分の時間として使ってきた女性は、自分の考えていることが正解で、それを物差しにして物事の良し悪しを判断しがちだ。だから、人を見る目も厳しくなる。

お見合いで出会っても、相手を批判して、相手の欠点を許したり受け入れたりはしない。粗探しばかりした結果、婚活に疲れてしまう。そして、婚活市場から去っていくことになる。

男性を好きになれない50代以上

では、50代以上の女性はどうか。

最近では、50代以上の婚活者が男女ともに増えてきているのだが、50代以上の女性においては、男性を好きになる恋愛スイッチがなかなか入らない人が多い気がしている。

女性は50代になると、結婚に男女の関係を求めるのは、二の次、三の次。それよりも男性の人間性や経済状況をじっくり見極めようとする。なかには「もういい歳をして、そんなことをするのは煩わしい」「お茶のみ友達が探せればいい」と言う女性もいる。

お見合い活動を始めて1年になる、とみえ(54歳、仮名)もまさに、そんなタイプ。公務員で収入が安定しており、見た目が若々しかったので、お見合いはスムーズに組めていた。50代になると、収入のない女性よりも確実な収入のある女性のほうが人気だ。

ところが、交際に入って3回、4回と回数を重ねて会っても、その先に進めない。

「『手をつなぎましょう』と言われたんですが、どうもその気になれなくて」「いい人だとは思うんですよ。でも、1つ屋根の下で暮らせるかというと、そういう気持ちにはならないんですよね」「『車で遠出しましょう』と誘われたのだけれど、車という狭い空間で2人きりになることを考えると、なんだか苦痛なんです」

交際に入った男性と会って、食事をしながら話をするのはいい。しかし、そこから一歩踏み込んだ関係を男性に迫られると、そこで踏みとどまってしまう。

なぜ踏みとどまってしまうかといえば、相手を異性として好きになっていないからだ。ただ筆者が彼女を見ている限り、彼女の中に男性を好きになる恋愛スイッチがあるのかどうかが、どうも確認できない。

共同生活者として1つ屋根の下に暮らすのはいいけれども、そこから1つのベッドに入り、裸で抱き合うことは生々しくて考えたくない。とみえのような50代婚活者(ことに初婚者)は、とても多い気がしている。


この連載の一覧はこちら

人を好きになる恋愛スイッチというのは、年齢を重ねるとともに固くなっていく。さらに積み重ねてきた経験が、自分のライフスタイルや価値観を作って、人間を頑固にする。

人生を共に歩くパートナーを探すのが婚活。条件を見たり、人柄を観察、分析したりすることも大切なことなのだが、関係を築くときにはまず相手を受け入れることから、始めてみたらどうだろうか。

そして、いくつになっても相手を異性として好きになる恋愛スイッチを作動させることが大切なのではないか。

(鎌田 れい : 仲人・ライター)